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今年50周年を迎えたパタゴニアには、今季も記念アイテムが目白押し!……な〜んて感じで、いつもなら大々的にそのレアものたちを紹介し、“買い”へと促すのがビギン魂。
ですが今回はむしろその逆。“必要”ではなく“ほしい”だけなら、できれば買わないでいただきたいんです。そう思うに至った理由は、マーク・リトルさん(超重要人物につき下プロフィールをチェック!)からお聞きした、この50周年記念コレクションの制作プロセスに集約されています。

「そもそも資源を使ってまで作る必要があるのか。それを考えるのがファーストステップでした」。普通に考えれば周年記念アイテムなんて、どのブランドも盛大に“売り”に走るはず。ですが同社は、「50年の間で何を学んだのか。何を続けて、何を止めるのか。一度立ち止まって考えてみることから始めました」と、このお祭りシーズンにおいても、“資源を使ってものを作る”ことに、真摯に向き合う姿勢を崩しません。そしてそんなどこまでも謙虚な同社だからこそ、単なる記念品ではなく、過去と向き合い、未来への道標として制作し得たのが、この“ナチュラル・アイコン”というコレクションなんです。

バギーズ・ショーツやシンチラ・フリースといった、服好き諸氏が デイリーにアウトドアに溺愛している製品が集う”メンズ・ライフ・ アウトドアカテゴリー”の責任者。50周年記念コレクションもすべ て同カテゴリーからリリースされ、スケッチ段階から実際に製品化 するまで、全工程に携わって陣頭指揮を執った”ナチュラル・アイ コン”をこの世でもっとも熟知する人物のひとりだ。同社に入社す る前はさまざまなブランドで要職を担ってきたファッションのスペ シャリストにして、幼少時から木に囲まれ、湖を泳いで育った生粋 のアウトドアマンでもある。スキー歴はなんと……驚異の45年超!

「パタゴニア史に残る象徴的アイテムを、環境負荷が少なく、長持ちする天然資源で作る。このコレクションには今後も“地球を救うためにビジネスを営む”という決意表明と、“この製品を通じて買う量を減らしませんか?”というメッセージが込められているのです」
初期タグが誇らしげに配される記念碑的コレクションは、愛好家なら目が眩むほどほしいはず……ですが、買うかどうかはぜひ最後まで読み終えてからジャッジしてほしんです。それでは、ナチュラル・アイコンを0から100までを知り尽くすマークさんの証言をもとに、各アイテムに込められたパタゴニア50年の情熱に迫ります。

【Waxed Cotton Jacket】
パタゴニア史上初!!の
コッ、コットンレインシェル!?

自社のアーカイブに残るアイコニックな名品たちを、ナチュラルな素材でリボーンさせる。そうすることで今後より一層環境負荷の少ない天然資源へと、いわば原点へと回帰していくことのメッセージ替わりとする。それこそがこの50周年記念コレクションが掲げる、“ナチュラル・アイコン”の真意。
そしてこの“ワックスド・コットン・ジャケット”は、まさにそのキーワードをもっとも色濃く反映しているアイテムと言っても過言じゃありません。

なんと言っても今作の元ネタになっているのは、かのスーパー・プルマ・ジャケット! もうこの名を聞くだけで古くからの愛好家は郷愁を誘われるはず。パタゴニアのレインシェル史を語るうえでは絶対に避けて通れない存在なんですが、驚いたことに今作は、その歴史的名品をベースにしつつも化繊生地を使用していないんです。そう。何を隠そう今作はパタゴニア史上初の“コットン製”レインシェル! マークさんは言います。
「既存の製品群にない物を作らなければ、資源を使ってまで作る意義がないのでは? そう自問したとき、すでに化繊のレインシェルは存在しているから、“コットン・イン・コンバージョン”を使うのがベストだと思ったのです」

この耳慣れない素材は、オーガニック認証済み農家へと移行している最中の農家が手がけたコットンのこと。オーガニックコットンの農家を増やすため、昨今同社が積極的に取り入れている素材なんですが、ここでフと疑問が。本来水への耐性を高めることこそがレインシェルの第一義。だとするとコットン・イン・コンバージョンを使って、一体どうやって雨具としての機能を担保しているのか。
「その答えもまた、ある意味原点へと立ち返ることで見つかりました。表地のコットン・イン・コンバージョンにワックス加工を施して、水への耐性を高めることにしたのです。この手法はもう120年以上前から確立されている、人類にとって極めて伝統的な防水加工法。さらに使っているワックスも、ケミカルなパラフィンは使いたくなかったのでスコットランドの専門企業と共同開発しました」

同じコットン・イン・コンバージョンでも、表地と裏地で厚みや織りかたの異なる素材を使用するあたりも、パタゴニアクオリティ。着込むほどに味が出て、ジーンズ感覚で育てる楽しみも堪能できるなんて嬉しすぎ。
1993年から2000年代初頭まで製造された、知る人ぞ知る名品。年代によって細かな違いが あるが、今作は98年製がベース。斜めに配された胸部の大型ポケットと、風雨の侵入を防 ぐ腰のドローコードが象徴的ディテールだ。

なんとその企業こそが、かのバブアーのワックス作りも担う名門ハレー・スティーブンソン社! 
「最初に蜜蝋で試してみたところ、どうしても生地がパリパリと硬くなるし、ベタつきも強かったし、匂いもキツかった。そこで何度も彼らに相談し、辿り着いたのがこの“エバーワックス・オリーブ”だったのです。これは食品産業の廃棄物を利用した植物由来のワックス。実際に使ってみたところ、生地が驚くほどしなやかになったし、ニオイもかなり和らいだのです。ワックスド・コットンを使ったジャケットは、寒くなると硬くなって防水性が増すし、反対に暖かくなると柔らかくて通気性が増す。従来の化繊シェルよりもマメにワックスを塗り直してあげたり、なにかとお手入れが必要ですが、その分着れば着るほど愛着もどんどん増していく。生涯愛せるからこそ、結果的に消費も減らせる、まさに“ナチュラル・アイコン”を象徴するアイテムだと思います。入社して11年以上になりますが、個人的にも最高にお気に入りの製品ですね」

袖先やウエスト背面にスナップタブを、裾にドローコードを備えているのでフィット感の調整も容易。全3色展開。各5万5000円。別売りの“リワックス・ティン”(62gで1430円)を使えば容易にメンテナンスできる。ちなみに本コレクションにはブドウの種やオリーブ油、食品加工工場から出る廃棄物から抽出した、耐候性に優れるワックスコーティングを施した“ワックスド・キャンバス・トート・パック 27L”(1万9800円)も。

【Natural Blend Retro Cardigan】
イタリアの極上リサイクルウールを
ブレンドした世界フリース“伊”産

皆さんお待たせいたしました。この度かのフリース界の大看板も、見事にナチュラル・アイコン化! その名も“ナチュラル・ブレンド・レトロ・カーディガン”。パッと見は1988年に登場した始祖たる“レトロ・パイル・カーディガン”と、現行の“クラシック・レトロX・ジャケット”の双方の意匠が相まみえた、れっきとしたレトロファミリー。ですが今作のキモは、そんな安定感MAXのルックスではなく、この艶やか〜な毛並みにあります。そう。実はこれ、ポリエステル77%(リサイクル率60%)とリサイクル・ウール23%をブレンドした、本コレクション特製のシェルパ・フリース生地なんです。レトロ系のアイテムにウールがブレンドされるのは当然史上初!

「生地を手がけたのは、繊維産業の聖地として世界的に著名なイタリア・トスカーナ州プラートで、1878年から150年近くリサイクル・ウール作りを担ってきた老舗・カラマイ社です。パタゴニアとも20年以上関係を密にするパートナーなのですが、この会社は不要になった衣類や毛布などの端切れを世界中から回収し、細かく切り刻んで再生させるエキスパート。彼らには今作のために16.5オンスという、現行のレトロXよりも厚手の生地を仕立ててもらいました。リサイクル合成素材とリサイクル天然素材から作られた、暖かく、幅広いシーンでマルチに活躍してくれる自信作です」

リサイクル・ウールをブレンドしつつ、16.5オンスという、かなり厚手の生地感に仕上げることで、より迫力のある毛並みに。とはいえどことなく品を感じるのは羊パワーの恩恵かも。冬場も乗り切る保温性も言わずもがな。
1988年から1990年のわずか3年間のみ作られたレトロファミリーの元祖、“レトロ・パイル・カーディガン”。その後継として、今日フリース界を牽引しているのがこの名品だ。今作にはその双方の意匠を見事にミックス。

裏面のメンブレンは、より柔らかく多少の防風性もあり。フワモコで愛らしいレトロ系なのに、そこはかとなく品も漂わせる今作。環境への貢献度&史上最も大人な見映えで、世界フリース伊産に認定しても異論はないでしょう!

1980年代に登場した初期型と同じ横型のジッパー付きチェストポケットを備えるほか、お馴染みのジッパー付きハンドウォーマーも完備。性別も体型も関係なく着用できる“ジェンダー・インクルーシブ・フィット”に設計しているので、従来のレトロXと比較するとシル エットは幾分ゆったりめ。裏面のメンブレンは、より柔らかく多少の防風性を持つ。肩&腕の可動域を広げるY字型の袖などは健在。全4 色展開。各4 万9500円。

これまでの50年を振り返り、これからの50年をどう進むのか。過去と未来を繋ぐ本コレクションには、背景好きの機嫌をアゲアゲにする、ご起源な製品もチラホラ。ここでは同社のウェアの原点に迫ります。

「これなしではパタゴニアのウェアは語れません」。マークさんをしてそう言わしめるのがラグビーシャツ。意外に思うかもしれませんが、その理由を正しく理解するためには同社の歴史をしっかりオサライしておかなければなりません。

中肉の7ゲージ・バーズアイジャカード生地は、インナーとしてもアウターとしても優秀で使い勝手は文句なし。前立てが開けても閉めてもサマになる3つボタン仕様ってのも◎。ちなみにイヴォン氏が1970年に初めて持ち帰ってきたラグビーシャツは、ボディが青地で胸に赤・黄・赤のラインが入っていたそう。それに近しい色をラインナップするあたりがまたニクイ! 全2色展開。各2万8600円。

時は1970年の冬。創業者イヴォン・シュイナード氏は、クライミング目的でスコットランドへ出発。現地で某英国メーカーのラグビーシャツを見つけ、“これはロッククライミングに最適かも!”と、試しに一着購入してみたそうな。するとこれが想像以上に出来がいい。ラグビーの激しい動きにも耐える質実剛健な作りといい、スリング(クライミングの必需品)で首筋が傷つくことを防いでくれそうな衿といい、まさに理想的。実際に帰国してから山に着ていったところ、あちこちで“どこで買えるの!?”とクライミング仲間から聞かれまくったとか。

そしてパタゴニアが立ち上がる前年の72年、まだシュイナード・イクイップメント社だった当時、英国から輸入したラグビーシャツを筆頭に衣料品を拡充。それが同社のメイン事業となり、73年に正式に衣料部門を立ち上げ、パタゴニアの名を冠し、現在に至るというわけ。「つまりラグビーシャツはある意味パタゴニアの原点とも言えるアイテムのひとつ。“ナチュラル・アイコン”には不可欠な存在だったのです。ただ現行のラグビーシャツには、すでにコットン・イン・コンバージョンが、つまりナチュラルな素材が使われていました。それをトレースするのでは新たに作る意味がない。そこでリサイクル・ウール70%とリサイクル・ナイロン26%、その他の繊維4%を混紡したニット素材を採用し、ラグビーシャツスタイルのセーターを作ることにしたのです」。
かくして誕生したラグビーシャツならぬ、同社初のラグビー・“セーター”。背景といい保温性といい、身も心もホクホクになりたい愛好家には至高のニットですよ。

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