日本でももっと認められるべき人
高濱和秀さんのデザインした家具は繊細さと大胆さのバランスが絶妙で、空間を邪魔しないところに惹かれます。僕は長いこと、イタリアは装飾的で、日本のデザインとはあんまり重なる部分がないと思っていたんですよ。それを覆してくれたのが高濱さんでした。
あるときLAの友達のギャラリーに行ったんですが、そこに高濱さんの手掛けたソファがあってそれが超カッコ良かったんです! でも、僕は高濱さんのことは知らなくて、海外の方の作品だと思っていたらその友達が「日本のデザイナーだよ」と教えてくれて。
高濱さんは’60年代にイタリアに渡り、以来そこを拠点に活動されたという方。その後、’80年代頃には「イタリアのデザインは日本人がいないと成り立たない」って言われるくらい、素晴らしい日本のデザイナーさんがたくさんいて、現地のメーカーの仕事をしていたんだそうです。有名なところだと、倉俣史朗さんなんかもその一人ですね。
だけど、高濱さんは実績の割に日本では知られていないような気がする。もっと認められていいくらい、優れたものを作った人なのに。
でも、僕が持っているガヴィナの古いカタログを眺めていたらマルセル・ブロイヤーとかそういう人たちに並んで高濱さんの家具も載っていて、それを思うとなんだか誇らしい気持ちになります。日本人のアイデンティティとかデザインの能力を、昔からイタリアの人たちはすごく評価していたんだなって。(南 貴之)
「伊と日と 昔と今とを つなぐイス」
BRAND:SIMON
ITEM:CHAIR“JANO LG BR CHAIR”
AGE:1970s
強度を保つ限界近くまで細めたスチールパイプ使いは、高濱デザインの十八番のひとつ。緩やかにカーブする座面や背もたれも、モダンな印象をグッと後押し。9万3500円(フレッシュサービス ヘッドクオーターズ)
DETAIL
スチールパイプ同様、木製のアームレストもかなりナロー。面積こそ小さいが、その有機的な質感がこのデザインで担う役割は決して小さくない。当然、座り心地も快適だ。
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。
※表示価格は税込み
[ビギン2021年8月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘