好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
用途不明だけど気になる!? 南貴之さんが謎椅子の奇妙な魅力にハマる理由
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
インダストリアルなようで、コンテンポラリー
おそらくスチール製で、座面と背もたれはメッシュ。誰のデザインかもわからない、アノニマスなラウンジチェアです。このチェア、不思議なことになぜかスタッキングできるんです。でも、ラウンジチェアをそんな頻繁に出し入れする機会って、あるのかなぁ(笑)?
お世話になってるディーラーさんのところでたまたまこの現物に出会ったんだけど、座り心地は良くないし、外に置くならいいかもなと思ったけど、夏場はすごい温度になるだろうし多分、雨が降ったら錆びるはず。ディーラーさんにもとにかくそんな感じのマイナスプレゼンばかりをされた結果、なぜか気になって5脚まとめて買いました(笑)。
まぁ、実用性は本当に低いし、どこかの工場の人が遊びでつくったりしたのかもしれない。でも、このイスの個性が用途じゃないとしたら、作用だと思うんです。何に作用するかっていうと、やっぱり「これは何なんだ……!?」っていう気持ちなのかなと。
よくよく見ると溶接はきれいだし、フレームの処理なんかまでちゃんと計算されているようでもある。インダストリアルなようで、コンテンポラリーに見える。できるなら、つくった人に意図を聞いてみたいです。本当にもしかしたら、名のある人が携わっていたりするのかも?なんて思ったり。
とまぁ、こんな風に想像で会話が生まれるところも古物のいいところ。買った価格? それはもちろん格安です。そうじゃなかったら、買わないよ(笑)!
五分の品 これは駄作か傑作か
BRAND:Unknown
ITEM:Lounge Chair
AGE:Unknown
なぜか漂う存在感と図りかねる意図
ナローなフレームにメッシュのみで、装飾はなくとも妙なインパクトと個性を感じさせるデザイン。ラウンジチェアらしく低めの設計で、やはり低めの背もたれに対して妙に奥行きが深い座面など、バランスも奇妙な品。
DETAIL
その大きさの割に空間の圧迫感を感じにくいのは、透け感のあるメッシュ構造ゆえ。写真のように5脚スタッキングしたとしても、美しくすっきりとした印象を醸し出している。

好事家
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、ディレクション業と型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々良品を探している。寄(よせ)では2025年5月23~24日の2日間で高知の名店、かんざしを招いてイベントを実施。ぜひご賞味あれ。
※表示価格は税込み
[ビギン2025年7月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。