ミュージアム名品を通してアートを楽しむ[博ブツ観]

長谷川町子の人間への解像度に脱帽。「サザエ」さんの何気ない一コマを切りとる豆皿

サザエさんの豆皿

ミュージアムグッズは、単なるお土産品にあらず。旅好きのグッズ愛好家・大澤夏美さんによる、掘れば掘るほど面白いグッズとアートのお土産バナシをどうぞ。

Profile
大澤夏美さん

ミュージアムグッズ愛好家

大澤夏美さん

博物館経営論を軸に、旅をしながら全国の博物館を訪ねてグッズも研究。著書に『ミュージアムと生きていく』(文学通信)など。最近は講演会で各地を巡りグッズを探訪中!

ミュージアムでも買える豆皿集めも旅の楽しみに!

「旅に行ったら必ず観光地のマグネットを買うことにしてるの」という友人がいます。彼女の家の玄関の内扉には、これまでに訪れた先の「思い出マグネット」がぎっしり。ちょっとした展覧会を見ているようです。

同様に、旅先で食器を買うのが好きな人もいますよね。私も、日本各地の多様な食器を買うのが大好き。なかでも箸置きや豆皿に惹かれちゃう人間です。小さいのでお土産に持って帰ってもスーツケースの中で嵩張らないし、ちまちまと集める楽しみはマグネットに通ずるものがあるのかもしれません。ちょっとしたおみやげにだって最適です。

そんな私と同類の皆さんにおすすめしたいのが、旅先のミュージアムで食器を買うこと。その土地の土や技法を生かした焼き物、絵付けで表現された資料……旅の記憶とともにミュージアムでの鑑賞体験が思い出されるのです。伝統工芸とのコラボも見かけますね。

長谷川町子記念館で販売されているのは、『サザエさん』『いじわるばあさん』から抜き出されたキャラクターが躍動する豆皿。

こちらを手掛けたのは、本連載の第1回・マティス展のグッズを手掛けた株式会社Eastです。下絵付けという技法で転写されており、釉薬の下にキャラクターの絵が敷かれています。なので、旅先から持ち帰る道中も絵が剝げる心配がなく、使ったら食洗器で洗えるのがうれしい!

とにかく注目してほしいのが、長谷川町子の人間への解像度の高さ。あまりにも身近な作品ゆえ、普段はなかなか気づけないポイントなのですが……ワカメちゃんが鏡台で口紅を使っているときのおしゃまな背中、つまみ食いを狙うカツオの慎重で愛らしい足取り、カツオのために編むセーターのサイズをみるサザエさんの慈愛に満ちた表情……シンプルな線での肉体表現が巧みすぎるんです。

豆皿を手に取るたび、展示室で「登場人物が絵の世界で生きてる! 上手すぎなのよ!」と心の中で叫んだ記憶がよみがえります。

もうすぐ年末年始。日本各地の食器を食卓に並べて、お正月料理のテーブルコーディネートを楽しみたい時期です。そこにぜひこの豆皿も忍ばせてみてほしい。サザエさん一家のお正月を想像してみたり、いじわるばあさんのいたずらを妄想しながら。会話が弾むこと間違いなしの逸品です。

裏には掲載日が!

サザエさんの豆皿

歴史的名作の何気ない一コマ

新聞に掲載された4コマ原画から抜き出した1コマを「下絵付け」という方法で転写した小皿。ガラス質の釉薬でコーティングされているので、たとえタワシで擦っても絵は剥がれない。絵柄は計10種類。食洗機対応。Φ11.5cm。880円。

ミュージアムグッズから学ぶ博識キャプション
 
長谷川町子[Machiko Hasegawa]
1920年佐賀県生まれ。漫画家デビューはなんと15歳で、19歳の頃には新聞連載を任せられるほどの人気作家に。1946年から1974年まで続いた国民的漫画『サザエさん』の4コマ作品は計6500本を超える。
information
長谷川町子記念館

サザエさんワールドをこれでもかと堪能‼
「長谷川町子記念館」

『サザエさん』や『いじわるばあさん』の原画展示やアニメコーナーなどで老若男女が楽しめる。

住所 :
東京都世田谷区桜新町1-29-7
電話 :
070-5365-6133

 
※表示価格は税込み


[ビギン2025年2月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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