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蕎麦スス流 SOBA Su Su Ryu

Vol.85

柴又三松(みまつ)

かけそば+ゲソ天+紅生姜天、ラーメン
320円+150円+120円、450円

三松のゲソ天+紅生姜天そばとラーメン

葛飾柴又といえば帝釈天、そして映画「男はつらいよ」の舞台。今回はフーテンの寅さんの故郷である柴又にやってきた。

再開発前の柴又駅前
再開発前の柴又駅前(2010年7月 筆者撮影)

柴又駅と鉄道は帝釈天参詣者の旅客輸送を目的とし、明治32年「帝釈人車鉄道」として建設されたものが由来だ。路線は金町と柴又を結ぶ延長1.2km。ちょっと風変わりなのは「人車」の名前のとおり客車を人力で押して運んだこと。

再開発前の柴又駅前
再開発前の柴又駅前(2010年7月 筆者撮影)

その柴又駅と駅前広場が映画「男はつらいよ」にも度々登場したことはご記憶のかたも多いだろう。映画の設定そのままに昭和の雰囲気を濃厚に残すヤレた風情の情緒ある空間だった。広場の中心には寅さんの銅像、そして端っこにはもちろん立ち食いそば屋の姿があったのは言うまでもない。上記写真にある「ラーメン」の幟のある位置だ。

その文化財的な駅前広場も老朽化には勝てず、再開発されることとなる。建物はすべて解体され、2021年6月にまったく新しい姿として再開された。寅さんの像はちょいと向きを変え、妹さくらの像と目を合わせるような配置となった。

そして、撤退もあるか、と心配だった立ち食いそば屋は経営を変えたものの、駅の改札口近くに移転して営業を開始した。このときはほっと安堵したものだ。

そば屋 三松

移転前は「新華」であったが、新店舗は「三松」となる。三松はそもそも製麺を本業とし、馬喰町、青砥などに展開する小規模な製麺所直営チェーン店だ。そして新華はかつての営業時には三松の麺を使用していた。互いに浅からぬ縁があって撤退後の交代出店となったのであろうかと想像する。

新装なったピカピカのお店を眺めてみる。残念なことに少しばかり「味わい」に乏しいが、まあこれは仕方のないことで、以前のお店のようなヤレヤレで風通しよすぎる昭和な雰囲気を、新築の店舗に期待するには無理があるというものだ。残ってくれただけでもよしとせねばなるまい。

嬉しいのは、新華の時代から名物であったメニューが残されていること。ゲソ天・紅生姜天であり、またラーメンである。今回はこの両方をいただいてみることとしよう。

三松のゲソ天+紅生姜天そば

■そば: 生めん茹でたて、注文受けてから茹でる。薄茶色でややクネクネ。茹で加減はやや硬め。ツルツルで歯応えあり。
■つゆ: 鰹節・昆布・椎茸のよいダシ。やや甘めなカエシ。醤油はそれほど濃くない、あっさりめの味わい。
■ゲソ天:ゲソを長いまま揚げたタイプ。ぽってりしたコロモはつるんと抜けてバラバラと解れるタイプ。
■紅生姜天:たっぷりの紅生姜を薄めのコロモでみっちりと密集して揚げたタイプ。辛さ際立つうまさ。

三松のゲソ天+紅生姜天そば

あっさりめのそばに紅生姜の辛さが溶け出し酸味が増したところに、ゲソ天からほどけたコロモがそばにからんで、まったり・ピリリと渾然一体としたうまさとなる。食べている間に味と姿を変えていく。これぞ路麺の醍醐味だ。

そば屋 三松

コンビニ風あるいはカフェ風の明るく清潔感ある店内。自動券売機はなく、厨房のお兄さんに直接口頭で注文、受け取り後に現金精算のシステム。

三松のラーメン

ラーメンは新華時代からの名物で、ここではラーメンを食べているひとのほうが多いといっても過言ではない。コロッケラーメン、天ぷらラーメンといった具合に、そばのタネをトッピング注文するのが常連さんの食べ方。

製麺所直営だけあって麺の盛りがいい。普通サイズであっても他店の大盛りに近い量がある。これもまた人気の理由だろう。鶏ガラスープに醤油味のノスタルジックな味は、観光地や海辺で食べるラーメンのあの味そのもの。

柴又駅前

柴又駅が帝釈天参詣を目的としてつくられたものであることは、駅前広場が一直線に帝釈天参道へとつながっている風景からも視覚的に納得できる。歴史が道路の区割りに残っているのだ。最新のレイアウトでいうと、ちょうど寅さん像からさくら像への目線の延長に参道がある。

柴又 参道

にぎやかな参道を歩いた突き当たりは帝釈天の山門。これも映画でお馴染みの景色だ。江戸・明治の情緒を残してくれている。柴又の三松へ立ち食いそばを食べに行ったらぜひこちらまで足を向けてみることをお勧めする。筆者は参道の各店で草団子・堅焼煎餅・くず餅をお土産に買い、帰宅後においしく頂いた。

■DATA
住所:東京都葛飾区柴又4-8-13
アクセス:京成線柴又駅改札を出てすぐ
営業時間:7:00〜18:00
定休日:木曜日
評価:2点 ☆☆

※本記事は、2022年7月2日取材当時の情報です。

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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。

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