好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
南貴之さんの琴線に触れた、謎多き80sライトの魅力とは?
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
この配色が、最高にツボなんです
もう何回も話していますが、ポストモダンが好きです。思想とかっていうよりは、配色とか、おもちゃっぽいけど魅力のあるプロダクトとか、自分ではできないなと思わされるデザインに惹かれるんです。このライトも、そんなポストモダンの影響が色濃い’80sのもの。
だけど、前回に続いて詳細がまったくわからないんです(笑)。唯一わかってるのはオーヤマ照明という日本のメーカーが製造したものというだけ。プラグも日本に対応したものだけど、日本の住居を想定したにしてはコードがやたらと長いし、天吊りなのにライトが振れて向きを変えられるというのも意味がわかりません。
かなり尖ったプロダクトなのに同じものを見かけないところを見ると、一般に販売されていないか、店舗用に特注でつくられたりした可能性もあるのかも。
そんな異常性も気になるけど、この配色が最高にツボなんです。白黒赤っていう僕の大好きな色で、トーンも絶妙。カバーのグリッドもおしゃれ。ポストモダンの名作のなかにこれをしれっと混ぜたら、「あのライトは誰のデザイン!?」となりそうですよね(笑)。
家具についてはデザイナーの有名・無名は適材適所で、優劣はないと思ってます。むしろ、名前が立っていてモノがわかりやすいことでダサくなる空間もありますよね。いずれにしても、日本が経済的に豊かだった時代らしい、おもしろい古具だと思います。もし同じものが出てきたら、迷わず買うつもりです。
傾奇者 首傾げつつうなずかす
BRAND:UNKNOWN
ITEM:PENDANT LIGHT
AGE:1980s
合理性とは縁遠そうな謎のグッドデザイン
製造したオーヤマ照明(現オーデリック)のルーツが金属製作所ということもあってか、加工・処理ともに高品質。通常はあまりデザインが入らない照射部にグリッドをあしらったカバーが付くあたりに明確な意思が滲む。
DETAIL
円柱型のシェードとフラットなカバー、アーチ状の角度調整式の吊り具で、ちょうど浅い鍋を逆さにしたような独特のフォルム。ネジやスイッチ周りのくすんだ赤が利いている。

好事家
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、ディレクション業と型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々良品を探している。寄(よせ)では7月9日の1日限定で、九州から6つの酒造が一堂に会する“大焼酎祭”を開催。お見逃しなく。
※表示価格は税込み
[ビギン2025年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。