なぜか赤だけが他より高いんです
昔からガラスの質感が好きなんです。いつからそうなったのか、はっきりとは覚えていないけど、それこそラムネのビー玉あたりが原体験なのかも。
ベニーニのヴェネツィアングラスみたいに超絶的な技法の柄モノも好きだけど、ここで紹介しているカイ・フランクの“カルティオ”シリーズのようにすごくミニマルで、その対極にあるようなものも好きなんです。
薄口のシンプルな作りで、そこに色目の面白さがあると思います。僕個人はどの色も同じくらい好きなんだけど、なぜか古物としての相場は赤だけが他より高いんですよ。
何でも一説では、赤の色を出すには(貴金属の)金を使わないといけないからなんだとか。本当かどうかはわかりませんが、そういうところにもロマンがありますよね(笑)。
このシリーズは、現在はイッタラから出ているんですが、僕が集めているのはヌータヤルヴィが生産していた頃のもの。当時の製品って、同じモデルなのになぜか大きさが微妙に違ったり、形に歪みがあったり、気泡が入っていたりと、作りが拙いんですよ。
現行のイッタラはちゃんときっちり作られているんです。もしかしたら、今もカイ・フランクさんが生きていたら、イッタラのほうを気に入るのかも知れません。彼はミニマリストで完璧主義者だったみたいだから。
でも、やっぱり僕は人が作っているという感じがするヌータヤルヴィに愛着を覚えてしまいます。だから、古いものを探しちゃうんだろうなぁ。(南 貴之)
「薄ガラス つたなき魅力 ここにあり」
BRAND:NUUTAJARVI
ITEM:TUMBLER“KARTIO”
AGE:1950~’80s
“フィンランド・デザインの良心”として知られるカイ・フランクの代表作的シリーズ。左から時計回りにカクテルグラス1万5000円、グラス(中)1万5000円、グラス(小)7800円、ショットグラス7000円(フレッシュサービス ヘッドクォーターズ)
DETAIL
多様なフォルムでデザインされ、他にボウルなどもラインナップする。世界中の熱心なコレクターが鎬を削って収集する人気作。グラス(中)各7800円、グラス(小)5800円。
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、グラフペーパーの主宰など、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。
[ビギン2020年8月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘