こういうものが無機質な空間にあるとグッとくる
このチェアはイタリアのデザイナーデュオ、アフラ&トビア・スカルパが手掛けた「アフリカ」という名のシリーズのもので、おそらく’70sの個体。ミニマルな家具が好きな僕としては珍しいなと我ながら思うけど、すごく有機的なデザインに惹かれます。こういうものが無機質な空間に置いてあるとグッとくるんですよ。
実は、アフリカのヴィンテージやいろんな部族の工芸品は以前から好きで、個人的に集めたりしていました。このイスもその名の通りアフリカのネイティブなものにインスピレーションを得ているんだと思うけど、それをイタリアの人がモダンに変えているところがすごくイイ。
こんなふうに言うのはアレだけど、そういう試みってあまりうまくいかないパターンが多い気がするんですよ。例えば「海外デザイナーがジャポニスムに挑戦!」とか、聞いた瞬間に嫌な予感がするじゃないですか?(笑)。でも、そのクロスオーバーをこんなに格好よく作れるなんてセンスがいいな、って。
特に気に入っているのが、その「後ろ姿」。背もたれは真ん中が割れていて、その隙間に美学を感じますね。本当にバックシャン。
彼らに限らずピエール・シャポーとかシャルロット・ペリアンとか、フランスのデザイナーにもプリミティブなアフリカの物作りからの影響を感じることがあります。インスピレーション源と実用品としての質とデザイン、すべてがマッチして素晴らしいものになってると、やっぱり響くよなぁ。(南 貴之)
「一条の 隙間に覗く うつくしさ」
BRAND:B&B
ITEM:CHAIR
AGE:UNKNOWN
2本の脚と背もたれをそのまま一体化させた特殊な設計のチェア。ウォルナットとローズウッドを使用し、クッションの効いたレザーの座面を組み合わせている。装飾性は高いが過不足を感じさせないのが粋だ。
DETAIL
背もたれの意匠は積層した木材を削ることで表現された寄木によるもの。意図して描かれた図形ながら、まるで自然に生じたかのような違和感のなさは完成度の高さの証。
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。
[ビギン2021年10月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘