【蕎麦スス流】Vol.89〜全国制覇!? 日本の立ち食いそば〜
あの名古屋名物が東京でも! 爽亭の東京きしめん&桜エビのせ かき揚げ天そば【池袋】
Vol.89
池袋爽亭(そうてい)
東京きしめん 380円
桜エビのせ かき揚げ天そば 490円
ビジネスマンを続けていれば出張で名古屋へ行く機会は何度かあるはずだと思う。交通手段としては、よほど時間と鉄道趣味のある方なら中央線でというのもアリだが、東京方面からだったらまず間違いなく東海道新幹線を使うはずだ。早朝の東京駅を発車すれば1時間半ほどで名古屋駅に到着する。旅行としては短すぎてやや味気ないものだ。
そんな名古屋出張ではあるが、筆者にはいつも密かに心待ちにするものがある。それはJR名古屋駅ホームのきしめん屋。新幹線や在来線のホーム各所で営業する「住よし」だ。しかし近頃ではリモートワーク全盛で、しかも旅費のかかる出張は敬遠されがちなことから、名古屋へ行く機会、いやきしめんを食べる目的の出張という名の旅行も少なくなり、寂しく過ごしていた。
そんなある日、素晴らしい情報をSNSで目にした。なんと、東京であの名古屋駅のきしめんが食べられるらしい。しかもあの「住よし」を経営するJTS(ジャパン・トラベル・サービス)が経営するお店だ。
JTSは各地のJR駅を中心に飲食店を営んでおり、その主力は駅そば。東京では「爽亭(そうてい)」の屋号で展開する。そう、名古屋駅のあのきしめんが食えるのだ。
取材時点では、きしめんを取り扱っているのは池袋店とのこと。勇んで早朝から繰り出してみた。JRの階段を降り、コンコースを歩いて1・2番線の階段脇にお店はある。横並びカウンターに立ち席のみの昔ながらの駅そばの風情だ。
券売機をじっくり眺めると「東京きしめん」という名前で売り出されている。味の具合が想像できるネーミングだ。この日はとても腹ペコだったので、もうひと品「桜エビのせ かき揚げ天そば」と合わせて食券を購入。
店員さんに注文したところ「本当に2杯食べるんですか?」と2度も確認されてしまったが、こちとら「食べずに悔やむより、連食で後悔!」をモットーとする人間である、大きくうなずいて注文を念押しした。
■つゆ:鰹主体のダシ、醤油のはっきりした味わい。甘さ控えめ。ごくりと飲める塩分具合。きしめんと相性良し。
■キツネ:やや甘めの味付け、もぐもぐとした食感できしめんとアクセントの対比あり。
さて、早速きしめんをすすってみると、ツルツル・ピロピロとした歯触りで、小麦粉の幸福感に満たされる。甘めのキツネ、そしてどっさりと花かつお削りが乗っている。これこれ!これこそ懐かしいあの味を思い出させるトッピングだ。
そしてつゆをゴクリと飲んで、ああなるほど、確かに名古屋よりも、ややしょっぱめというか醤油が濃い具合の味付けだ。「東京」と名乗る理由はこのつゆなんだなと納得。しかしこれはこれでとてもうまい。何度でも食べたくなる味といえよう。
きしめんは軽くあっさりした一杯で、あっという間にツルツル飲み込むように食べてしまった。次いで「桜エビのせ かき揚げ天そば」に取り組もう。
こちらは非常にオーソドックスな駅そばだと言える。やや細めで固茹で加減のゆで麺は喉越しがよい。ポッテリ系のかき揚げは「桜エビのせ」と遠慮がちなネーミングではあるが、想像以上に多くのエビが入っていて香ばしく具沢山でおいしい。またうれしいことに、ネギはどっさり乗せられている。これならネギ多めコールは不要だろう。ちょいワカメもいい脇役。
そして、筆者が確認したかったのは「そばときしめんは同じつゆを使っているのか」ということ。両者をごくりと飲み比べて納得。きしめんだけを別のつゆで作るのはさすがに無理がある、つゆを共用することで名前を「東京きしめん」としたのだな。名古屋と全く同じと言ってもいいが、そうしなかったところに潔さを感じたのである。
ああ、こうしている今もまた食べたくなってきた。しばらくは池袋に行ったらきしめん一択になること間違いないと断言できる。量もちょうど手頃でおやつの一杯にうってつけだ。
住所:東京都豊島区南池袋1丁目 JR池袋駅改札内コンコース
アクセス:JR山手線 池袋駅改札内
営業時間:平日 6:30-21:30、土 6:30-20:00、日祝 7:00-20:00
定休日:無休
評価:2点 ☆☆
※本記事は、2022年11月12日取材時の情報です。
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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。