機能性・耐久性・修理性を体験談からひもとく
パタゴニアスタッフのLIFETIME ITEM
パタゴニアは5月24日から「Worn Wearプログラム」の一環として、機能に問題がない同社の中古製品の買い取りをスタート。必要に応じて補修し、新たなユーザーへ再販するという、このパタゴニアマインドが濃縮還元された試みは、大いに反響を呼んでいます。なんたって“新品を買うか吟味する前に既存のギアを再利用しようぜ!”ってことですからね。無駄に資源を使ってなるものか!という、並々ならぬ決意が伺えます。
ただこの試みの遥か以前から提唱し続けているのが、“ひとつの製品を長〜く使いましょ!”ってこと。消費のサイクルをスローにするには結局それが一番。そんな信念のもと、パタゴニアは丈夫で機能的=息の長い製品を開発し続けてきました。
ということは、パタゴニアには、それはそれはひとつの製品を長く、深〜く愛し続けてるスタッフが多いのでは? ってことで、ここでは我こそは!と名乗り出てくれた一途自慢のスタッフたちに、どの製品をどれだけ愛しているかインタビュー。
仕事に旅にアクティビティに、さまざまなシーンをともに過ごし、愛着が増しに増した相棒との思い出を語り尽くしていただくのと同時に、純粋にギアとしてどこがどう秀でているのか、実体験をもとにインプレッションしていただきます。
【中村廉さんのLIFETIME ITEM】
50年後も穿き続けていたい
スタンドアップ・ショーツ
「正直言うと入社するまでショーツといえばバギーズで、スタンドアップの存在は知らなかったんです(苦笑)」という中村さん。ただ先輩スタッフによる、あるセンスフルなプレゼンによって、すぐさま購入することに決めたんだとか。
「ヴィンテージのスタンドアップ・ショーツを愛用していた先輩が、こうやって立てて(・・・)見せてくれたんです。だからこんな名前なんだよって。歴史を知るとパタゴニアの起源的な製品でもあるし、すぐに自分も買おう!と。スタンドアップ・ショーツは現行製品でも販売されていますが、自分は洋服を探す時はまず古着からで、なければ新品を探すというMyルールがあります。たまたま地方の古着店を訪れた際、初期の70年代製スタンドアップ・ショーツを見つけ、運命を感じて購入しました」。
「凄いのは50年くらい前の製品なのに、肉厚なコットン生地も縫製も頑強で、全然よれていない。リサイクル素材やオーガニック素材を使うのも重要だけど、何より長く現役でい続けることが、一番環境に優しいんだよと教えてくれている気がします。古いモノだからと過保護になって、穿かずに保管しておくことは好きじゃないので、気にせずガンガン穿き込んでいます。スタンドアップ・ショーツは、穿き込まれてボロボロになるぐらいが一番格好良いし、輝くと思っています」。
「今後は普段使いだけではなく、旅に連れていってあげる予定。昔パタゴニアのブログで見たんですが、ある旅人が新しい旅先に行く度に、ショーツのスレーキにその地名だったり、出会った人の名前を書き足していたんです。自分もいつかそれをマネしたいなって。今一番興味があるのはインド、タイ、オーストラリアあたり。行ったことのない土地に赴き、その土地の空気をたくさん染み込ませ、スレーキには思い出を書き込む。50年後には100年選手になるこのスタンドアップ・ショーツを眺めながら、旅の思い出を振り返られたら良いなと思っています」。
メンズ・スタンドアップ・ショーツ
メンズ・ヘリテージ・スタンドアップ・ショーツ 7インチ/土壌の修復や動物福祉の尊重、農家の生活の向上などを目指す、最高のオーガニック基準を実践する農家から供給された、“リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・コットン”を採用した、最新のスタンドアップ・ショーツ。1万3750円。
【本橋大地さんのLIFETIME ITEM】
サーファーの自分には不可欠な
パタロハ・シャツ
製品を吟味する際、例えばTシャツならそこに書かれているメッセージやストーリーを理解せずに購入することはありません。また、自分が実際にやっていないアウトドアスポーツをモチーフとしたウェアを着用することもほとんどない。そういう意味で、サーファーの自分にとってパタロハ・シャツはリアルな存在だったんです」。
そうして入社して1年後の2017年に購入したのが、この白いヘンプのパタロハ・シャツ。「当時2014年から2017年にかけて、ハワイの伝統的なカヌー、“ホクレア号”が世界一周して戻ってくるニュースが話題になっていたんです。この柄はそれを記念してデザインされたもの。シンプルなモノトーンベースだから、40代とか50代になっても永く着続けられそうだなと」。
「ちなみに今着ているテンセル生地の黒いパタロハ・シャツは、2022年に購入したもの。島の海流をデザインした“アイランドカレンツ”という柄なんですが、これも黒ベースで着回しやすいところが気に入っています」。
とくに活躍するのが夏に旅行する時だそうで、「旅する時って、一着だけ襟付きシャツを持っていきたくなるんですよね。日中はTシャツなんだけど、夜に街中に遊びに行く時はちょっとキレイに装っていたいなって(笑)。どちらのシャツも着心地が本当によくて、サーフィンしに行った時なんかも海から上がった後にサラッと羽織れる。ヘンプは凹凸感があってドライタッチだし、テンセルの方は肌に触れた瞬間からヒンヤリ感じる。これまで四国だったりオーストラリアだったり、色んなトリップに付き合ってもらいました」。
ただかなりの回数着用してきても、ダメージを感じることはほぼないそうで、「これからずっと着ていけば色褪せたりして味が出ると思うんですが、現時点では褪色やほつれなんかはほとんどなし。薄手なシャツですが、思いのほかタフで驚いています。色々な思い出が詰まっているシャツなので、ずっと着続けて、いつかは息子に譲りたいです。まだ5ヶ月なんで気が早いかもしれませんけど(笑)」。
メンズ・パタロハ・シャツ
メンズ・マリヒニ・パタロハ・シャツ/こちらは今季展開された柄で、カロ=タロイモの葉をモチーフにしたもの。オーガニックコットンで織り上げた、2.2オンスの平織り生地は、暑〜い夏場でもフル活躍。十八番の鮮やかなカラーコンビやココナツボタンも趣深し。1万4850円。
【佐藤朋哉さんのLIFETIME ITEM】
染め直してでも手放したくなかった
トラッカー・ハット
7年前にもらったというこのキャップには、親友との心温まるエピソードが。「当時オーストラリアへの留学を控えていたんですが、その直前の誕生日に、中学時代に野球部でバッテリーを組んでいた友人が、“お前パタゴニア好きだったと思うから、これを持っていけ!”とプレゼントしてくれたんです。どんな物が欲しいか察してくれるあたりは、さすが女房役だなと」。
留学期間が終わり、帰国後もず〜っとこのキャップを愛用し続けているという佐藤さん。「普段はもちろんですが、バックカントリースキーの際も愛用中。身に着けるもので各々がそれぞれのスタイルを表現するんですが、自分の場合はこのキャップを被って登っています」。
ただあまりに酷使し続けた結果、リペアを余儀なくされてしまったそうで、「日焼けと褪色が進んで、かなりダメージが目立ってしまったので、導き出したリペア方法が、環境に優しい染料で新たに染め直すという方法。実はこれ、もともとはグレーだったものを、ネイビーに染め直しているんです」。
ステッチ部分にグレーが残っているのはその名残。図らずも完成した2トーンカラーがなんとも渋イイ!
「その後ストラップもリペアに出して交換してもらったんですけど、元々はグリーンだったのに、担当してくれた方がネイビーに合わせて、ネイビーのストラップに変更してくれたんです。親友がくれたプレゼントだからと使い続けた結果、世界でひとつだけのキャップに育ってくれた、まさに一生の相棒。これからも補修しながら長く付き合っていきたいです」。
メンズ・トラッカー・ハット
リラックス・トラッカー・ハット/オーガニックコットンボディとリサイクル・ポリエステル・メッシュを組み合わせた、クラシックなトラッカー・キャップ。つばはリサイクルされた廃漁網を100%使用した完全に追跡可能なブレオのネットプラス素材を使用。6050円。
INFORMATION
「Worn Wearポップアップストア パタゴニア 東京・渋谷」
開催期間:2024年5月24日(金)~ 2024年8月19日(月)
開催場所:パタゴニア東京・渋谷ストア2階
住所:渋谷区神宮前6-16-8
営業時間:11:00~19:00
定休日:第三水曜日
買取お申し込みwebサイト
https://www.patagonia.jp/wornwear/trade-it-in/
写真/松島星太 文/黒澤正人