僕にとっては完全にアート。用途は求めません
シンプルなものが好きというイメージを僕に持っている人は多いと思います。実際そうなんですが、「ヴェネツィアングラス」はちょっと別の話。イタリアの職人たちによる、超絶技巧に惹かれて蒐集意欲が刺激されます。
ここで挙げたのはバロヴィエ&トーゾとクリスチャン ディオールとのコラボで、今から3年くらい前に海外のオークションで購入しました。以前買った洋書に掲載されていたのがこのアイテムとの出会い。
今ではすごく高価なんですが、どう見ても本物なのに相場よりもかなり安く出ていたから即買いしたんです。でも、届いてみたらフタの下の口が欠けていて、そのときは正直かなり憤りましたね。
ただ、よく見たらちゃんと出品時の説明には書いてあって(苦笑)。それで落ち込んだけど、アイテムの見栄えを損なうようなものじゃないし、僕は転売したいわけでもないからこれでもいいやと思い直して。
このデザインについては、もうごちゃごちゃ言う必要もないですよね。ガラス特有の光沢や透明感に、手吹きならではのチェック柄がとにかく可愛い。ガラスにチェックを描くところにすごくファッションを感じるし、光が当たったときの表情も本当に美しい。
色のガラスを挟みながら柄を入れていると思うんですが、量産的な技術ならもっとキレイに整った柄にできるんだと思います。でも、それだと萌えなそう(笑)。デザインの原画、見たいなぁ。(南 貴之)
「美意識と 技巧の交差 格子縞」
BRAND:BAROVIER&TOSO
ITEM:GLASS BOTTLE
AGE:1960年代後半
生産を請け負ったのはヴェネツィアングラスの名手、エルコレ・バロヴィエ。デザインは伝統的なスコットランドのタータンチェックに着想を得たもの。本作は南氏私物。同様に色の利いたヴェネツィアングラスは、購入可。7万9200円~(グラフペーパー 青山店)
DETAIL
底面の角にはダイヤモンドポイントでクリスチャン ディオールの刻印が。ガラスの中には気泡が見られるが、それすらデザインの魅力として成立しているのが圧巻。
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。
※表示価格は税込み
[ビギン2021年9月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘