ミュージアム名品を通してアートを楽しむ[博ブツ観]
「ぬい撮り」にいかが? 名古屋港水族館の隠れ人気「潜水服のぬいぐるみボールチェーン」
ミュージアムグッズは、単なるお土産品にあらず。旅好きのグッズ愛好家・大澤夏美さんによる、掘れば掘るほど面白いグッズとアートのお土産バナシをどうぞ。

ミュージアムグッズ愛好家
大澤夏美さん
博物館経営論を軸に、旅をしながら全国の博物館を訪ねてグッズも研究。著書に『ミュージアムと生きていく』(文学通信)など。自費出版誌の最新刊が公式サイトで発売中!
水族館の「生き物じゃない」ぬいぐるみが良い!
YouTubeなどでカバンの中身を紹介する動画、よくありますよね。私は雑誌などの企画でも昔からそれが大好き。少なからず影響を受けて、いつ何時「あなたの持ち物を紹介してください!」と言われてもいいように、いつも勝手に気を使っています。
実用品の他にひっそりカバンに潜ませて持ち歩いているのはぬいぐるみ。旅にも連れていきます。最近では「ぬい撮り」といって、好きなキャラクターなどのぬいぐるみを出先で風景などと一緒に撮影するのも流行っています。私も資料や展示にまつわる小さめのぬいぐるみやマスコットを、ミュージアムショップで買って持ち歩くこともしばしば。
最近狙っているのは、名古屋港水族館に展示されている潜水服をモチーフにしたぬいぐるみボールチェーン。開館当初から展示されているこの潜水服は、17〜18世紀の地中海で使用されていたものの複製です。その強烈な見た目(展示の様子は下で!)から怖がるお子さんもいらっしゃるそうです。
ただ、大人になって改めて解説を見ると……ダイバーが呼吸できるように、また、水圧に耐えられるように、深海で作業できるようにと工夫が詰め込まれた、深海調査の歴史を担った貴重な道具であることがわかります。
SNSでこの潜水服が話題になり、寄付の返礼品としての缶バッジやブックマーク、Tシャツ、トートバッグがこれまでに製作されてきました。水族館のグッズは生き物がモチーフになることが多く、家族連れが多く訪れるため子ども向けのデザインが中心というイメージですよね。
しかしこちらの潜水服は甘すぎないデザインなので、まさに大人が持ち歩けるぬいぐるみ。生き物以外にも水族館には貴重な資料があるんだと紹介できる、博物館学的にも意義のあるグッズだと思います。
地元民に見せれば「懐かしい!」「子どものとき怖かったなー」と話題になり、他の地域の人の前で出せば「何これ⁉」と驚かれそう。旅先でゲットするぬいぐるみや、旅に連れていくぬいぐるみは、これくらいインパクトのあるものの方が記憶に残ります。
これまでは思い出の中にあった潜水服が時を経てぬいぐるみとなって、これからの思い出に登場する。旅のお供に連れ歩くのが楽しみです。
大人も持ちたい水族館の隠れ人気
潜水服のぬいぐるみボールチェーン
本館の南館2階「深海ギャラリー」エリア内の深海スロープで開館当初から“密かに”人気の展示が待望のグッズ化。当時の潜水作業時に使われていた作業用の手斧や、マスクの下の表情も見事に再現している。各1980円。
左:ディエゴ・ウファノの潜水服、右:クリンゲーツの潜水服
左:レオナルド・ダ・ヴィンチの絵からヒントを得て呼吸チューブの原理を取り入れたもの。当時難破船からブロンズ製の大砲を取り出すのに使用された。右:1797年に深さ20フィートのオーデル川の工事に使用された。チューブを通して空気を吸い込み、口の部分に付いているバルブを通して別のチューブから吐き出すようになっている。
どちらも館内で薄暗いスロープの曲がり角に突如現れ、リアルな表情も相まって怖気づく入館者が多いとか。

鯨類の骨格標本など博物館的展示も充実
「名古屋港水族館」
約500種5万点もの生物を飼育、展示する大型の水族館。日本最大級の水量と、延床面積を誇る。
- 住所 :
- 愛知県名古屋市港区港町1-3
- 電話 :
- 052-654-7080
※表示価格は税込み
[ビギン2024年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。