好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
’40sが起源の名シリーズ“インフラフィル”の1個体
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい――。そんな想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
思わず納得した、ペリアンのデザイン
フィリップスのロゴが好きです。それで、昔のものでよいモノが出るとついつい買ってしまうんですが、この“インフラフィル”には海外のマーケットで出会いました。何の予備知識もなくて、最初はライトだと思ったんです。空間にこれを置いたらモダンかな、くらいの気持ちで。
それで、出品していたディーラーに「これって何なの?」って聞いたら「ヒートランプだ」と。僕はそれ自体に馴染みがなくてピンとこなかったんですが、驚いたのはその後。「シャルロット・ペリアンのデザインだ」って言うんですよ。ウソつけ! と思って調べたらそれが本当で(笑)、即買いしました。
家具ではいくつかペリアンのものを持っていたけど、家電のイメージはまったくなくて。でも、シンプルで無駄がないのに何故かグッとくるポイントを持っていたり、脚の付け方だったり、よく見ればバランスのよさに納得させられました。
こういう優れた外部デザイナーを起用した面白いものが現代だと減った気がするのは、きっと構造や性能に対する知識とデザインの重要性を両方理解している人が企業の上層部に少なくなってしまったからなんでしょうね。
今、アップルの独壇場になっているのは、その両方を重視していたからなんじゃないかなぁ、なんてことを考えてしまいます。あ、ちなみに用途は患部を温めるものらしいんですが、僕はまだ使ったことがないんです(笑)。寒い日も増えてきたし、京都の家で使ってみようかなぁ。(南 貴之)
「家具・家電 ペリアンの美に 垣根なし」
BRAND:Philips
ITEM:INFRARED HEAT LAMP
AGE:1960s
赤外線で体を温めるヒートランプは日本だとあまり馴染みがないが、海外ではポピュラーなアイテム。レトロなアイボリーのボディは鋳物のアルミニウム製。1万9800円(フレッシュサービス ヘッドクオーターズ)
DETAIL
元は医療用で、やたらと情報量の多いパッケージには腰や脚など、患部を気遣う人物のイラストが入る。デザインは年代ごとにかなり変わり、バリエも豊富。オランダ製。
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、グラフペーパーの主宰など、型にはまらず活動中。日々新たな良品を探し求めている。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年1月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘