【蕎麦スス流】Vol.97〜全国制覇!? 日本の立ち食いそば〜
駅そばの高級品「住よし」の名古屋コーチンきしめん【名古屋】
Vol.97
名古屋 駅ホーム(新幹線下り)
住よし
名古屋コーチンきしめん
900円
東京のJR池袋駅構内にある立ち食いそば屋「爽亭」。そこで本格的にうまいきしめんを食べたことは過去、記事に取り上げたのでご記憶にあるかもしれない。(過去記事「爽亭」はこちら)
ご自身で実際にお食べになった方もおられるだろう。東京にありながら本場名古屋の味を再現したもので、ツルツルとした平打ちの麺とダシの効いたつゆには、勢いよく何杯でも食べられそうなうまさがある。
そのきしめんは、そもそも爽亭の姉妹店であり名古屋を拠点とする「住よし」の名物。同店は名古屋駅構内に多数の店舗を構えることで有名で、JR東海道線の上りと下りにそれぞれ2箇所ずつ、JR在来線に5箇所と、まさに名古屋駅のもうひとつの顔的存在だ。
住よしの歴史は古く、昭和36年(1961年)に名古屋駅在来線ホームで開店している。60年余りの長きに渡り愛され続けているところに実力を感じる。長く続くお店は絶対にうまい、ハズレがない、というのは筆者がお店を探す際にまず第一に考慮する条件である。
今回はちょうど運よく名古屋方面に出張の機会があった。のぞみを降りて目指すのは東海道新幹線下りホーム・京都寄りの店舗だ。早朝の開店間際で名物のかき揚げはまだ揃っていない。ここはひとつ前々から知ってはいたが食べずにいた「名古屋コーチンきしめん」をいただいてみよう。これまで食べたことがない理由は簡単で、900円というお値段。駅そばの常識をはるかに超えた高級品なのだ。
■つゆ:香り良い鰹と味わいある昆布の配合か。マイルドでうまいダシ。醤油主体のカエシはさほど塩気なく、ごくごく飲める。
■タネ:名古屋コーチンのもも肉か、軽く煮て薄くスライスしたもの。湯煎したレトルトパウチ包装から取り出される。6枚あって満足感あり。
茹で釜の脇に所狭しと麺が並んでいる。見た目にはふんわりしているところから、茹で麺ではないかと思われる。冷凍麺という情報を目にしたこともある。
目視ではよくわからなかったのは残念だが、そもそも食べてうまいのであるからどちらでもかまわないのが正直な感想だ。
そしておまちかねの名古屋コーチン。コリコリとした強烈な弾力からは一般の鶏肉とは全く違うものであることが即座に理解できる。水分の少ない肉質で深い味わい。
皮目についた脂のうまいこと。滋味深い脂はトロリとして香り高い。いつまでも噛み続けていたくなる。あっぱれ名古屋コーチン。発祥地名古屋であることもあいまって、強く記憶に残る逸品。お値段にも納得だ。
丼からつゆをゴクリと飲めば、香り良いダシとさっぱりしたカエシのバランス良い風味。思わずゴクゴクと飲み続けるうまさがある。このつゆこそが長年の看板を支えてきたのだと深く納得した。
さて、住よしといえば、どこのホームの店舗が一番うまいか、についての議論が古くからある。諸説あって、「新幹線がうまい」、それも「上りがうまい」、あるいは「在来線が一番だ」。といった書き込みを目にすることもあるだろう。
つゆはそれぞれの店で仕込んでいるとのことで煮詰まり具合などに多少の差はあるだろうが、材料・レシピは同じものとのこと。麺は全て同じもの。唯一の違いは、新幹線ホームには天ぷらを揚げるフライヤーが備わっていないことで、在来線の店舗で作ったものを持って来るらしい。なのでどうしても揚げたてアツアツに遭遇したければ在来線の店舗へ行け、となる。
結論から言えばその程度のわずかな違いなのだが、やはり人間には食べた時の感じ方はさまざまな条件で左右されるもので、そういった感想が「都市伝説」となって残っているのかもしれない。それもまた名物ならではの歴史の産物と言えるだろう。
住所:JR名古屋駅 東海道新幹線下りホーム
アクセス:駅構内ホーム上
営業時間:6:00〜21:30
定休日:無休(営業時間・定休日は変更となる場合あり)
評価:3点 ☆☆☆
※本記事は取材当時の情報です(取材日:2023/11/30)
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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。