好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]

記憶の中の喫茶店あったのは…空間に音が回る「ビクター」の球形スピーカー

まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。

VICTOR SPEAKER

記憶の中の喫茶店にあったスピーカー

喫茶店やスナックが好きです。そもそも昔はそういうお店が多かったけど、今でもオシャレなカフェとかはむずがゆくて僕はちょっとニガテ。で、そんな記憶の中の喫茶店にあったのがこのGB-1Hという、ビクターの球形スピーカーです。僕は天井から吊り下げられていた光景を覚えているんですが、どうやら当時は結構普及していたみたいですね。

型番違いの似たモデルがあって、その当時の広告には“直径34cm、内容量16リットル弱の小さな球体内に配置された8個のスピーカーにより無指向性を実現しています”なんていう記述が。意外と低音に強かったりと、結構しっかり考えてつくられたプロダクトみたいです。

普通の喫茶店だったら音が前に出て来すぎても喋るのにはジャマだし、居心地も悪くなると思うから、空間に音が回るこのスピーカーはちょうど良かったのかも。

単に“丸いスピーカーってオモロいでしょ?”みたいな簡単な話じゃなく、音が良くなるようにとこのデザインになったのだとしたら素晴らしいことだし、日本人らしいものづくりだなとも思います。昔の人が考えた未来みたいなところも好きなのかも。どこか勘違いしているというか、そういう感じもカワイイですよね(笑)。

今度、“インテリアとしてのスピーカー”をテーマに展示をやる予定なんですが、これはノスタルジー枠で出したいなと思ってます。あえての逆張りでモダンな空間に置いたら、おもしろそうじゃないですか?(南 貴之)

「真円の 深淵覗く 音景色」

VICTOR SPEAKER

BRAND:VICTOR
ITEM:SPEAKER
AGE:1970~1980s

一見突飛なようでいて機能とリンクしたデザイン
コーン型のウーファーとツイーターを4つずつ設け、空間に均一に音が回るよう設計された無指向性のスピーカーシステム。部屋のどの位置で聴いてもステレオ感を保てるようにという意図が、フォルムにも現れている。

DETAIL

VICTOR SPEAKER

本体は光沢を抑えたメタリックな質感で、そこにパンチングが施されている。さながら巨大なマイクロフォンのような頂上部には、さりげなくビクターのアイコンが。

Profile
南 貴之

好事家

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中を巡り、良品を探している。

 
[ビギン2024年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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