思い出の服を、愛犬仕様にリメイクできる「FLAFFY TAYLOR」[後編]【ビギニン#45】

ドメスティックブランドのPRを経て、大好きな犬と人の関係をフラットにすべく犬メディア「FLAFFY.me(フラッフィー ミー)」を立ち上げた廣田智沙さん。愛犬3匹に見合う洋服が見つからなかった経験から、人用の服を犬用の服にリメイクしてくれるサービス「FLAFFY TAYLOR(フラッフィーテーラー)」を企画しました。

後編では、出来上がったTシャツをもとに、その驚異的なこだわりをご紹介! 知見を深めたことで生まれた、新たな取り組みについても伺いました。

前編はこちら

今回のビギニン

FLAFFY 代表取締役 廣田智沙さん

1995年生まれ。兵庫県出身。同志社大学卒業後、人材系コンサルティング会社を経て、2020年にドメスティックブランド「ビューティフル ピープル」に入社。PRの経験を積み、2021年、株式会社FLAFFYを創業。現在は3匹の愛犬と一緒に暮らしている。

Struggle:
手作りだけど本格派。1ヶ月で10着程度が限界!

「FLAFFY TAYLOR」の特色とは? ゑもんの洋服を参考に、ここからは廣田さんにサービスのこだわりを教えてもらいます。大前提として、「FLAFFY TAYLOR」には、コレクションブランドで活躍するプロのデザイナーとパタンナーが制作に携わっています。しかも、愛犬それぞれに合わせて、一からパターンを引きデザインも考案します。

ゑもんの場合も、廣田さんによる丁寧なカウンセリングの後、世界で1枚だけのTシャツに仕上げてもらいました。ちなみに、犬種はフランス生まれのビション・フリーゼ。他犬種と比べてやや胴長短足の体型で、筋肉量が豊富な男の子です。ボリューミーな毛並みも特徴の一つ。活発な性格で、洋服を選ぶときは、着させやすさと動きやすさを重視しているんだそう。

まず注目したいのは袖付け。犬は人と違って肩がないので、袖を付ける位置は胸の幅に合わせます。ゑもんは胸筋が発達しているため、若干ゆとりを持たせてオーダー。また、動きやすさを考慮して、袖丈は第一関節が隠れないように1cm単位で微調整しています。

腹まわりは短めにして、丸くカット。オスが片足を上げて用を足すとき、服の裾を汚してしまう悩みを解消する工夫です。人用の服に男性モノ女性モノがあるように、犬用だって体の構造に合わせた洋服があった方がいい。これも廣田さんのこだわりのひとつ。

立派なアフロヘアをしていても、無理なく被りで着られるように、首元はリブを残して、サイズを調整。活かせるところは人用の服のディテールをそのまま使うのがモットーです。

「手作りだけど、本格派。ワンちゃん専門のリメイク事業は、国内ではうちだけだと思います」

はしゃぎ疲れたゑもん

でも、1着1着しっかりヒアリングして、パターン引いてデザインして……ってかなり大変そうじゃない? 何かマニュアルがあるに違いないと内情に迫ると、廣田さんは爽やかな笑顔で一蹴。

「事前のカウンセリングは30分くらいかけて私自身で行いますし、パターンもデザインも、ワンちゃんの数だけありますよ。その代わり、1ヶ月に対応できる枚数は10枚程度なんですが(汗)。サービスを立ち上げるのにも苦労しました」と廣田さん。特に大変だったポイントは3つありました。

1つ目はプロのスタッフを集めること。“人のコレクションブランドの制作に携わる現役のパタンナーとデザイナーで、犬用の服を作りたいと思っている人”という条件にマッチする人はなかなか見つからず、今手伝ってくれているスタッフは、まさに草の根を分けて探し出した精鋭。

2つ目はファンをつくること。前例がなく、なおかつニッチ層に向けてのサービスを成功させるために、廣田さんが運営するインスタグラムメディアのフォロワー数を2万人に伸ばす目標を設定。愛犬との暮らしを豊かにする情報を毎日更新し続けて、半年間で達成!

3つ目はサービスの方向性を定めること。既製品をかき集めて研究してみると、同じ犬種でもサイズが豊富であることが判明。当初は数種類のパターンから選んでもらう、セミオーダー式を採用する予定でしたが、人と犬それぞれのニーズに応えるために、結果的にオーダーメイド式になりました。

「もちろん、制作過程も複雑。生地をカットするだけでも、まず古着を解体して使える部分を探すところから。さらには、胸のロゴを背中につけてほしいとか、着せやすさを考慮して前開きのタイプに変更しようとかオプションが追加される。同じ要望はひとつとしてないから、結構大変なんですよ(笑)」

廣田さんは、ローンチ前に5件の家庭を対象にモニターを要請。すると、飼い主からはさまざまな希望が寄せられました。

先代犬を散歩するときに着ていたパーカを、今の子に引き継ぎたい。お気に入りのマウンテンパーカをフードを残したままリメイクしたい。皮膚疾患を抱えている愛犬のために、今治のタオルで洋服を作ってほしい。

モニターそれぞれの“想い”が詰まった依頼を受けて、サービスのコンセプトが決定しました。

「歩んできた人生や大切なパートナーとの思い出を、愛犬にも少しだけ受け継いでほしい。そんな願いを叶えられるサービスを作れたらいいなと思います」

Reach:
「犬の服」の領域を超えていく

マーケティング業界出身ならではの万全の準備体制で、昨年ローンチされた「FLAFFY TAYLOR」。クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」では、設定目標額100万円をわずか14時間で達成する好スタートを切れました。 最終的には達成率252%にまで到達し、愛犬家界隈だけでなくメディアからも取材が殺到。

「1枚の制作にかける時間が長いのもありますが、現在うれしいことに3ヶ月先まで予約が埋まっている状況です。テレビやラジオなどにも出演する機会もあり、自社のインスタメディアはフォロワー数14万人が目前です」

「3ヶ月先まで予約が埋まっています!」

話題になっても、丁寧なカウンセリングと制作スタイルは変わらないまま。毛足の長い犬の場合はファスナーをスナップボタンに変えるなどして毛が引っかからないように提案したり、重たくならないように無駄なパーツは出来るだけ排除するアドバイスをしたり。サービスが広がるにつれて、廣田さんの元には予想していなかったようなオーダーも届くようになりました。

「いつも以上にプレッシャーが大きかったのは、お父さんの形見のシャツを提供されたとき。高価なハイブランドの製品をリメイク希望される方も多いんですよね。可能な限り基本的にはお引き受けしますが、某メゾンのレザーバッグをワンちゃんの服にリメイクしたいと相談されたときは驚きました。できなくはなかった……のですが、着心地を保証できないため別のアイテムでご対応しましたね(笑)」

さらに、廣田さんは次なる施策に取り組んでいる最中! 念願だったオリジナル犬服ブランド「Maison flaffy(メゾン フラッフィー)」も立ち上げました。

Maison flaffyのレインコート/各2万2000円

「Maison flaffy」は、廣田さんを含む「FLAFFY TAYLOR」のスタッフの精力を注ぐ犬服の領域を超えたメゾンラインです。すべてのアイテムにコレクションブランド御用達の高級素材を採用。縫製も技術の高い日本の工場に依頼をかけ、ハイブランドさながらのクオリティを犬服で実現します。

上の写真でボストンテリアが着用しているのはレインコート。生地に採用しているのは、優れた防水性と透湿性を兼備した高機能素材。切替えにリフレクターのコードパイピングを使用しているので、夜間のお散歩にも最適です。また、レインスーツにジョイントされたマントは、スナップボタンで着け外し可能。汚れても手洗いできるし、ミリタリームード漂うシンプルなデザインはアウトドアシーンにもマッチしそう! これからの季節は雪の降る日にもうってつけでしょう。

「『FLAFFY TAYLOR』を通して、これまで数多くの犬用の服のパターンを制作してきました。そこで得た知見と経験をアイテムに落とし込んだのが、『Maison flaffy』。愛犬にとって、本当に着用しやすい犬服を作っている自信があります! お値段は少し高めかもしれませんが、実際リピーターさんも多数いらっしゃいます」

廣田さんは、「Maison flaffy」の他にも、「フリークスストア」と犬と遊びに行けるイベントを企画から出展まで共同開催したり、ペットそれぞれに合わせ、カスタマイズができる出張撮影「SNAFFY(スナッフィー)」の提供を開始したり、“愛犬との幸せな暮らし”のために、新しい取り込みを次々にリリースしています。

人と犬の関係が今よりもフラットになるように。お互いを尊重し合うあたたかい世界が、廣田さんの活動をきっかけにもっと広がっていく予感がします。

それにしてもTシャツを着ているゑもん、めっちゃかわいかった〜。ぜひ、みなさんの愛犬も「FLAFFY TAYLOR」を利用してみてね〜!

FLAFFY TAYLOR

犬服専用のテーラリングサービス。ユーザーは事前カウンセリングを受けた後、リメイクしてもらいたい手持ちの衣類を郵送するだけ。商品の完成は、約1ヶ月〜2ヶ月程。プロのデザイナーとパタンナーによって手作りされた、世界に1つだけの服が自宅に届く。

Tシャツ・カットソー・ポロシャツ・トレーナー・ユニフォーム・タオル・生地提供など/1万2100円
パーカ・スウェット・シャツ・ブラウス・スカート/1万7600円
ニット・セーター・カーディガン・パンツ・ワンピース・フリース・前開きのパーカ/1万8700円
ダウン・コート・ブルゾン・マウンテンパーカ・ジャケット/3万3000円

(問)FLAFFY
https://flaffy.me/

※表示価格は税込みです


写真/武蔵俊介 文/妹尾龍都

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