好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
木象嵌ラインの支柱とスモークガラスのバランスが見事。使う側も試されそうな唯一無二の飾り棚
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
中が過剰に気にならない絶妙なバランス
僕、家具の中でもキャビネットをいつも探しているんです。なぜかと言うと職業柄、ショーケースを結構使う機会が多いから。洋服屋さんもそうだし、ギャラリーで展示をやるとなっても必要になってくる。
でも、鉄とガラスでできた“ザ・ショーケース!”みたいなものは多いけど、デザイナーがつくるキャビネットで、ガラスを使った良いものにはなかなか出会えなくて。でもふとした折に、たまたまカワイイなと思えるものが!
初見でアフラ & トビア・スカルパみたいだなと思ったんだけど、やっぱりその通りでした。ソファやテーブルを自分でも使っていたり、彼らの手がけた家具は大体把握していたつもりだったけど、こんなキャビネットもあったのか!と。ウッドの質感や模様もそうだけど、何よりスモークのガラスっていうのがヤバい。
隠す収納で名作とされる家具はたくさんあるけど、これは透過性がありつつ中のものが過剰に気にならないっていう絶妙なバランス。棚のガラスも一段一段色が微妙に違っていて、とにかくセンスがいい。
上の段にはワーゲンフェルトのガラス器が合いそうだな、下段は平皿か本か、中段は人工物じゃないものを……なんて、使う側も試されそう。意外な素材を使ってるわけでもないのに、なんでここまでモダンにできるんだろうと、ただ感心しています。
僕がもっと早くに生まれていて、すごくお金持ちだったら彼らに自分の家の家具を全部お願いしてみたかったなぁ。
透けて見ゆ玻璃戸の奥に洗練が
BRAND:B&B ITALIA
ITEM:CABINET
AGE:1970s
それ自体が主役となりうる唯一無二の飾り棚
木材を主役としたアルトナコレクションのキャビネット。木象嵌のラインが刻まれた支柱はプリミティブながら、ブルーとブラウンで切り替えたガラス棚や金属パーツなどとの組み合わせで見事に現代的なたたずまいに。
DETAIL
天板のウッドにも、やはり支柱同様に幾何学的なラインがあしらわれている。欧米の一般的な規格を踏まえてもやや低めのキャビネットなので、こうした装飾も生きてくる。
好事家
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、ディレクション業と型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。11月には新店となるフレッシュサービス 仙台のオープンを控えるなど、各地を飛び回る多忙な日々。
[ビギン2024年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。