“チャンピオンのキーマンに聞く”メイド・イン・USAを貫き続ける理由とは?
原材料費の高騰や、落ち着きを見せない為替、そしてそれに起因する日米の賃金格差=人件費の高騰etcetc……。どう考えても逆風が吹き荒んでいるのに、なぜチャンピオンは「9オンス テリーフリース」シリーズをはじめ、米国製プロダクトを作り続けているのか。物作りのキーマンにその意義についてお聞きします。
“物作りのキーマン”に伺いました
ヘインズブランズ ジャパン アクティブウェア商品部 部長
立浪和晴さん
日本国内で企画されるチャンピオン製品のほぼすべてを司る重要人物。同ブランドのアーカイブに精通し、マニア垂涎の復刻製品を多数手掛けているのは言うまでもなく、未来を担う=未来のヴィンテージに成り得る現行プロダクトの企画にも尽力する舵取り役だ。
「“生粋のアメリカンブランド”という軸を守るためには避けて通れない」
まざまな要因が重なり、今や「メイド・イン・USAの服」は、以前にも増して絶滅危惧種となりました。チャンピオンの「9オンス テリーフリース」が登場したのは2018年のこと。すでに米国で物作りすること自体のハードルが爆上がりしていた時期ですが、立浪さんはあくまでメイド・イン・USAを断行。
「そもそも“春夏シーズンでもチャンピオンの米国製スウェットを届けたい!”と思ったことが、このシリーズの出発点だったので、他に選択肢はありませんでした。」
「というのも現状展開している米国製スウェットは、赤単色タグを備えたリバースウィーブのみ。これはアスレチックウェアとしての面影を色濃く残す、12.5オンスのヘビーウェイト生地を採用しているため、どうしても肌寒い時期での着用がメインになってしまいます。」
「よりシーズンレスに着回せる製品として、まず“クラシックフリース”に白羽の矢を立て、それをモダナイズしたのが“9オンステリーフリース”だったんです」。
9オンステリーフリース
でもこれだけ米国製を実現するのが難しい要素が噴出するなか、そこまでこだわり抜く理由は一体何でしょう?
「日本においてチャンピオンはヴィンテージ市場に育てられてきました。そこでは“メイド・イン・USA”というのが当たり前の要素。でもそのおかげで、今では誰もがチャンピオンをリアルなアメリカのスポーツブランド、スウェットシャツメーカーとして認知してくださっています。」
「正直にいうと、品質に関してはいつまでたっても安定しません。これは作りが粗いというわけではなく、もはや文化の違い。向こうでは少しくらい糸が出てても問題ないけど日本ではNG。どれだけオーダーしてもこのギャップは埋まらないので、コストをかけてでも検品を実施し、品質に向き合わなくてはなりません。」
「ただそれでも“アメリカのブランド”という個性を守るためには、メイド・イン・USAは不可欠な要素なんです」
春夏に利く米国製チャンピオンの代名詞
「T1011(ティーテンイレブン)」
左のロンT/1万450円。右のカレッジロゴT/8690円(ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター)
伝統のヘビーオンスTシャツ「T1011」も、嬉しい米国製。今作しかりスウェットしかり、メイド・イン・USAを貫くチャンピオン製品は、いつか“ヴィンテージ”として一目置かれる可能性大。
※表示価格は税込み
[ビギン2024年4月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。