精魂込めた一期一会なアクセに惹かれるネイティブアーティストの現在地
ウワサの服 希少予報[職人がヤバい!? 絶滅危惧服]
心揺るがすネイティブジュエリーのほとんどは、作家が手掛けた希少な一期一会の一点モノ。そんなジュエリーが少しずつ絶滅危惧という噂を耳に……!? 実際の現状について、業界に精通するロングブランチの森田さんに話を聞いてみました。
教えてくれた人
ロングブランチ 代表
森田洋司さん
1997年からネイティブジュエリー専門店「ロングブランチ」を営む。ナバホ、ホピ、ズニ族ら多くの有名アーティストとつながりを持つ。
「コロナ以降、とくにホピ族の作家は著しく減少傾向に……」
18世紀後半頃からスペイン人らとの交易品としてはじまり、今では希少なアクセサリーとして世界的な評価を得ている、ネイティブアメリカンが作るジュエリー。ただ近年は流通数が減っているとか……。
「そうですね、端的にいうとコロナ禍が大きく影響しました。コロナの影響はネイティブジュエリーの業界でも例外ではなく、買い付けの場が減り、ジュエリーの流通が減りました。作家にも生活があり、ジュエリー作りでは経済的に厳しいという人が増え、ジュエラーを辞める。もしくはジュエラーになろうという若者も減った。ナバホ、ズニ族はそれほどでもなかったようですが、顕著だったのがホピ族です」
ネイティブジュエリーといえばナバホ、ホピ、ズニの3つの民族によるものが有名ですが、ではなぜホピだったのでしょうか?
「ネイティブアメリカンがジュエリーを持ち込んで、販売してもらう、トレーディングポストというお店がニューメキシコ州のギャロップという街に多くあります。ここや米国ではナバホのジュエリーが人気なんです。またナバホ、ズニはギャロップに近いところに居住区があるんですが、ホピは遠くて車で3,4時間ほどかかる。」
「コロナ禍以降の物価やガソリンの高騰が追い打ちをかけ、ジュエリーが売れにくいなかで、材料の調達やジュエリーを売るための、ギャロップへの往来が減ったんですね。こうして作家を辞めて他の職業に就く人が増えた。僕も最近、現地に行ったばかりですが、ホピはギャラリーの閉鎖なども目立って、流通するジュエリーも確実に減ってきていると実感しています」
すると伝統的なオーバーレイの技法や、古い意匠のマンインザメイズといった、ホピならではのジュエリーは、より希少になっていくのでしょうか!?
「今はまだ大丈夫だと思いますが、ゆくゆくは希少になっていくかもしれません。というのもホピは作家の分母の数自体が少なく、高齢化も進んでいますから。」
「例えばマンインザメイズの巨匠、ジェイソン・タカラは病気を患って、以前のようには数を作れなくなってきましたし、ウチではお馴染みだったゲイリー&エルシー・ヨヨキーの作品の入荷が以前より遅れるようになったり。ジュエラーになる若者も減っていて、技術の継承もままならない状況です。ネイティブジュエリー好きなら、ぜひ知っておいた方がいいかと」
な、なんとホピのジュエリーは、思わぬうちに絶滅危惧種に……。ナバホの力強い作風とはまた違った、神秘的な魅力をもつホピのジュエリー。惹かれる作品に出会ったら、そんな状況を意識した方がいいのかもしれません。
迷路のような人生を正しい方向に導く、という意味を持つマンインザメイズ。クリフトン・モワ作。28万3800円(ロングブランチ)
mation
LONGBRANCH
都内屈指のネイティブジュエリーの品揃えを誇り、ホピ族のジュエリーも豊富にラインナップ。レジェンドのお宝級の作品も一見の価値がある。
- 住所 :
- 東京都渋谷区広尾5-19-12
- 電話 :
- 03-5449-9522
- 営業時間 :
- 11:00~19:00
- 定休日 :
- 日曜、祝日
※表示価格は税込み
[ビギン2023年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。