【蕎麦スス流】Vol.71
ファンの熱い希望から誕生!! 一由そばの「JKBそば」とは?【全国制覇!? 日本の立ち食いそば】
Vol.71
日暮里一由そば(いちよしそば)
JKB(ジャンボかき揚げB)そば
410円
JR日暮里駅東口を尾久橋通りに出て左。少し奥まったところにあるが、立ち食いそばにしては珍しくコーポレートアイデンティティのある店舗はすぐに目に入るはず。立ち食いそばのシンボルカラーである黄色看板ではあるが、レモンイエロー調の柔らかい色合いで統一され、看板には店主さんのほのぼの系な似顔絵あり。
ほぼ無休、ほぼ24時間営業で、いつでも立ち食いそばファンの需要に応えてくれる頼もしさ。立ち食いそば好きならばここを知らないはずはないという名店だ。
一由そばといえば、茹でめんに甘辛く濃いつゆの絶妙なコンビネーション、そして多彩な自家製天ぷら。店内厨房で次々に揚げられショーケースに積み上げられてゆく様を目にすれば、猛然と食欲が沸いてくる。人気メニューはイカのゲソをかき揚げにした「ゲソ天」で、クリスピーな衣に包まれたゲソの風味は飽きることのないうまさ。
一由そばには「お客様リクエスト品」として、お客の要望を受けたスペシャルな天ぷら提供のファンサービスがある。店頭の「ご意見箱」に投書された要望を店主さんが取り上げてくださるというものだ。
ゲソ天を愛してたまらないファンのために考案された特大サイズのジャンボゲソ天は、いつしかお店の看板メニューとなっているほどだし、牡蠣天ぷらといった季節の変わりネタにも果敢にチャレンジしてくれている。
そして数ある天ぷらのなかで、ひときわ異彩を放つオリジナルメニューに「かき揚げB」なるものがある。この「B」とはいったいなんぞやと誰でも疑問を持つのではないだろうか。そもそも世の中にはBがあればAがある、そのノリだろうか。つまり、レコードでいえばA面/B面、定食屋でいえばAランチ/Bランチ、きっとそういうものなのかも。
「ああ、これはきっとかき揚げの裏メニューのようなものにちがいない」と理解して、とくに食べることもなく過ごしていたのだが、ある日のこと路麺仲間で一由中毒としても有名なプリンスロメン氏から「ものすごくうまい、もう一由では「B」しか考えられない。ケビンさんまだ食べてないの」と告げられた。
これはいかんと焦って食べたのだが、その結論は「ものすごくうまい、もう一由では「B」しか考えられない」。それからはもっぱらBばかり注文する様になった。
さて、かき揚げBの正体は「イカゲソのぶつ切り、長ネギのぶつ切り、紅ショウガ」。つまりBとは「紅生姜のB」であった。これらを小麦粉のコロモでかき揚げたもの。こう書いても想像しにくいので他のものに例えるならば、「平たいたこ焼き」の表現が一番近いのではなかろうか。まさにジャンキーな味。縁日の味ともいえる。ちょっと焦げた感じがまたいい。ガツンと濃いつゆと相まって中毒性のあるうまさだ。これはもうA面のうまさ。
かき揚げBのあまりのうまさに感動した筆者の夢はふくらみ、ぜひとも「ジャンボかき揚げB」を実現してほしいと念じる様になった。そこで例の意見箱に「ぜひジャンボかき揚げB:略称JKBを食べてみたい」と投書し、それをブログに書いたところ多数の方から賛同をいただき、投書が投書を呼び、ついに2013年9月13日に発売された。このときの嬉しさは路麺人生で最大の喜びのひとつといえる。
JKB(ジャンボかき揚げB)そば
■つゆ:だしよし、カエシ濃厚。寝かした醤油の風味が際立ったガツンとくるつゆ。甘味はやや控えめ。茹でめんとよく合う。
■JKB(ジャンボかき揚げB):揚げ置き。ゲソ・ネギ・紅生姜をかき揚げにしたもの。通常サイズのかき揚げBと比べると、直径で1.5倍くらいの大きさで食べ応え十分。
実際に食べてみると、ジャンボというだけあって大きく厚みがある。レギュラーのかき揚げBは常識的なサイズだが、ジャンボ版は直径で1.5倍はあるだろう。丼の上から見たところではさほど大きくもなさげだが、それは「氷山の一角」であって、水面下に隠れている体積は見た目の倍以上はあるように感じられ、必死に食べても食べてもなかなか無くならない。
味はまったくかき揚げBのまま、大ぶりのゲソがゴロっとして、コロモややしっかりめ。いやむしろゲソの味が強くなって旨味強化版とも感じられる。
ジャンボかき揚げBはその後たいへんな人気メニューとなり、いつの間にかレギュラーメニューに昇格。なんと最近ではメニュー板に「名物」として上位にランクされるようになった。しかもその正式名称が「JKB」となっているではないか。命名者として光栄の至り。ファンを大切にする「一由そば」ならではのことだと感動を新たにしている。これからも足繁く通いたいものだ。
最寄り駅は日暮里だが、西日暮里からも徒歩7分くらいの距離にある。日暮里舎人ライナーの下を歩けばさほど時間はかからないので、腹ごなしにこちらのルートを行くのもまたいいもの。
住所:東京都荒川区西日暮里2-26-8
アクセス:JR日暮里駅東口を出て、徒歩約3分
営業時間:24時間営業
定休日:無休
評価:3点 ☆☆☆
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情報提供・監修/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食い蕎麦店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食い蕎麦チェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。