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「常識とは、18歳までに積み重なった偏見の累積でしかない」これは、かの有名な理論物理学者、アルベルト・アインシュタインの名言のひとつ。多かれ少なかれ、誰しもが固定観念や先入観を持って生活を送っています。

しかし、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている現状、これまで当たり前だった私たちの常識は、数年のうちに良くも悪くも当たり前ではなくなりました。例えばリモートワークの価値観は、これまで「仕事は会社でするもの」という固定観念を覆し、働き方の可能性を広げる新しい当たり前となりました。

そして、今回のビギニンに登場する製品も、固定観念を打破して生み出された代物。開発したのは1923年に虎印魔法瓶製造卸菊池製作所として創業し、来年創業100年を迎える「タイガー魔法瓶株式会社」。長い歴史の中で培ってきた技術と経験を駆使して「真空断熱炭酸ボトル」の完成に漕ぎ着けました。

最大の特徴は冷たい炭酸飲料の温度を上げず、爽快なままボトルに入れて持ち運べること。老舗魔法瓶メーカーが打ち出す意欲作は、いかにして生まれたのか。その開発秘話を「タイガー魔法瓶株式会社」で働く2人のフロンティアに伺いました。

今回のビギニン

タイガー魔法瓶 真空断熱炭酸ボトル 開発チームのふたり

左:タイガー魔法瓶株式会社 商品開発グループ 開発第3チーム マネージャー 中井 啓司さん。
社歴30年以上の大ベテラン。商品開発業務や海外赴任など経験は多岐にわたる。魔法瓶について歴史を尋ねると、まるで辞書をひいたのかと錯覚を起こすほど正確な情報を教えてくれる。

右:タイガー魔法瓶株式会社 ソリューショングループ 商品企画第1チーム マネージャー 南村 紀史さん。
入社は2001年の春。品質管理チーム、商品開発チームでエンジニアとしてキャリアを積み、現在のポジションへ。当然のように持っているマイボトルは、いつの頃からか2本に。炭酸水用とコーヒー用で使い分ける。

idea:
ネクスト100年のために


来年で創業100周年を迎える「タイガー魔法瓶」。ご存知の通り日本屈指の魔法瓶メーカーです。部活に精を出した青春時代から、虎印の製品にお世話になっている人も多いことでしょう。

2020年には「未来を水筒につめて」というキャッチコピーのもと、真空断熱ボトルを製造する際の4つの約束(NO・紛争鉱物 / NO・フッ素コート/ NO・丸投げ生産/ NO・プラスチックごみ)を提示。業界の老舗として、人権・健康・環境に配慮したモノづくりにも積極的に取り組んでいます。

新しく建て替えられたばかりの本社があるのは、大阪府の北東部に位置する門真市。大阪は、古くからガラス産業が盛んで、ガラスを使う魔法瓶の製造も地場産業として定着。中井さん曰く、最盛期は25社以上の魔法瓶メーカーが大阪に存在していたんだとか。

100年続いたからと言って、この先も100年続いていくわけではない。そう客観的に自社を分析するのは、今年でキャリア20年目となる南村さん。業務用機器の開発に携わっていた父親の働く背中を見て、「自分は生活に密着したモノづくりをしたい!」と、タイガー魔法瓶に入社。現在は既存の製品群の新製品を企画するチームの責任者として、その手腕を奮っています。

「なにか仕掛けなくてはいけない。次の100年に向けて、新製品開発に対する社内のムードが高まっていました。注目したのが、これまで何度も挑戦しようとしては開発を諦めてきた“炭酸水を入れられる魔法瓶”だったんです」。

trigger:
魔法瓶界の固定観念を打破

1923年に初めて発売されたタイガー魔法瓶

なぜ魔法瓶に炭酸水を入れられないのか。その答えに触れる前に、魔法瓶について少しおさらい。ルーツは1873年のヨーロッパに遡ります。学者たちが真空容器による放熱遮断実験を行ったことが誕生のきっかけです。日本に輸入されたのは1907年の秋ごろ。その後1953年に「全国魔法瓶工業組合」が設立され、日本の魔法瓶業界の健全な発展と製品の品質の確保が図られてきました。

温かいものは温かいままに、冷たいものは冷たいままで。読んで字のごとし、“魔法瓶”という名前は、まるで魔法をかけたように飲み物の温度を保つ機能に由来します。

その機能が働くために影響しているのが、内瓶と外瓶からなる魔法瓶独特の2重構造です。とても簡単な説明になりますが、ふたつの瓶の間に真空層を作ることで保温・保冷効果を高める機能を獲得しています。素材は大きく分けてガラス製と金属製の2種類。現在はステンレス製が主流となっています。

そんな魔法瓶ですが、使用上の安全面を考慮して注意書きには必ず次のような文言が加えられています。

魔法瓶には炭酸飲料を入れてはいけない。

これは炭酸飲料の温度が上がると、水の中に炭酸ガスが溶け込まないため内圧が高まり、ボトルの栓が吹き飛ぶ危険性があるため。安全面を保証することができないので、温度を保てる魔法瓶だとしても業界は炭酸飲料を入れて使用することを推奨してこなかったのです。

「だから、正確には我が社が開発した真空断熱炭酸ボトルは、魔法瓶とはいえません。炭酸水を入れられるようにしたから。ただ基本的な構造や使用している技術は、当社が日ごろ魔法瓶を作っているものとなんら変わりありません」。

そう教えてくれたのは、入社30年の大ベテラン中井さん。商品開発グループで魔法瓶の開発チームの指揮をとっており、真空断熱炭酸ボトルの開発にも初期から参加しています。

「我々が開発してきたのは“魔法瓶”だから炭酸は入れるのはNG。これまで何度も開発検討に踏み込みましたが、その固定概念が壁となり諦める。それを繰り返してきた歴史があったんです。直前に控えるネクスト100年。この歴史を塗り替えようと意気込みました」。

南村さんは、そう考え経営陣に打診。すると意外にも「俺も炭酸好きや!ぜひやろう!」と追い風となるGOサインを受け取ります。実際、日本の強炭酸市場は、健康・美容ブームに火が着いたこの10年間で右肩上がり。社内からのリクエストはもちろん、お客様からも「炭酸飲料を冷たいままで入れられるボトル」の開発を希望する声が上がっていました。

「企画チームから初めて話を聞いた時は、正直『どういうこっちゃ』って驚きました(笑)。もちろん、やりたい気持ちはある。でも、これまでに前例のない試みだし、それなりの下準備が必要。ほかの作業も抱えているなか、開発チームとしては覚悟が要りました」。

手始めに中井さんが取り組んだのは、市販されている炭酸飲料水のリサーチから。社内に炭酸実験に関する参考資料はありましたが、製品化となると一から調べ上げていかねばなりませんでした。同じ炭酸飲料だとしても、はたして用量によって炭酸ガスの濃度は一緒なのか。その測定器もリースしなければならないほど、開発はゼロからのスタートでした。中井さんは開発初期の心境を懐かしみます。

新社屋にあるミュージアムスペース

「環境への配慮の観点から、社内にはペットボトルの持ち込みが禁止されています。とはいえ、参考資料として、どうしても炭酸飲料が必要で。データを取るためなので会社から許可を受けてはいましたが、どこかソワソワした気持ちで実験室にペットボトル飲料を持ち込んでいました(笑)」。

これまで積み重ねてきた技術があるから、アイデアを形にすることはできる。しかし、データ収集などの下準備と、異常時を考慮した確固たる安全性を担保するために、真空断熱炭酸ボトルの開発は通常の開発より約2倍の時間がかかりました。気になる開発秘話は後編にてご紹介します。

後編:身体に炭酸水を何度も浴びる⁉

タイガー 真空断熱炭酸ボトル MTA-T050/T080/T120/T150
独自開発の「BubbleLogic(バブルロジック)」構造により、安心安全に炭酸水を入れて持ち運べるステンレス製の真空断熱ボトル。真夏にうれしい冷たさと炭酸の弾ける爽やかさをキープできる。内側が極限まで滑らかに仕上げられているためお手入れも簡単だ。見た目の堅牢さに対して、驚くほど軽量なのもうれしい。スチール、エメラルド、カッパーの3色展開。左から1500ml / 7500円。1200ml / 7000円。800ml / 6500円。500ml / 6000円。全て税込価格。

(問)タイガー


写真/中島真美 文/妹尾龍都

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