特集・連載
【蕎麦スス流】Vol.91〜全国制覇!? 日本の立ち食いそば〜
自然に囲まれてホッとひといき。町田薬師池公園「やくし売店」のたぬきそば【東京】
蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~ 世界の蕎麦好きのみなさん、コンニチハ! ラーメンと比べて世界的には地味な存在ですが、移動中にサッと寄れて、お腹もコスパも大満足。そんな立ち食い蕎麦は江戸時代からあるニッポンが誇るべきカルチャーなんです。なにかと“東京”も注目されることですしね。ってことで、日頃のランチに観光に、世界中の人にぜひ立ち寄ってほしい蕎麦店を厳選しました。恥ずかしがらないで音を立ててソバをススろう! この記事は特集・連載「蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~」#91です。
Vol.91
町田市野津田町・町田薬師池公園やくし売店
たぬきそば、だいこん・こんにゃく田楽、大根餅
500円 + 250円 + 120円 + 250円
町田市の野津田は緩やかな丘陵と山林から成り立ち、江戸時代には大名の鷹狩の場であったという。武蔵野の面影を残す雑木の林が点在し、休日に出かければちょっとしたアウトドア気分を満喫できるし、運動不足解消にも役立つというものだ。都心からさほど離れていない郊外に、このように田舎の風情をたっぷりと秘めた土地があるとはにわかに信じ難い。
町内南部の低山は「七国山」と呼ばれる。ジブリ好きならワクワクする地名だ。そして山の南麓に「薬師池」という名のため池がある。七国山に降った雨水の貯水をねらったのであろうか、人工で開削されたもので、由来は戦国時代にまで遡るという。
この薬師池の周囲に整備されたのが「町田薬師池公園」で、広大な園内各所に多種多様な植物が植えられ、さらには四季折々の開花を順繰りに途切れることなく見せてくれる。
訪問した日はまだ肌寒い季節で、ちょうど椿の花が見頃であった。ひだまりのなかでツヤツヤとした肉厚の葉に囲まれ、濃い赤色のボッテリと大輪の花をたわわにつけた椿を見ると、ほっこりとした暖かい心持ちになってくるから不思議なものだ。花には魔法のような力がある。
そうやって園内を散策すれば決まって小腹が減ってくるというもの。池のほとり藤棚のあたりまでやってくるとお誂え向きに茶店が見えてきた。「やくし売店」とある。甘酒、田楽、餅、かき氷といった茶店ならではのメニューが並び、そして嬉しいことに「うどん・そば」も用意されている。「出汁が決めて!味自慢」の文句は誇らしげだ。
定番であろう「たぬきそば(温)」、「だいこん・こんにゃくの田楽」、そして本日のおすすめとある「大根餅(ポン酢)」を注文してみた。
■つゆ:鰹節と昆布のマイルドなだし。上品目であっさりしたカエシ。たっぷりな量がうれしい。
■たぬき:丸い小粒のもの、おそらく市販品か?
肌寒い陽気もあり、温かいつゆは染み渡るようなうまさだ。さほど濃厚ではないが、しみじみとした良い出汁で、看板に偽りはない。柔らかめのゆでめんとあいまってズルズルといくらでも食べられそうなうまさ。
しかしなんといっても重要なのは散策して小腹の減った状態であること。低血糖な状態でフラフラしているときに目の前に突如として茶店があらわれ、しかもそばを食わせてくれるという、もうそれだけで満点をあげたい。なんとありがたく貴重なお店だろう。
見事な厚みのだいこんは芯までよく煮込まれ、甘めの濃厚な味噌は惚れ惚れする滋味。同じくこんにゃくも味噌ダレと実に相性がよい。うまくて物足りない。もっと食べたい。皿に残った味噌も最後の一滴まできれいになめてしまう。
そして本日のおすすめである大根餅。すりおろされた大根とカタクリ粉(推測)を混ぜ、ひと口大に丸めてフライパンで焼いたうえにポン酢をかけたもの。じつによくできたメニューで、おろし大根のサックリ感がもたらす軽い食感は素敵だ。ポン酢のあっさり感もいいし、これなら味噌やバターもきっと合うはず。
公園は「四季彩の杜」とも呼ばれ、複数のエリアから構成される。薬師池公園を中心に西園・ぼたん園・えびね園・ダリア園・リス園など合計で9つの施設がある。なかでもリス園は知る人ぞ知る。園内に放し飼いにされた自由奔放なリスたちが来園者にワラワラ群がるという、ちょっと珍しくエキサイティングな体験を提供してくれる。
鉄道は最寄りであろう小田急玉川学園前まで直線で2km以上ある。バスでなら小田急線町田駅から「薬師池」停留所までおよそ30分。駐車場は4箇所合計で400台以上あり1時間以内なら無料だ。
住所:東京都町田市野津田町3270番地
アクセス:小田急町田駅北口(POPビル先)21番のりばから 「本町田経由鶴川行き」「本町田経由野津田車庫行き」バスで「薬師池」か「薬師ヶ丘」下車
営業時間:午前9時~午後5時
定休日: 火・水
評価:2点 ☆☆
※本記事は取材当時の情報です(取材日:2023/3/20)
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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。