特集・連載
【蕎麦スス流】Vol.81〜全国制覇!? 日本の立ち食いそば〜
豊富な天ぷら&ご飯ものも充実! 江戸丸の「ごぼう天そば+ミニもつ丼」【高円寺】
蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~ 世界の蕎麦好きのみなさん、コンニチハ! ラーメンと比べて世界的には地味な存在ですが、移動中にサッと寄れて、お腹もコスパも大満足。そんな立ち食い蕎麦は江戸時代からあるニッポンが誇るべきカルチャーなんです。なにかと“東京”も注目されることですしね。ってことで、日頃のランチに観光に、世界中の人にぜひ立ち寄ってほしい蕎麦店を厳選しました。恥ずかしがらないで音を立ててソバをススろう! この記事は特集・連載「蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~」#81です。
Vol.81
高円寺江戸丸
ごぼう天そば+ミニもつ丼
760円(もつ丼セット650円+ごぼう天110円)
中央線・高円寺といえば若者の街。駅前はいつも個性的な人であふれている。その駅の北口を右に出て線路沿いをてくてくと進み、環状7号線(環七)を渡って右側に出る。このあたりの環七は片側三車線と幅広く、信号機の間隔も長くて、広々とした空が見渡せる。高円寺の街中の喧騒とは打って変わった景色だ。そのガランとした空間に銀杏の街路樹が大きく育った広い歩道が伸びている。
環七を走るドライバー目線でみてみると、練馬方面から内回り車線を南下し、中央線のガードをくぐってすぐの左側。街路樹の根本に「そば・うどん・おにぎり」の看板がドライバーによく見えるように立っていて、周囲に遮るものもなく、ひときわ目立つ。ここが今回ご紹介するお店「江戸丸」だ。
ゆったりした歩道に面したカウンターには、天ぷらがずらりと並んでお客を待っている。日常的な縁日感覚とでもいおうか、道行きながら眺める天種のガラスケースはまるで屋台のような賑やかさだ。看板の赤い彩りも華やかさを添える。お店の中には陽気なおばちゃんたちがニコニコと待ち構えていて、路麺気分はいやおうにも高揚してくる。
多種ある自家製天ぷらはどれもおいしそうで目が移る。緑色のおせんべいのように揚がった春菊の姿は見事。ひとりで2つ3つと注文する客の姿も見られる。優柔不断な筆者が悩みに悩んだ末に選んだのは好物のごぼう天。
■つゆ:バランスよいだし。漂う鰹の香り。カエシは濃くも薄くもない中庸な味わい。甘さ控えめ。ごくごく飲める濃さ。
■ごぼう天:揚げ置き。自家製。細切りのごぼうを厚手に揚げたもの。つゆのなかで徐々に崩れるタイプ。
ごぼう天には、お店によっていくつかの流儀がある。2cm角くらいの棒状に太く切ったものを薪のように積み上げるタイプ、あるいは笹掻きごぼうを丸めて揚げるタイプなどが比較的よくみられるが、こちらのは細く線切りにしたごぼうをざっくりと衣に合えてこんもりと揚げたもの。ふんわりしていて食べやすいのと、歯にはさまりにくいという長所があって、筆者としては好みだ。
つゆに浸って崩れかけた下側から食べ進むとテンポ良くいただけて楽しい。カウンター上には、たくあん、鰹節の佃煮などの薬味が並んでおり自由に使える。
表の看板にあるとおり、おにぎりが自慢。また各種飯ものも充実している。なかでも珍しいのは「もつ煮丼」。味噌で煮込んだシロ(豚の小腸)と人参・蒟蒻をご飯に盛り付け、たっぷりの薬味ネギを乗せたもの。うれしいことにミニサイズが用意されていて、そば・うどんとのセットとして提供される。ややつゆだく気味の飯を具とともにガガっと食べれば、キャンプ飯のような野趣に満たされる。
お店横手の簡易なテーブル席からは、現場仕事のかたたちだろうか、グループランチの賑やかなやりとりが聞こえてくる。ちょっとしたアウトドア感が食事の楽しさを増すに違いない。
また、ひょいと横を見れば空手の道着をお召しになったかたがいて、どうやら稽古の合間の昼食らしい。学生さんらしき若いかたもいたりと、幅広い客層から愛されていることがわかる。豊富な天ぷらと、おにぎりや丼の充実が固定客をつかんでいるようだ。
江戸丸の人気の理由はもうひとつある。早朝5時からの営業開始だ。環七沿道には立ち食いそば屋は多数ありそうな気もするのだが実はそうでもなく、外回りにはいくつかあるが、内回りにはほとんどない。早朝に環七で立ち食いそばを食べたくなったらここに飛び込むのがベストであると、プロのドライバーさんたちはきっとご存じなのだろう。
住所:東京都杉並区高円寺南5-32-4
アクセス:JR中央線 高円寺駅 徒歩8分
営業時間:5:00〜15:00
定休日:日曜・祝日の月曜
評価:2点 ☆☆
※本記事は、2022年3月5日取材当時の情報です(取材時の営業時間は5:00〜14:00)
アプリ「蕎麦道なび」でも配信中! 「蕎麦道なび」のアプリはこちらからダウンロード!
※Google Android/iOS対応
写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。