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時代のニーズや変化に応えた優れモノが日々誕生しています。心踊る進化を遂げたアイテムはどのようにして生み出されたのか?「ビギニン」は、そんな前代未聞の優れモノを”Beginした人”を訪ね、深層に迫る企画です。

東谷商店の東谷正隆さん

衣替えは絶好の断捨離チャンス。この機会にクローゼットを整理する方も少なくないのでは? 環境省の調査によると、日本国民が一年間に手放す服は12枚だそうです。12枚ならゴミ袋1~2つに収まるので、それほど多くない気がしますよね。でも日本全体の廃棄衣類は年間約50万トンと莫大な量になっています。

この50万トンはすべて家庭から一般ゴミとして出された衣類です。スリフト(古着や家具などを寄付によって集め、再販し、その収益で慈善活動などを行う小売形態のこと)や寄付文化がある欧米に比べ、日本は古着のリサイクルが浸透しておらず、不要になった服の68%が普通ゴミとして捨てられ焼却処分されています。近年、こうした状況を改善するため、アパレルブランドや大手スーパーが古着の引取サービスを開始。その効果もあって、自治体による衣類の分別収集と合わせ回収率は18%まで上がりました。古紙の81%、ペットボトルの93%に比べるとまだまだですが、ペットボトルも30年前は1%も回収されていなかったので、システムが整えば古着のリサイクルも今後、当たり前になっていくと考えられます。

家庭から回収された衣類

現在、回収された衣類は故繊維業と呼ばれる古着の卸売を専門に行う会社が集収しています。故繊維業者は、衣服を一枚ずつ手作業で仕分け、再販、海外向け、資源用、廃棄処分など次の工程へ送ります。古着を血液とするなら、故繊維業者はそれを循環させる心臓部。近頃、サーキュラーエコノミーという経済用語を耳にしますが、そういった言葉が現れるずっと前から、衣類の資源循環に取り組んでいます。今回は、故繊維のなかでも特に再使用の難しいとされてきた廃棄ウールからラグを生み出したビギニンのお話です。

今回のビギニン

東谷商店の東谷正隆さん

東谷商店 東谷正隆さん

1982年生まれ。50年以上に渡って大阪泉佐野市で古着の卸売を営む東谷商店の3代目。東京での営業職を経て25歳で家業に入る。2020年、廃棄衣料をメインの原材料に、品質と環境的価値を併せもつプロダクトブランド「TONITO」を立ち上げる。プライベートは、中3からドラムを始め現在もバンド活動を継続。二女の父で、娘さんと一緒にライブへ行くこともあるそう。まさかのホコリアレルギーです。

Idea:
故繊維業がゴミ化していく現状に歯がゆさを覚える日々

空間を全てを埋め尽くす衣類の山。ここは大阪湾から1.5キロほど内陸にある東谷商店の仕事場です。見えるのは全て一般家庭から出た衣料品。行政が集収したもの、リサイクルショップの売れ残り、最近はアパレル企業が回収した古着も多いといいます。

家庭から回収された衣類

「ここにある衣類はすべてお金を払って買ったものです。リサイクルショップの処分品や、自治体の資源ごみとして集められたものはトラックで取りに行きますし、アパレルショップが店頭で引き取った回収品はダンボールで届きます。例えば昨年(2022年)の夏なんかは1か月間に6千箱くらい入りました。基本的にみなさんの処分された服がたどり着く最終地点だと思ってください」

集められた衣料は倉庫の奥から順に積まれていきます。始業時間になるとフォークリフトで古着の山から作業分を取り分けベルトコンベアへ。スタッフの方々が目視で一点ずつ、素材、形、タグ、汚れなどをチェックします。

回収された衣類のチェック

「まずはリユース──古着として再販できるものを分別します。1番目は国内用、2番目は海外向け。パーセンテージていうと、国内向けになるのは全体の5%位くらいですね。国内向けは、少しの傷でも価値が下がるので細かいところまで見ています」

国内用に選別された衣類は、古着屋をはじめ、リメイク作家やメルカリ・ヤフオクの個人出品者などにも販売されるそう。基本的に一着いくらではなく、キロ単位の取引になります。

「海外向けは全体の30〜40%を占めるボリュームゾーンです。ほとんどが東南アジアや南アジアに送られます。マレーシア、パキスタンのマーケットが大きいですね。どちらも基本的に暑い国なので、冬物は人気がない。だからウールはゴミになっていまうんですよ」

家庭から回収された衣類

続いて工場などの雑巾で使われるウエス材が10%、車の内装や吸音材として使われるコットンが5%を占めます。合計するとリユース・リサイクルされるのは全体の約60%、残りの約40%は焼却処分されます。ちなみに、ブランドやショップでのアウトレット品(売れ残った商品)は故繊維業には流れません。

「新品でタグ付きのものはバッタ屋さんと呼ばれる業者がまとめて買うんです。バッタ屋さんは、安くで大量に仕入れ、フリーマーケットの業者さんに流したり、自分でもネットや店舗で販売されていますね」

東谷さんが会社に入って15年。その間に、再販可能な衣類が減ってきたといいます。

「専門業者や、個人間の売買が増えると、故繊維業に集まる衣類はゴミ化していきます。その現状に歯がゆさを感じていました」

Trigger:
故繊維業が担う役割と、世界に向けて何ができるかを考える

東谷商店の東谷正隆さん

「故繊維業は買い取った古着を選別しリユース目的で流しています。昔から変わりません。それを変えたくて、新しいことができないかと思ったんです。そこから、この仕事が担っている役割や、自分たちがこれからの世界に向けて何ができるかを考え始めました」

スーパーやセレクトショップといった場所で中古衣類の引取が始まり回収率はアップしています。しかし、集めた古着がどのようにリユース・リサイクルされているのか、一般にはまだまだ周知されていません。東谷さんは、そこに光を当てられないかと思案します。

「アパレルの店頭で、エコの一環として古着を引き取られた後、実際どれだけの衣類がリサイクルされ、ゴミになってるかお客さんはわからない。今は”回収”の部分がクローズアップされているからです。そんな現状を第一段階と捉え、第二段階として再利用・再資源化を具体的に見せられれば意義があるんじゃないかと考えました。ぼくたちの現場感や、長年この業務に携わってきた者の意見として細かいところ──どの資源がどういう工程を経てどのように循環しているか、伝え、知ってもらう。それが自分たちにできる役割ではないかと」

回収された衣類のチェック

そして、東谷商店で初の試みとなるウールの再資源化プロジェクトがスタートします。

「昔はウールも原料として出して(販売して)いたんですが、ファストファッションによる低価格化や、ポリエステルを混紡した素材の増加で、リユース・リサイクル率がどんどん低くなっていったんです。今はお金を払って処分する──ほぼゴミになってしまったウールをなんとか有効活用したいというのがベースです。また製造にあたって、リサイクル衣料の透明化もテーマにありました。リサイクル原料を使った衣料が増えてきていますが、ここだけの話、どれだけ再生素材を使用したか表示義務はないんです。つまり、1%でも10%でも同じリサイクル衣料なんです。もちろんやらないよりはやったほうがいいんですが、ぼくのなかでは、真摯に取り組んでいる企業と、リサイクルを販促手段として使っているような企業とを区別できないという思いがありまして。東谷商店でやるからには、廃棄された衣料をどれだけ使っているかはっきりパーセンテージで示そうと決めたんです。」

となると、低いリサイクル混率では計画は成立しません。後編では100%の再生ウール素材を目指して、東谷さんの挑戦が始まります。

後編:バージンウール100%より、柔らかい!?リサイクルウールラグが完成 に続く

TONITOのラグ

本体はリサイクルウール70%に、コシを持たすためバージンウールを30%入れた糸を使ったラグ(写真はRUG SMALL)。サイドのフリンジはラミー(麻)製で、手織りで作られており、チクチクせず柔らかさ風合いともに抜群だ。パッケージのカラフルな紐は、故繊維の生地を再利用している。BLANKET RUG(W145×H200cm)/2万680円。RUG(W50×H75cm)/9350円。RUG SMALL(W30×H45cm)/3520円。

(問)TONITO
https://tonito.theshop.jp

※表示価格は税込み


写真/中島真美 文/森田哲徳

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