BellaBot ベラボット

一説によると、これからの10年、過去100年のそれと同じくらい社会も変化していくと言われています。そのカギを握るのはDX(デジタルトランスフォーメーション)。デジタル時代を生きる私たちにとって、間違いなく避けることのできないテーマだといえましょう。ですが、一体どれだけの人がDXという言葉から具体的な“なにか”を説明できるでしょうか。

そこでスタートする連載が「プロジェクトDX」です。これまでビギンでは深掘りできていなかったDXの分野にフォーカス。時代の変化やニーズに、DXを活用して見事に応える、優れたサービスの開発者やその現場を訪ね、社会を変える可能性やそこに込められた思いを紹介していきます。デジタルとモノが結びつき、倍速で変化している社会の“いま”を知り、ワクワクする未来を迎えにいきましょう。

プロジェクトDX 〜挑戦者No.1〜プードゥ社のネコ型配膳ロボット

日本の外食産業を統括する「一般社団法人日本フードサービス協会」が、2022年に行った「外食産業市場動向調査」によると、日本にはおよそ3万7000店舗も飲食店が営業しているそうです。新型コロナウイルスに関する制限が緩和されるなか、2021年と比べ客数も売り上げも回復しているそうですが、メディアでは頻繁に深刻な人手不足に頭を抱える飲食店経営者が映し出されていました。

BellaBot ベラボット

今回は、そんな飲食店の救世主「BellaBot(ベラボット)」に迫ります。2022年のサッカーW杯のスタジアムでも活用され、選手たちのサポートにも一役買った、いま世界から注目されている猫型の配膳ロボットです。

日本での導入は始まったばかり

プードゥ ロボティクス ジャパン株式会社 林 裕
プードゥ ロボティクス ジャパン株式会社 マーケティング担当 林 裕氏

配膳ロボットは、本体に搭載されているトレーに載せた商品を、指定した場所に自動で届ける役割を担います。ここ数年、非対面・非接触を実現できることから、飲食業界を中心に世界中で利用が広まっています。あなたも大手ファミリーレストランで食事を配膳された経験があるのでは?

一方で、正確性や安全性の面から心配の声も上がっています。中国生まれの「ベラボット」が日本に上陸したのは昨年のことで、先進諸国と比べてやや出遅れぎみ。というのも、日本には“ロボット=人の仕事を奪う存在”という認識が根強くあり、ロボットに対する抵抗感も拭いきれていないんだそう。

本国と日本支社の通訳としても活躍する林さんは「ロボットはあくまで人をサポートする存在。特に飲食業界では、人の細やかなサービスが必要です」と語ります。

働く側もサービスを受ける側も癒される

「ベラボット」の一番の革新性は、人とコミュニケーションがとれること。猫をモチーフにしたキュートな本体にはAIが搭載されており、マルチモーダルインタラクション機能が充実しています。簡単な会話ができたり液晶画面に表情が映し出されたり、たとえば頭をなでると気持ちよさそうな表情に。調子に乗って触りすぎてしまうと「やめてくれニャ〜」と怒り出します。コロコロと変わる表情は全部で10種類以上もあります。

開発したのは、中国の深圳(シンセン)に本拠地をおく「プードゥ社」です。2016年に創業した同社は、商業サービスロボットをグローバルに展開するハイテク企業。なかでも自立走行ロボットの開発技術に特化しており、そのテクノロジーが「ベラボット」にも応用されています。

BellaBot ベラボット
操作はタッチパネルで簡単に完了。液晶画面にはベラボットが発する言葉も表示される

ベラボットは、一度に40kgまでの商品を、最大4ヶ所に運ぶことが可能です。配膳ルートは一度、手動(手で押して)で走行させ登録しておけば、ボタンひとつで目的地へ。飲食店の営業時間を想定して、4.5時間の充電で最大24時間(間欠運転で24時間、連続走行では約12時間)の稼働に耐えられるよう設計されています。

最大の長所は、空間認識能力。最先端のSLAM技術(位置の推定と周囲の環境の構造把握を同時に行う技術)によって、目的地を細かく設定可能で、最小70cmの道幅でも行き来できます。

BellaBot ベラボット

また、液晶画面の下に3Dセンサー、本体の底部分に高性能カメラを搭載しており、障害物が近づくと直ぐに察知、わずか0.5秒で回避します。障害物検知の最大頻度は、1分間で約5400回。向かってくる人がいると横にかわし、走行の妨害をし続けると「どいてくれニャ〜」と猫語で文句をポロリ。

BellaBot ベラボット

世界シェアNo.1。およそ60カ国で配達中

毎年1月にアメリカ・ラスベガスで開催される世界最大規模の家電見本市「CES」が表彰する「Technology Innovation Prize」を獲得している「ベラボット」。その機能性、安全性、デザイン性が評価され、現在、アジア圏を飛び越え北米やヨーロッパ諸国を含めた、全60カ国の現場で導入されています。

費用対効果が高い点も、シェアが広がっている理由のひとつ。1台300万円程度で販売されていて、他社の配膳ロボット(1台500万円以上するところも多い)と比べて本体価格も抑えられています。

もし3年間ファミリーレストランで使い続けたとき、その働きを時給換算すると200円以下。しかも人だと1日に200〜300皿の料理を運ぶのに対し「ベラボット」は約400皿の料理を運ぶことができるので、高い回転率につながります。もちろんロボットですから、長時間労働や欠勤の心配もありません。一方で人のスタッフはほかのサービスに集中することができます。

プードゥ ロボティクス ジャパン株式会社 林 裕

「食べ放題形式の焼肉店では肉の配膳をベラボットに任せて、その間にスタッフはバイキングコーナーに野菜を補充しています。これにより混雑時でもサービスが行き届き、お客さまの満足度が上がったそうです」と林さんも嬉しそう。

接客もできる新世代の招き猫

日本市場では、「ガスト」や「バーミヤン」など外食産業大手「すかいらーくレストランツ」の主力ブランドに合計約3000台が導入されているほか、温泉旅館、ショッピングモールのフードコートにも活躍の幅を広げています。

ベラボットとプードゥ ロボティクス ジャパン株式会社の林 裕

「ベラボット」の愛くるしい見た目と猫語が評判を呼び、お客さんのなかにはすっかりメロメロになる人も。暇になると眠ってしまう表情がSNSでアップされると、瞬く間に拡散され話題となりました。その人気の高まりから、なんと「ベラボット」をモチーフにしたラインスタンプまで発売されています。

眠たいニャ〜zzz

BellaBot ベラボット

「個人的には寝ている表情がお気に入りです。“仕事中にサボりやがって〜”みたいにSNSでイジられているのを見かけると嬉しい。それに、ペット感覚でスタッフさんにも可愛がられているみたいなんですよね。仕事をロボットとシェアすれば、お客さん一人ひとりにもっと手厚い接客ができる。人気マンガとのコラボレーションなんかもおもしろそう。ベラボットがお客さまの来店の動機につながる未来に向けて、もっと販路を拡大していきたいです」

飲食店を飛び出し、福祉業界にも

「ベラボット」は場所やシーンに合わせて、配膳スピードの調整もできます。安全に走行できるため、飲食業界のほかに教育や福祉の現場でも活躍中。デイケアセンターでは、食事の配膳はもちろん、取り替えたシーツの運搬でもその機能を発揮しています。

プードゥ ロボティクス ジャパン株式会社 林 裕

デイケアセンターの利用者の多くは、動物が好きでもペットを飼えません。ですが、ベラボットならその寂しさを少しでも埋められる。実際に導入した施設の利用者の方から“心のケアになっている”という嬉しい声も届いているそう。「ベラボットが飲食店以外で活躍する可能性も、力を入れて模索していきたい」と林さんは言います。

ロボットと共存することで、社会はもっとハートフルに

BellaBot ベラボット

57kg。W565×D537×H1290mm。321万4200円(エルモカンパニー ☎️03-3471-4577)

現状、ロボットには人の心を宿せません。しかし、「ベラボット」は生活を便利にするだけでなく、人の心も確かに和ませてくれます。ロボットと共存する未来は、思いのほか今よりもハートフルなのかもしれません。コミュニケーションの取れるネコ型配膳ロボットの登場に、そんな期待が膨らみました。「ベラボット」がネズミに耳をかじられたら、青くなったりするのかな、なるわけないか(笑)。取材後、ガストに向かうビギン取材班でした。



※表示価格はすべて税込です。

写真/宮前一喜 文/妹尾龍都

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