ミュージアム名品を通してアートを楽しむ[博ブツ観]

大澤夏美さんが明石市立天文科学館で発見した“センチメンタルになる”トランプ

日本のプラネタリウムはじまりトランプ

ミュージアムグッズは、単なるお土産品にあらず。旅好きのグッズ愛好家・大澤夏美さんによる、掘れば掘るほど面白いグッズとアートのお土産バナシをどうぞ。

Profile
ミュージアムグッズ愛好家 大澤夏美さん

ミュージアムグッズ愛好家

大澤夏美さん

博物館経営論を軸に、旅をしながら全国の博物館を訪ねてグッズも研究。著書に『ときめきのミュージアムグッズ』(玄光社)など。eスポーツ専門学校の講師という顔も持つ。

ひとりきりのプラネタリウムセンチメンタルなトランプ

もう何年も前の話。娘が修学旅行の準備をしていた際、「同じ部屋の子たちと遊ぶんだ!」と言ってトランプを持参していました。遊び方がたくさんあって嵩張らない。トランプは楽しい旅のお供に最適です。

とはいえ10代の頃の私は人見知りで、友達付き合いや集団行動があまり得意ではない性格だったんです。

今では考えられないですが、修学旅行や合宿はさっさと寝る派でした。大富豪のローカルルールで揉め、ぶたのしっぽで白熱するクラスメイトの姿を横目で見つつ、どうにもその輪に入る気になれない。そんな昔の自分を思い出してしまい、トランプを見るとセンチメンタルな気分になるんです。

ミュージアムショップでもトランプが販売されているのをよく見かけます。表面に名画が掲載されていておしゃれなアイテムとして人気。でも今回紹介するトランプは一味違います。

明石市立天文科学館が製作した「日本のプラネタリウムはじまりトランプ」の表面には、全部で13機のプラネタリウム投影機が印刷されています。世界で初めてのプラネタリウムがドイツで誕生してから2023年で100周年。日本プラネタリウム協議会(JPA)でも記念事業が展開され、その公認事業として誕生したのがこのトランプです。

プラネタリウムを訪れたことがある方でも、投影機の歴史を知る機会は少ないかもしれません。日本に初めての投影機が設置されたのは1937年。それ以降全国に広がり、現在では国内に約400ものプラネタリウム施設があるそう。トランプには、施設に欠かせない投影機についての写真と解説が掲載されているので、日本のプラネタリウムの歴史を遊びながら学べます。

先生の見回りが来て楽しい夜が更ける。ひそひそ恋バナをする友達の横で早々に布団に潜り込む、当時の私の心のスクリーンにはどんな星座が投影されていたんだろう。知らない土地、ひとりきりのプラネタリウム。

あの頃の私にこのトランプがあったなら、心を照らす投影機の正体に想いを馳せていたことでしょう。今の私のプラネタリウムに星座を映す投影機の正体は、まず間違いなくミュージアムへの愛。一緒に観賞する家族も仲間もいる。旅先でももうひとりじゃないんだよと、今なら自信をもって言える。

下から星空もいいけど上からプラネタリウムも見惚れる

日本のプラネタリウムはじまりトランプ

日本のプラネタリウムはじまりトランプ

日本国内のプラネタリウム変遷に欠かせない投影機13台の解説が書かれたトランプ。普段なかなか触れることのない投影機について、遊びながら学べちゃう! 裏のイラストは代表的な投影機「ツァイスI型」と「UPP23/3」を含めた描き下ろし。1350円。

ミュージアムグッズから学ぶ博識キャプション
 
プラネタリウム[Planetarium]
“「プラネッツ(惑星)」の動きを表現する機械”を指す。「地上に星空を展示したい」というドイツの博物館長オスカー・フォン・ミラーの依頼を、カールツァイス社が形にして実現させた。
information
明石市立天文科学館

日本標準時子午線上に建つ時と宇宙の博物館
「明石市立天文科学館」

1960年に開館した博物館。稼働日数国内最長、長寿日本一のプラネタリウムとしても知られている。

住所 :
兵庫県明石市人丸町2-6
電話 :
078-919-5000

 
※表示価格は税込み


[ビギン2024年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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