特集・連載
【蕎麦スス流】Vol.86〜全国制覇!? 日本の立ち食いそば〜
令和の今こそ訪れたい。オートパーラー上尾の「天ぷらそば+トーストサンド」【埼玉】
蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~ 世界の蕎麦好きのみなさん、コンニチハ! ラーメンと比べて世界的には地味な存在ですが、移動中にサッと寄れて、お腹もコスパも大満足。そんな立ち食い蕎麦は江戸時代からあるニッポンが誇るべきカルチャーなんです。なにかと“東京”も注目されることですしね。ってことで、日頃のランチに観光に、世界中の人にぜひ立ち寄ってほしい蕎麦店を厳選しました。恥ずかしがらないで音を立ててソバをススろう! この記事は特集・連載「蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~」#86です。
Vol.86
埼玉県上尾市オートパーラー上尾
天ぷらそば+トーストサンド(コンビーフ、チーズハム)
250円+200円+200円
昔なら街角のどこでも目にすることができたのに、令和の時代になってみると、いつの間にかまったく見かけなくなってしまったものはいくつもある。例えば、ポマード頭の男性、タバコの自販機、公衆電話ボックス、駅の伝言板など。どれも昭和の時代なら生活の主流をなすものだったが、いつしか他の商品や便利サービスに駆逐され、今ではすっかり絶滅危惧種だ。
筆者が小中学生で常に腹をへらせていた頃。日暮れて自転車で帰宅中にも食べ盛りの胃袋は家までもってくれない。そんなとき蛍光灯をぼんやり灯らせ国道の脇に佇む自販機軽食コーナーは頼もしい味方だった。かつては全国そこかしこにこういった無人店舗が存在し、世の中の役に立っていたのだ。
やがてコンビニやチェーン店へと姿を変え、ほとんど目にすることは無くなったのだが、なんといまだにわずかながら当時のままの自動販売機で営業を続けている店舗もある。
今回ご紹介する「オートパーラー上尾」もそのひとつ。そもそもはゲームセンターが主体の施設で、自販機コーナーはゲーセンの隅っこに併設されている。
一般的に自動販売機で扱う食品には、カップラーメン、カレーライス、ハンバーガーなどがあるが、中でも赤と黄色の電飾に独特の太い書体で「うどん そば」と書かれた自販機はひときわ目を引くスター的な存在だ。立ち食いそばファンならばもちろんご存知のことと思う。
茹で麺のそば・うどんを熱湯で湯がき、湯切りの後に濃縮つゆとお湯を注ぐもので、筆者は実物の動作を見たことはないのだが、湯切りの工程で丼をグルグル回転させて遠心力で湯を切る姿はダイナミックで、IT時代とはちょっと技術ベクトルの違う昭和のメカメカしたパワーを感じさせる。また、この機械を維持するのはたいへんなご苦労だと思う。
■つゆ:ややしょっぱめの濃縮つゆ、そばとよく合う。丼の底の方に濃い部分があるので、食べる前にざっとかき混ぜると良い。
■かき揚げ:揚げおき、ほぼコロモ主体。崩れるところをそばと一緒に食べるとうまい。
■ウズラ卵:つゆに馴染んだ煮卵風でいい感じ。
古い機械ゆえ既にサプライも途絶えて久しい。食材はオーナーさんが地元で調達されているはずだ。つゆの味付けなどにもこだわりを持っているに違いなく、価格と味の好バランスには並々ならぬ愛着を感じさせる。
前回訪問時(2015年)は200円だったものが、昨今の物価高を反映してか250円に価格改定されていた。200円を長いこと維持されていたことをまずは感謝したい。なお、値上げにともなってか、記憶にない具材が追加されていた。丼の底に潜んでいるウズラ卵とワカメだ。まさか底にいたとは、発見したときの嬉しさには格別なものがある。
参考:天ぷらうどん(200円)
参考のため、うどんも食べてみた。固茹での麺は個性的でこちらもうまい。25秒という短時間での調理に最適化された茹で具合だ。
そしてこのお店ならではの名物商品がもうひとつ。熱々に加熱された「トーストサンド」だ。具材は「コンビーフ」と「チーズハム」の2種類。いずれも200円。お金を入れてボタンを押すと「トースト中」の電熱文字が点滅を始める。しばらく待つと、やおらドスンと音を立てて取り出し口に落ちてくる。
丁寧に巻かれた熱々のアルミホイルを剥がし、ほふほふ言いながら食べる。どちらも自然な味わいで実にうまい。とくにコンビーフは他店にも見られない、ここならではの逸品。冷めても美味しいのでお土産にも喜ばれること請け合う。
筆者は朝7時30分頃に訪問したのだが、その時はちょうど商材の補充タイミングだったらしく、作業中のオーナーさんらしき人を見かけることができた。こうやって日に何度か補充しているようだ。これからも長く続けていただけることを願ってやまない。
住所:埼玉県上尾市久保70-2
アクセス:JR高崎線・北上尾駅より徒歩10分
営業時間:24時間
定休日:なし
評価:2点 ☆☆
※本記事は、2022年7月23日取材当時の情報です。
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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。