シメに和スイーツも♡ かしわやの「菜の花天そば+今川焼」【全国制覇!? 日本の立ち食いそば】

Vol.69

三軒茶屋かしわや

菜の花天そば＋今川焼（小倉あん、カスタード、ベルギーチョコ）
450円+120円+120円+200円

東京のおもしろ駅名・地名のひとつ「三軒茶屋」。その昔、江戸から相模国大山を結んでいた大山街道（現在の国道246号）を、渋谷からしばらく西に進めば津久井道に分岐する三叉路となる。この三叉路の両脇と中洲に合わせて三軒の茶屋あり。街道をゆきかう旅人の憩いの場、あるいは街道の道標となっていたという。その光景をそのまま地名としたのが三軒茶屋。じつに写実的な地名だ。

現在の国道246号の地下には田園都市線が通じ、三軒茶屋駅は急行停車駅として賑わう。そしてそこから少し離れた地上に東急世田谷線の三軒茶屋駅がある。ここから下高井戸を結ぶ路面電車の起点だ。田園都市線が地下化される以前は玉川線といって国道246号の路面を走り、さらには支線が何本も枝分かれしていたのだが、相次いで廃線となり、いまではこの世田谷線だけが残されている。

三軒茶屋といえば、昭和の頃はどちらかといえば下町っぽさのある庶民的な街のイメージだったが、1996年の駅周辺再開発でおしゃれな若者の街の雰囲気が醸し出されてきた。パティオとも称されるテラコッタ色の地中海風街路をおしゃれなマダムがワンコを連れて颯爽と歩く街なのだ。

「かしわや」は駅に向かう広い通路の脇にある。目黒区・世田谷区および川崎市を中心に駅近立地で展開する小規模チェーンで、駅ナカでないにもかかわらず年中無休で営業してくれるうれしいお店だ。蕎麦・うどんはもちろんのこと、カレー・丼ものも充実。そしてここ三軒茶屋店には和スイーツまで用意されている。

蕎麦のタネには季節限定の天ぷらがあり、この日は春らしい菜の花天。わたしの好物でもあり、ここは迷わずいただいてみた。

全体的にあっさりとした風合いで、路麺特有のガツンとした濃い味ではないが、さっぱりしたつゆと細い蕎麦のツルツル感があいまって、おやつ感覚でするっと食べられる。駅の改札すぐのところにあって無休営業だから、三茶で小腹の空いた時にさくっと、といった使い方に最適ではなかろうか。

お腹は満ちたが、もうちょっといける。そんなときに普通の路麺なら定番は稲荷寿司かおにぎりなのだが、ここでは今川焼が自慢のサイドメニュー。

お店入り口の横には大きな「今川焼」の看板、その下には通路に面した大きく目立つ販売窓口があり、いやはや、このお店はどちらかといえば今川焼がメインなんじゃないか、と思えるくらいの存在感だ。実際にこの窓口で今川焼を買っている人をよく目にする。とくに女性に人気だ。

その日は「小倉あん」「カスタードクリーム」「ベルギーチョコ」「ごまあん」の4種が用意されていた。スタンダードな小倉あんは、なにはなくともマストだろうと迷わず選択。カスタードクリームもいただこう。

残すはチョコとごまで、どちらも強いこだわりを感じさせる。チョコはベルギー産を北海道産生クリームで練り上げたもの。そしてごまあんはセサミン豊富で健康に良さそうだ。悩みに悩んだ末、今回はベルギーチョコ、合わせて3種をいただいた。たくさんあるので持ち帰って食べてみよう。

いただいてみると、どれも驚くほどうまい。まず皮が良い。もっちりとしてきめ細やか、サラッとした舌触りでしつこくない。皮だけでも食べたいくらいだ。そして中身がまたいい。今回の3種どれもそうなのだけど甘さ控えめで風味が際立つ。ちょっと上品なおやつだ。

とくに私が気に入ったのはカスタードクリーム。濃厚さとさっぱりさ、そしてふんわりとして上品なバニラ香のいいバランス。ベルギーチョコは高級感ある本格的な味と香り。小倉あんの滑らかさもまた素晴らしい。

路麺と和スイーツの取り合わせ、想像するより悪くない。いやとても良い。これを試さずにいるのはもったいない。自分用に買うだけでなく、仕事に家庭に、ちょっとした手土産としてもきっと喜ばれるはずだ。

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情報提供・監修／ケビン（平林啓一）
オートバイに乗って900軒の立ち食い蕎麦店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食い蕎麦チェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。