好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]

スペックよりも美学を色濃く伝える一冊

まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。

GAVINAのCATALOG

商品を載せる、カタログ自体が素晴らしい

ガヴィナはイタリアの会社ですが、1968年に破産してしまったそうで今はもうありません。

だけど調べてみると、この会社をつくったディノ・ガヴィナさんという方は自身もデザイナーだった人で、マリオ・ベリーニにマジストレッティ、スカルパやカスティリオーニ兄弟とか、錚々たるデザイナーの初期の作品をプロデュースしていたそうで。

そんなふうに知っていくうちに、ガヴィナの社名で家具を探すことも増えました。他の会社ではそんなこと、ほとんどしないのに。ある日、海外のオークションサイトでその名前を検索していたら見つけたのがこのカタログでした。

当時どんな商品があったのか知りたくて何の気なしに買ったんですが、現物が届いて驚愕しました。とにかくカタログ自体のデザインが素晴らしくて! だって、文字にはオレンジを利かせつつ、肝心の商品は全部モノクロですよ? 普通逆でしょ(笑)。

販促用のカタログにまで美意識が貫かれているのかと感動しましたね。装丁も簡素で電話帳みたいだし、高級なワケじゃないのにこのカタログ自体が立派な古具だと思える完成度。もしかしたら、ウチの商品はこういうものに反応できる人が買うべきだと考えていたのかも……なんて思ったり。

格好いいものを追求していくとビジネスとのバランスをとるのが難しくなるのは理解できるし、もしかしたらこんな姿勢が破産の理由だったりするのかなぁ。そんな、愛おしさを感じずにはいられない一品です。(南 貴之)

「亡き今も カタログだけは 雄弁に」

GAVINAのCATALOG

BRAND:GAVINA
ITEM:CATALOG
AGE:1960s

実に10年弱の短期間で消滅したガヴィナだが、同社が家具の歴史に与えた影響は大きい。このカタログにはそれを裏付ける強い美意識が滲む。ブロイヤーから高濱和秀まで、掲載ラインナップの充実ぶりも特筆モノ。

DETAIL

GAVINAのCATALOG

やや光沢のある厚手の紙製の表紙には、シンプルに社名のみが。リングで綴じたシンプルな作りと、細部まで徹底されたレイアウトや写真、文字要素とのギャップが異質。

南 貴之

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、グラフペーパーの主宰など、型にはまらず活動中。日々新たな良品を探し求めている。

 


[ビギン2022年2月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘

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