ミュージアム名品を通してアートを楽しむ[博ブツ観]
置くだけで自宅にアートの風が吹く。香川県直島の「ベネッセハウス」オリジナルモビール
ミュージアムグッズは、単なるお土産品にあらず。旅好きのグッズ愛好家・大澤夏美さんによる、掘れば掘るほど面白いグッズとアートのお土産バナシをどうぞ。

ミュージアムグッズ愛好家
大澤夏美さん
博物館経営論を軸に、旅をしながら全国の博物館を訪ねてグッズも研究。著書に『ミュージアムと生きていく』(文学通信)など。自費出版誌の最新刊が公式サイトで発売中!
瀬戸は日暮れていつかまた、あの島にアートを見に行くの
忘れられない旅の思い出のひとつに、大学生時代の芸術祭巡りがあります。ちょうど、あいちトリエンナーレと瀬戸内国際芸術祭の第一回が開催された2010年。友人たちと苫小牧港からフェリーに乗り、一日半ほどをかけて仙台経由で名古屋へ。その後長距離バスで高松へ向かいました。
学生じゃないとなかなかできない時間をかけた移動を楽しみ、初めて降り立った瀬戸内エリアは、北海道の厳しい自然の中で生きてきた自分にとっては天国のような気候でした。
たくさんの島々を見るのも、船で通勤通学をする人たちと出会うのも、コシの強いうどんを食べるのも初めて。「瀬戸は日暮れて夕波小波」。会場になった島々を訪ね歩き、高松の宿へ戻る船上で、夕焼けと海風を浴びながら小柳ルミ子の「瀬戸の花嫁」を友人と歌ったのも大事な思い出です。
直島にある美術館とホテルの複合施設として人気のベネッセハウスのグッズに、オリジナルのモビール「sailaway」があります。台座の上で揺れるアルミニウムの三角形は、「出航」を意味する名前の通り船の帆を想起させます。
プロダクトメーカー「mother tool」がデザインし、オーク材の台座には「Benesse House」と刻印を入れた直島オリジナルカラーの別注商品。卓上置き型で、組み立てるとすぐに風を受けて穏やかに揺れます。船出というモチーフの縁起の良さから、門出を迎える人への贈り物に良いかも。
当時一緒に旅をした友人と、今でも旅の思い出を語り合います。「お金ないからって4人部屋の大広間に泊まるなんて、今はできないよね」「うどん屋さんを一晩で2件はしごしたってホント?」なんて。
またみんなと旅に出たいな。2人の子どもの母親になった子、道外で懸命に働いている子もいて、今はなかなか揃って旅はできないけれど。でも10年後とかに集まってさ、このモビールのように、また船の上で夕暮れの風に一緒に吹かれて笑い転げてくれるかな。
あの時のような貧乏旅行はもう身体が悲鳴を上げるだろうけど、そんなロードムービーのような再会がしたいよ。そうつぶやく私のデスクの上で、「sail away」の帆は風にそよぎ出航の日を待っています。
置くだけで自宅にアートの風が吹く
組み立てが簡単で、部屋の様式を問わずに上質な空気感を楽しめる。男性客や外国人観光客からも人気の、密かなロングセラー商品だ。W30cm×H21cm×D2cm。1万4300円。
瀬戸の花嫁[Seto no Hanayome]
1972年4月に発売。瀬戸内海をテーマに製作された定番のご当地ソングとなっている。当時子供たちの間で、本楽曲のワンフレーズの区切りごとに、料理名を組み合わせる替え歌が大流行した。

ホテルと一体化したアートとの共生!!
「ベネッセハウス ミュージアム」
瀬戸内海を望む高台に建つ、美術館とホテルが一体となった施設。安藤忠雄による建築美も人気のひとつ。
- 住所 :
- 香川県香川郡直島町琴弾地
- 電話 :
- 087-892-3223
※表示価格は税込み
[ビギン2024年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。