特集・連載
【蕎麦スス流】Vol.79〜全国制覇!? 日本の立ち食いそば〜
まさに名店といえる貫禄の味わい。やしまの「海老天いか天そば」【西葛西】
蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~ 世界の蕎麦好きのみなさん、コンニチハ! ラーメンと比べて世界的には地味な存在ですが、移動中にサッと寄れて、お腹もコスパも大満足。そんな立ち食い蕎麦は江戸時代からあるニッポンが誇るべきカルチャーなんです。なにかと“東京”も注目されることですしね。ってことで、日頃のランチに観光に、世界中の人にぜひ立ち寄ってほしい蕎麦店を厳選しました。恥ずかしがらないで音を立ててソバをススろう! この記事は特集・連載「蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~」#79です。
Vol.79
西葛西駅やしま
海老天いか天そば
500円
千葉方面からの通勤の足として重要なのが東京メトロ東西線。車両に乗って都心方向へ向かうと荒川を渡る大きな鉄橋が見えてくる。その直前にあるのが西葛西駅。
ちなみに東京メトロ(地下鉄)とはいっても、西葛西から千葉方面はすべて高架鉄道で地下区間はない。 西葛西駅は東西線の西船橋延伸から10年後、1979年の開業とある。需要増にともなう新設だ。駅を新設するくらい勢いのある地域といえる。その勢いが今も衰えていないのは、朝夕の東西線の混雑具合からもうかがえるし、駅周辺に林立する高層住宅群の圧倒的な迫力からも実感できる。
江戸川・江東の湾岸あたりはそもそもが埋立でできた地盤が多く、そこに鉄道を通し、住宅を供給して開発した土地柄。そういった「新しい町」で住民に快適な生活を送ってもらうために欠かせないのがインフラとしての商業施設。ちょうどよいことに駅と線路の下には広大な高架スペースがある。ここを活用してできたのが「メトロセンター」で、西葛西駅の開業当時から存在し近隣住民に愛される商店街だ。
そしてその当時から40年以上にわたって存在するのが今回ご紹介するお店「やしま」。うまいと評判で、東京を代表する立ち食いそば屋のひとつといえる。
ちょっと風変わりな名前にひかれて「海老天いか天そば」を注文。ちょうどタイミングよく、茹でたてほやほやをいただくことができた。頻繁に茹でているから茹で具合のコンディションは良好。
■つゆ:昆布とかつおのマイルドなだし。ほのかに甘めな上品なカエシ。生めんのそばにとてもよく合う。
■天ぷら:揚げ置きで待たせずに提供される。海老は細めだがしっかりと風味あり。イカは歯切れ良く食べやすい。どちらもよく揚がっていておいしい。
まずはつゆをひとくち含んでみる。だしの効いた柔らかい風味で、いくらでもごくごくいけるうまさがある。そしてそばはコシがありながらも表面がつるつるしすぎず、つゆに良く馴染む。海老天とイカ天はころもの揚がり具合がさらっとして、スルッと食べられる。ちょっとしたおやつ感覚でいただくのにもうってつけだ。なによりもそば・つゆ・天ぷら、全体のバランスがちょうど良い。まさに立ち食いそばの名店といえる貫禄の味わいだ。
訪問時は昼どきで、あいにくカウンターは満席だったため、ちょっと横の歩道で歩行者の邪魔にならない場所を見つけて食べてみる。道ゆく人を眺めながらこうやって立って食べるのはじつに楽しい。
とくに電車に乗る用事がなくとも、そばだけを食べにやってくるお客さんが多そうだ。お年寄りのご夫婦が仲良く連れ立ってそばを食べる光景や、家族連れで小さい子供といっしょに食べるお父さん、若い女性のおひとり様といった、都心の立ち食いそばでは見られないお客さんが続々とやってくる。カウンター横の小さなテーブルと椅子にちょこんと腰掛ける小さいお子さんを見るとおもわず微笑ましくなる。
忙しい駅の人の流れのなかにある、ほっとしたひとときを温かいそばで過ごせる空間。40年という長い時間をかけて町の風景にみごとに溶け込んでいる。立ち食いそばこそ地域のインフラになくてはならない存在だと感じさせてくれるお店だ。
住所:東京都江戸川区西葛西6-14-31 メトロセンター2番街
アクセス:東京メトロ「西葛西駅」徒歩1分(高架下)
営業時間:平日 6:40~21:00/土日祝 6:40~17:00
定休日:無休
評価:3点 ☆☆☆
※本記事は、2021年12月28日取材当時の情報です。
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情報提供・監修/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。