好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
60年代の西ドイツ製スピーカーを愛でる。家庭用サイズでいい音が鳴る可愛いヤツ
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
家庭用サイズでいい音が鳴る可愛いヤツ
シュルツ、シーメンスと並んでドイツの3大同軸スピーカーブランドと言われているイソフォンのスピーカーシステム、’60年代の西ドイツ製です。西独……いいですよね(笑)。
東西が統一された現在はもちろん素晴らしいけど、工業大国の旧時代に惹かれるのかも。最初は見た目がヤバい! と思ったのが出会い。それで実際に使ってみたら、これが音もしっかり鳴るんです。
構造が特徴的で、普通は正面に向くウーハーが真下に向かっていて、低音が本体下の穴から空間全体に回る感じ。ツイーターは斜めに付いてます。そのぶん置き方に自由が利くのがいいですよね。
僕は昔からスピーカーをデザインで見ているところがあって、空間を邪魔しないということをすごく重要視してます。普通、スピーカーって置き場所も必然的に決まってくるし、他の家具ともあまりマッチしないと思うんですよ。だからこそ、家庭用くらいのサイズでいい音が鳴るこういう可愛いヤツは本当に珍しい。3本脚に楕円形のデザインは古い日本家屋や町家にもよく合いそう。
和室にこれがあったら、めちゃくちゃ格好いいと思います。そうそう、実際の音質は高音に強くて、ちょっとドライな感じ。ピアノ系とかクラシックは特によく合うし、録音環境にこだわってるジャズとかボーカルものもいい感じに鳴りました。
このスピーカーに合う音楽を吟味して、夏に聴くのも気持ちよさそうだなぁ。
下向きのウーハー上げる暮らし向き
ITEM:AUDIO SPEAKER
AGE:1960s
目と耳と、両方で愛でる旧西独製のクラシック
10cm口径のツイーター2個を側面に向け、25×18cm口径の楕円形ウーハーを下側に向けた無指向性スピーカー。サイズに対して優れた音質もさることながら、曲線と木目の美しさが際立つデザインもじつに秀逸だ。
DETAIL
磨きがしっかりとかかったウッドの表情は名作家具さながら。実際のサウンドだけでなく、見た目も全方位的にスキがない。本体上部にはトーンコントロール用のスイッチもあり。
好事家
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、ディレクション業と型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。東京・参宮橋の〝寄〞では、7月17日より公式WEBが始動。各種グッズの購入や席の予約も可能に。
※表示価格は税込み
[ビギン2024年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。