特集・連載
Stand-in Soba (Noodle) Lovers!! Vol.62
鮮烈な苦味がクセになる!? 稲浪の「明日葉天そば」【全国制覇!? 日本の立ち食いそば】
蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~ 世界の蕎麦好きのみなさん、コンニチハ! ラーメンと比べて世界的には地味な存在ですが、移動中にサッと寄れて、お腹もコスパも大満足。そんな立ち食い蕎麦は江戸時代からあるニッポンが誇るべきカルチャーなんです。なにかと“東京”も注目されることですしね。ってことで、日頃のランチに観光に、世界中の人にぜひ立ち寄ってほしい蕎麦店を厳選しました。恥ずかしがらないで音を立ててソバをススろう! この記事は特集・連載「蕎麦スス流~SOBA SuSu Ryu~」#62です。
Vol.62
飯田橋 Iidabashi稲浪(いなみ)
“Inami”
明日葉天そば
400円
AshitabaTen(※1) Soba – 400 Yen
住所は新小川町。飯田橋から神田川に沿って大曲のほうにちょっと進んで一つ目の交差点を左折してしばらく行ったあたり。印刷関連の会社が軒をつらねる印刷製本の町にある。2012年開店で、路麺基準としては新しめのお店。
なんとも辺鄙なところにあるのだが、さらに驚かせてくれるのは、いまどきの新しめの店には珍しい茹でめん使用であること。生めんもうまいが路麺ファンはやはり茹でめんを食べたい気持ちをいつも持っている。そこをわかってくれるお店はありがたい。
お店のご主人にうかがったところ、料理人としての経歴は長く、和洋中とさまざまなジャンルの経験があるかただ。そもそもは九段下の有名路麺「むさしの(閉店)」と仕事を通した交流があり、そこのつゆを見習うところから立ち食い蕎麦屋を始めたということだ。2012年の開店当初からうまい店と評判であったが、さらに年月を経るごとに独自の進化をとげ、オリジナルの風格漂う現在のうまいつゆへと熟成した。
■蕎麦:茹でめん。灰色、やや太めの四角断面。柔らかめ。ジワッと味わいのある茹でめん。こういうの好み。
■つゆ:香り良いしっかりとしたダシ。甘辛のバランス良いカエシ。優しめだが芯のしっかりした味わい。茹でめんと相性よし。
■タネ:明日葉の天ぷら。春菊と比べればやや苦味が強い。葉っぱがボリューム感あって食いごたえある。揚げ置きでヘナっとした加減が甘味をうまく引き出している。幸運なおまけのちくわ天に感謝。
■Soup: Nice and strong dashi(※2) with fragrance. Kaeshi(※3) has nice balance between saltiness and sweetness. Soft and kind but has strong taste. Nice with the already boiled noodle.
■Tempura: Ashitaba tempura. Little bitter than Shungiku tempura. The leaves have nice volume. Already made, but the time after cooked adds sweetness to the tempura. Luckily came with Chikuwa tempura too.
やや太めでモチ感あるそば。茹で麺の柔らかさ加減のなかに、ほのかにある蕎麦の香りと噛み締めたときの甘さ。つゆはカエシのガツン度をおさえ、その代わりにダシの香りの高さが全体を上品ですっきりした味に仕立てている。ご主人の研究熱心さに脱帽だ。
茹で麺の微妙な柔らかさは、例えるならばキメの細かいスポンジ感とでもいおうか。微細な凹みがダシの香りあふれるつゆの風味ををしっかり捉えて離さない。茹でめんとつゆの一心同体感がある。これぞ茹でめんの新スタンダード。これ食わないと今後の茹でめん立ち食い蕎麦は語れない領域にあるといって過言でない。
そして、明日葉といったちょっと見慣れない素材に果敢に挑戦する姿勢がファンの心を捉える。あそこに行けばなにか新しい面白いものがありそうだぞと思うと何度でも通いたくなる。
ちなみにもっと珍しいところでは「パクチー天ぷら」というやつもある。東南アジア料理でおなじみのあの香味野菜。まさか天ぷらで?と誰もが驚くこと間違いない。しかしこれも食べてみればじつにうまい。油で加熱するためか強烈な癖は抑えられて、後味の爽やかさが残る。
注:写真はうどんです。うどんもうまいです。
(Picture above is udon noodle, their udons are very tasty too)
うれしいサービスは新薬味群。左端は「にがみ」、その右は青唐辛子、右端の紅色はみじん切りの紅生姜。後列には唐辛子を微塵切りににしたもの、細く糸のようにしたもの。フライドオニオンといったちょっと蕎麦に合うかギリギリなものものある。
にがみは茹でた植物の輪切りのようなもので、爽やかな苦味とシャキシャキ感ある新鮮なあじわい。なかなかこういう味は立ち食い蕎麦になかった。わたしは苦いもの好きだから一発で気に入った。
これはなんという植物だろう。見た目は細いグリーンアスパラのようだが、味はぜんぜん違う。ご主人にたずねたところ意外な回答があり、なんと「明日葉の茎」とのこと。なるほど、鮮烈なにがみは明日葉であったか。葉は天ぷらでいただき、残った茎を活用するとは気づかなかった。ご主人の頭の柔軟さに感心だ。
■DATA
東京都新宿区新小川町5-8
JR線・飯田橋駅 徒歩8分
営 6:00〜17:00
休 土日祝
評価は3点 ☆☆☆
Address: Tokyo-to Shinjuku-ku Shin Ogawamachi 5-8
Access: 8min walk from JR Line Iidabashi Station
Open Hours: 6:00 – 17:00
Closed on Saturdays, Sundays, and Holidays
Grade: A Three-Star Sobaya
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※Google Android/iOS対応
Tempura is a deep-fried battered vegetable/seafood/meat
(※2)Seafood broth mainly made with Katsuobushi (Bonito flakes)
Katsuobushi is dried, fermented, and smoked skipjack tuna
(※3)Soy-sauce based soup stock
情報提供・監修/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食い蕎麦店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食い蕎麦チェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。