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蕎麦スス流 SOBA Su Su Ryu

Vol.88

横浜市鶴見区鶴見ういーん、五味酉(ごみとり)

ういーん「天玉そば」410円
五味酉「白身フライそば」450円

ういーん 天玉そば 五味酉 白身フライそば

今年の9月まで放送されていた朝の連続テレビ小説「ちむどんどん」の舞台として全国的に有名となったのが横浜市の鶴見。沖縄から移住された方々とそのご家族縁者が多数お住まいの地域だ。

また鶴見といえば立ち食いそば屋の多い町として路麺愛好家には有名で、その特長は朝早くから開店してることにあり、早朝出勤あるいは朝帰りの強い味方である。また「ごん兵衛」の回でもご紹介したとおり、コアなファンには「鶴見系」と呼ばれる独特な味わいの立ち食いそばの発祥地としても知られている。

立喰そば ういーん

早朝のJR鶴見、東口駅前に立ってバスロータリー左手向こうの角地にひときわ目立つのは、銀色の壁面に「味自慢 立喰そば」の文字。これが鶴見の顔として長いこと親しまれている路麺店「ういーん」だ。立ち食いそば屋らしからぬ屋号としても、つとに有名。

伝え聞くところでは、店名の由来は、今をさること40年以上昔、先代のオーナーによる創業時のこと。当初の計画では駅前の好立地に喫茶店を開業する予定だったのだが、土地柄や客層から見て、あるいは当時の好景気もあってか、急遽計画を変更し、庶民的で空腹を手早く満たす業態、つまり立ち食いそば屋を始めることになったという。

「喫茶ウイーン」として開業の準備が整っていたのを無理やりに「ういーん」と平仮名に変えて、180度路線の違う業態にしてしまったというのだ。あえて面白さを狙った屋号ではないのだった。

立喰そば ういーん

さて、店内に足を踏み入れてみると、喫茶店の予定だったなごりとでもいおうか、立ち食いそば屋にしてはしゃれた曲線で装飾されたカウンターはエレガントだ。頭上のスポット照明はそばを食べる人には無用な装置ではあるが、これもまた喫茶店向けの設備だったのなら納得だ。

ういーん 券売機

メニューはとても簡潔で、そば・うどんに天ぷら、カレー、トッピングに生卵といったシンプルなもの。歴史の風雪に耐えて勝ち残ったメニューだともいえる。おそらく当店の一番人気であろう「天玉そば」をいただいてみよう。

ういーん 天玉そば

■そば:ゆでめん、薄茶色ぽくて断面やや角丸。絶妙な茹で加減の、これぞゆでめん。
■つゆ:鰹節などが主体のダシ、しょっぱめのカエシ。東京風のつゆといえる。醤油の香ばしさとゆでめんの相性よし。
■天ぷら:揚げおき、ぽってりコロモに玉ねぎ・ニンジンなど。玉子の黄身をくずして和えると美味さの相乗効果あり。

ういーん 天玉そば

筆者の天玉そばの食べ方は、まず普通にそばを食べつゆを飲み、水位が丼の半分くらいになったところで白身をすすって飲む。天ぷらを丼の端に寄せ、黄身をくずして馴染ませる。黄身コーティングされた天ぷらを食べつつ残ったそばをいただく。という手順だ。重要なのは白身を飲むことで、黄身の濃厚さを味わうために必要な手順である。

ところで、筆者の立ち食いそば世界観には「食わずに悔やむより、連食で後悔!」というモットーがある。普段なかなか来れない土地に来た時は、気になっている店があれば、たとえ胃袋キャパが少なくともハシゴせよというものだ。せっかくの宿題店が目の前にあるのに、食わずにおめおめと帰ることはできようがない。

京急鶴見駅の駅前

JR鶴見駅のバスロータリー反対側には京浜急行の鶴見駅があって、ここにあるのが「五味酉(ごみとり)」。店名の由来は不明だが、焼き鳥屋の屋号などに見られることがある。

そして五味酉の特長は冒頭に述べた「鶴見系」であること。塩味のきいた醤油っ気のないつゆに柔らかめのゆでめん。そしてこの店ならではの名物は「白身フライ」。天ぷらでなくフライだ。フライであるゆえに胡椒が利いているが、これが不思議とそばによく合う。

五味酉 白身フライそば
白身フライそば

早朝5時から営業ということもあり、かつお酒も飲めることから、土曜の朝などはオールナイトで遊び足りない若者の朝飲みで賑わっている。なかなかに貴重なお店である。

五味酉 メニュー

■DATA
【ういーん】
住所:神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央1-3-18
アクセス:JR鶴見駅 徒歩1分
営業時間:6:00頃〜20:00頃
定休日:無休
評価:2点 ☆☆
 
【五味酉】
住所:神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央1-31-2 シークレイン 1F
アクセス:京急鶴見駅 徒歩1分
営業時間:5:00〜20:00
定休日:日曜
評価:2点 ☆☆

※本記事は、2022年10月8日取材当時の情報です。
(ただし、五味酉の価格は10/16値上げ以降のものとしてます)

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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。

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