特集・連載
【蕎麦スス流】Vol.83〜全国制覇!? 日本の立ち食いそば〜
静岡ならではの食材を使用。スマル亭の「静岡和牛おでんそば+まぐろ漬丼」【富士宮】
蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~ 世界の蕎麦好きのみなさん、コンニチハ! ラーメンと比べて世界的には地味な存在ですが、移動中にサッと寄れて、お腹もコスパも大満足。そんな立ち食い蕎麦は江戸時代からあるニッポンが誇るべきカルチャーなんです。なにかと“東京”も注目されることですしね。ってことで、日頃のランチに観光に、世界中の人にぜひ立ち寄ってほしい蕎麦店を厳選しました。恥ずかしがらないで音を立ててソバをススろう! この記事は特集・連載「蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~」#83です。
Vol.83
静岡県富士宮市スマル亭 富士宮店
静岡和牛おでんそば+まぐろ漬丼
980円+400円(まぐろ漬丼セット+静岡和牛おでん)
立ち食いそばは都会の食べ物であるといっても、まあ間違いではない。これほど立ち食いそば屋の密集している東京であるから、そのありがたみを忘れてしまうこともついありがちなのだが、たまの出張や旅行など、いざ首都圏から離れてしばらくたつと、どうしても無性に立ち食いそばが食べたくなるのは路麺ファンなら経験があるはずだ。
ここは東京から150kmほど離れた静岡県富士宮市。今回ご紹介する「スマル亭・富士宮店」は、JRならば東海道線を富士駅で身延線に乗り換え、30分ほど揺られた西富士宮駅が最寄り。あるいは自動車なら新東名・新富士ICで降り10分ほど走ったところ。国道139号線沿いにある切妻瓦葺き屋根の一軒家。雄大な富士山の裾野にたたずむ孤高の路麺だ。霊峰富士と立ち食いそばとは、なんともそそられる組み合わせではないか。
スマル亭は静岡県中・東部を地場とするチェーン店で、静岡市由比にある1号店を本店として、富士・富士宮・沼津・御殿場に7店舗を展開する。静岡ならではの食材を使ったメニューが自慢で、桜海老・しらすの天ぷらは名物。かつては東京の茅場町にも店舗があったことを覚えているかたもいるだろう。茅場町で桜海老をいただけたのは懐かしい記憶だ。
一軒家の茶店風店舗に足を踏み入れ、まずは券売機を見てみると、見慣れぬメニューがずいぶんと増えている。スナルト砲とはいったい? せんべいそばってあのお煎餅のことか? かちりおろしとは? 国産黒毛牛祭りって?
個性的な品目に迷いながら、ひときわ筆者の目をひいたのが「静岡和牛おでんそば」。静岡ではおでんが名物なのだが、まさかそばのタネにするとは想像もしなかった。よしこれをいただくこととしよう。
それともうひとつ気になるのが「まぐろ漬け丼」。静岡の焼津港は日本でも有数のマグロの水揚げを誇る。きっとおいしいに違いない。まぐろ漬け丼セット+静岡和牛おでんの組み合わせで食券を買い求め、おでんをセルフでトッピングしてみよう。
「まぐろ漬け丼セット」のそば
おでんをセルフでトッピング
■つゆ: 昆布と煮干しを使ったマイルドでしっかりした出汁。しょっぱさ控えめの上品なカエシで細めの麺によく合う。
■おでん: 牛筋肉、ちくわ、黒はんぺん、さつま揚げ、なると、ゆで玉子。だし粉(鰯の魚粉と青海苔)付き。
つゆをごくりと飲めば、茅場町時代に比べて煮干しの風味が力強く、カエシには熟成感ある。昔はこれほどはっきりした味ではなかったような記憶を持っている筆者は、正直なところちょっと驚いた。この進化は評価できる。
おでんは種類豊富な豪華版だ。よく煮込まれた牛筋肉は柔らかく、ねっとりとしたコラーゲン感たっぷりで食べ応えあり。なるとやちくわはどーんと大きい豪快さ。黒はんぺんは地元ならではの食材。この黒はんぺんこそが静岡おでんの主役なのだ。
そして、目を釘付けにするのはなるとの模様。通常よく見る「鳴門の渦巻き」をかたどった意匠ではない。お店の看板に書かれているとおりの丸に「ス」だ。なるほどこれが「スナルト」であったかと合点した次第。
おでんには、静岡ならではの「だし粉」が小皿で供される。大量のだし粉をおでんの上にどさりとかけていただくのが静岡流だ。だし粉は単なる調味料ではなくメイン食材のひとつととらえるべきであろう。
酒の肴にしたくなるようなピカピカしたまぐろの醤油漬けを乗せた丼。見た目の不揃い感はあるが、まぐろの鮮度高く、風味良く、じつにうまい。小ぶりなご飯をあっというまに食べきってしまう。こういうサイドメニューは大歓迎だ。
行楽季節に富士山方面に来られる方はぜひ一度寄って見てはいかがだろう。24時間営業で駐車場完備だからドライバーにはうれしいお店だ。
ちなみに、黒毛和牛は冷凍パックでお土産にちょうど良い。筆者はカレー肉とステーキ肉を買い求め、帰宅後調理しておいしくいただいた。
住所:静岡県富士宮市中原町121
アクセス:JR身延線・西富士宮駅から約2.5km
営業時間:24時間営業
定休日:元旦
評価:2点 ☆☆
※本記事は、2022年5月3日取材当時の情報です。
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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。