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蕎麦スス流 SOBA Su Su Ryu

Vol.87

川崎市高津ベルハウス

かき揚げそば+瓶ビール
420円+500円

ベルハウスのかき揚げそば

例年の通りだが今年の夏も暑かった。猛暑の最中には街を徘徊する気力も失せ、家の中に引きこもりがちになるものだが、やがて彼岸を過ぎ、秋の風を感じるようになってくると、お出かけしたい気分がムズムズと湧いてくる。

そば屋 ベルハウス

そんな初秋のよく晴れた土曜日、てくてくとやってきたのは川崎市高津。渋谷方面から東急田園都市線で多摩川を渡り、溝ノ口のひとつ手前の駅。ひとつ手前といっても距離は非常に近く、隣の溝ノ口とほぼ一体となった街とみることもできるだろう。

このあたりは旧大山街道に沿って栄えた地域で、江戸時代から続く商業集積がある。また、B級なグルメファンとして押さえておきたいポイントは、一杯飲める居酒屋の充実だ。モクモクと煙を吐く焼き鳥・焼き豚の店がそこかしこにあって、どこも賑わっている。七輪焼肉のお店も大人気だ。

そんな居酒屋パラダイスのなかでも筆者がとくに好きなのは、いわゆる「立ち飲み」の店。仕事帰りにこのあたりを歩いたらもうたまらない。ついふらっと立ち寄って、いつのまにかちょっと一杯やることになる。じつに手強い魔力のような誘いだ。

そば屋 ベルハウス

そして高津駅周辺で有名な立ち飲み屋が、今回ご紹介する「ベルハウス」。そもそもは八百屋兼酒屋さんの店舗の隣で、角打ちとして平成初期に開業。現在の府中街道沿いに移転してからも10年ほどたつだろうか。人気は相変わらず衰えていない。近年では、夜は立ち飲み、昼は立ち食いそば屋のいわゆる「二毛作店」として営業している。

秋とはいえ晴れた日はまだ暑い。お天道様は高いが、ここはなにはなくともビールで喉を潤したい。立ち飲み屋であるからには飲まないことには雰囲気が出ないというもの。夜の営業時間には数々の酒肴が用意されるのであるが、ここはビールだけさくっと飲むのもいいんじゃないだろうか。

瓶ビール

冷えたところをグビっとやっていたら、お店の人が気を利かせて枝豆をサービスしてくれた。嬉しいじゃないですか。ありがとうございます。昼日中から飲むビールは格別だ。外の道を歩く人々を眺めながら飲んでいると、なんだかとてもトクしたような気になる。

さて、次は本題の立ち食いそば。このお店の名物は盛り合わせの「おまかせ天ぷら」なのだが、この時間はまだ用意ができていないということで、スタンダードな「かき揚げそば」を注文してみた。

ベルハウスのかき揚げそば

ビールを飲んで待つことしばし。出てきた丼をみて驚いた。いわゆるかき揚げそばの常識をはるかに超えている。天ぷらは豪勢なことに4種の盛り合わせで、こんもりとうず高く積み上げられた姿に思わず見惚れてしまう。

ベルハウスのかき揚げそば

■そば:冷凍麺、黒っぽくて断面四角い。細めで弾力あり。解凍具合とてもよい。
■つゆ:昆布主体のマイルドだし。しょっぱさをおさえた上品なカエシ。そばの細さとちょうどよい相性。
■てんぷら:4種盛り合わせ。細く切った牛蒡のかき揚げは、さくさくと歯ごたえ良い。長ネギ・玉ねぎ・ニンジン・コーンのかき揚げは、長ネギの香りと玉ねぎの甘さ、コーンの歯ごたえのバランスの楽しさあり。エノキだけの天ぷらは、根元のついたまま扇のように広げワイルドに揚げたもの。ヤングコーンの天ぷらはジワっとした旨味あり。

ベルハウスのかき揚げそば

そばとつゆは上品・あっさりめで、ツルッといける味わいなのだが、それとは逆方向を向いたように、とにかく天ぷらのボリュームはすごい。どれも野菜主体で、カラッした揚げ加減は野菜のうま味と香りをギューっと閉じ込めている。素材は鮮度よく甘味があり、八百屋発祥のお店だというのも納得できる。

ベルハウスのメニュー

そばを食べながら店内の壁をながめると、夜の部のメニューを書いた短冊が並んでいる。どれもシンプルなものだが、数多の立ち飲み好きに認められ厳選されたものばかりが並んでいるとみた。天ぷらの腕前は昼の部で十分に確認できたことだし、次回は夜にふらっと立ち寄ってみたい。

ベルハウスのメニュー

■DATA
住所:神奈川県川崎市高津区二子4丁目3-3
アクセス:東急田園都市線高津駅・徒歩2分
営業時間:10:00〜13:30(そばの部)、16:00〜不明(立ち飲みの部)
定休日:木曜・日曜(立ち飲みの部は木曜も営業)
評価:3点 ☆☆☆

※本記事は、2022年9月10日取材当時の情報です。

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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。

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