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コクヨノビータクリヤーブック

お餅、チーズ、自然薯、納豆、トルコアイス、カスピ海ヨーグルト……。のびる食べ物には美味しさだけではなく、どこかしらの楽しさがある。では、伸びる文具には何があるのか? それは、便利さである。

今回紹介するのは、その名も「ノビータ」というファイルだ。

透明なポケットが、PP製の表紙で本のように綴じられた、いわゆるクリヤーブックと呼ばれるファイルの一種だ。パッと見た限りでは普通のファイルとあまり違いはないように思うが、実はこれ、「背幅」がのびるファイルなのである。

背幅が伸びるというのは一体どういうことか。一般的なファイルは、背の部分にヒンジ(折り線)が2本入っており、上から見るとカタカナの「コ」の字のようになっている。ノビータは、このヒンジが2本ではなく複数ついているのがミソ。これによって、中身が少ないときは中心に近い内側のヒンジ、中身が多いときは外側のヒンジで表紙が曲がる。つまり「コ」の字の縦棒に当たる部分(=背幅)がのびるというわけだ。

え? それだけ?と言うなかれ。これがいかに画期的なことなのか、もう少し説明させてほしい。ノビータ以前のクリヤーブックは、「書類の量に合わせて背幅を選ぶ」必要があった。なぜなら、ファイルの背幅は入れる書類の量に対して、厚すぎても薄すぎても使いにくいから。

たとえば背幅に対して中身が少ないとき、その余った背幅の分だけ収納スペースが無駄になってしまう。また、上から見たときの表紙も「コ」の字ではなく細長い二等辺三角形のようになるので、棚に立てたときも細い側(小口側)だけが狭まり、カットしたピザのようにズレ込んでしまって、なかなかキレイに並べられない。

逆に中身が多すぎると、今度は表紙が手前に向かってボワッと膨らんでしまう。中身が背幅に対して多すぎても少なすぎても、表紙と裏表紙が平行にならないのだ。そのせいで、机の上に寝かせた状態で積み重ねたファイルが雪崩を起こし、大惨事に発展した経験を持つ人も少なくないだろう。

だから、ファイルの背幅は書類に対してちょうどいいものを選ばなくてはいけないのだけれど……ここでひとつ、根本的な問題につきあたる。それは、書類の量というのは常に一定ではない、ということだ。大抵の場合は現在の量より増えるものだが、いつ増えるのか、どれくらい増えるのか、最終的にどんな量になるのか、ファイルを購入する時点では予測がつかないことがほとんどだ。

そのため成長期の中学生の制服のように、ちょっと大きめの背幅のファイルを選んだりして対策を図るものの……ちょうどよく快適に使える時期はほんの一瞬で、ほとんどの期間をブカブカかパツパツかのいずれかの状態で過ごすことになる。

ノビータが画期的なのは、このように「書類に合った背幅のファイルを選ぶ」しかなかった常識を覆し、「ファイルが書類の背幅に合わせてくれる」というパラダイムシフトを実現したことだ。ヒンジは2本じゃなきゃいけないなんて誰が決めたのか? 複数本あれば、表紙と裏表紙が中身に対して常にピッタリ平行になるではないか、という発想。これをイノベーションと言わずして何と言おう。

コクヨのノビータシリーズは年賀状や写真などラインナップが豊富だ

ノビータシリーズは、ラインナップも豊富だ。一般的なA4サイズに加え、年賀状の整理に便利なポストカードサイズや、写真用サイズのポケットを備えたアルバムタイプのほか、名刺・カードサイズ、取扱説明書用、領収書・明細用、診察券やおくすり手帳をまとめるのに便利なマルチポケットタイプ、などなど。入れたいものによって選べるバリエーションがあるのはありがたい。

しかしノビータの唯一にして最大の欠点は、お店に並んでいる状態だと、その良さがまったくもって伝わらないところ。店頭では中身が入っていないから、背幅がのびるという機能を知らない人には、書類が全然入らないただの薄いファイルに見えてしまうのだ。20ポケットタイプでも、背幅が5mmから40mmまで広がるので、本当はコピー用紙1束分近く入るポテンシャルがあるのだが……。

年末年始は、大掃除もあるし、家にいる時間も長くなるから、書類の整理収納を見直すのにも良い季節だ。びよ~んとのびるお餅を食べる機会があったら、「そういえば背幅がのびるファイルっていうのがあったな……」と、ノビータのことも思い出してあげてほしい。

コクヨ
ノビータ クリヤーブック(A4タテ 固定式20ポケット)

429円
https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/clearbook/novita/

※表示価格は税込み

ヨシムラマリ

ヨシムラマリ

神奈川県出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手掛けている。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。

文房具グルメとは? 価格やブランド名だけでは価値が計り知れない、味わい深い文房具の数々。フランス料理店でシャンパングラスを傾ける記念日もあれば、無性にカップ麺が食べたくなる日もありますよね? そんな日常と重ねあわせて、文房具に造詣の深い気鋭のイラストレーターが気になるアイテムとの至福のひとときをご紹介!

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