パラブーツは、ビギンが本格靴を語る際に絶対ハズせない(!)ブランドです。ってことで、パラブーツの歴史をキーマンとともに復習! これを読めばエポックな出来事はもちろん、知られざる裏話も学べて、フランス代表 本格靴ブランド、パラブーツがもっと好きになっちゃいます。
「パラブーツ」超キーマン
ジー・エム・ティー 代表取締役
横瀬秀明さん
1983年、ワールド フットウェア ギャラリーに入社。’94年に靴のインポーター、ジー・エム・ティーを、2001年にパラブーツの日本代理店アール・ピー・ジェーを設立する。
1980年中頃
エルメスのオーダーで“アザラシ毛付き「ミカエル」”が誕生
1945年誕生の「ミカエル」には、かつてヴァンプがシールファー【アザラシの毛皮】の「ミカエル フォック」なるモデルが存在していました。「このモデル、じつはエルメスのオーダーで誕生したものなんですよ」(横瀬さん)。
その後、パラブーツのインラインとして展開されるも、2015年頃から原皮調達の困難からディスコンに。そこで代わるものとしてラビット、ミンク、ポニーのタイプが登場。最新はムートンで、シールファーに似たふかふか感あり。
2022年の今は「ムートン」
MICHAEL/ミカエル
左奥から/ポニーファー採用「ミカエル タイガー」8万1400円、「ミカエル」7万9200円、「ミカエルムートン」8万1400円。いずれもマルシェⅡソール搭載。
1990年頃
フレンチ・デニム流行の“おこぼれ!?”で(笑)、「シャンボード」に日の目!
じつはビームスやシップスなどで地味~に売られていた「シャンボード」。が、バブルでアゲアゲの80年代後半~90年頃、フレンチデニム・ブームに乗り、そうしたスタイルに合う靴として急浮上。
リベルトやシピーと並ぶ人気だったクリークスの店で「ワールド フットウェア ギャラリーがコーナーを構えて販売したら、大評判になりました」(横瀬さん)。ビギンも頻繁にプッシュし、やがて「シャンボード」はブランドの“顔”になりました。
CHAMBORD/シャンボード
永世定番の傑作Uチップ。人気モデルゆえアッパーの素材&色も豊富だ。クッション性に富むパラテックスソール搭載。ノルヴェイジャン製法。写真はリス・レザー製。7万9200円。
1990年中頃
アウトドアファッション台頭 伊・ドロミテなど「チロリアン」に脚光!
登山ブームの影響でアウトドアファッションが台頭し、街歩きでも足元はゴツゴツな山靴ってなスタイルが流行。ビギンがパラブーツの兄弟ブランド「ガリビエ」のマウンテンブーツをイチ押したら大ブレイク(!)といったこともありました。
で、こうした波に乗ってチロリアンシューズも注目されるように。横瀬さん曰く「代表ブランドはドロミテでした。なのに『ミカエル』はこのウェーブに乗れず不人気のまま。今でも悔やまれます(涙)」
2001年
「エアマックス 95」の余波、「クラシコ・イタリア」ブームに屈せず、「パラブーツ青山店」オープン
90年代半ばのナイキ「エアマックス 95」出現でトレンドがいっきにスニーカーに振れ、続くクラシコ・ブームでイタリアブランドが日本に続々上陸し、スクエアトウのトンガリ靴が2000年代半ばまで靴界を席巻。必然的に、丸い靴が多いパラブーツは辛酸をなめることに。
「そんなさなかの2001年、果敢にも東京・青山に日本初のパラブーツショップをオープンしたのですが、正直、苦戦しましたねぇ……」と当時を振り返って横瀬さん苦笑い。
2005年
ビームスも注目した! 名作「バース」がヒットをかっとばす!!
2001年に青山店を開いたものの苦戦を続けていたパラブーツですが、2005年にデッキシューズをプッシュしていたビームスなどが「バース」の別注を展開。
これにより、1985年に阪神タイガースを日本一に導いた強打者ランディ・バース選手よろしく、「バース」がパラブーツのリーディングヒッターに浮上しました。
「プライスもお手頃とあって、当時からのパラブーツ・ファンには、このモデルから入ったという人が多いのでは?」(横瀬さん)
BARTH/バース
仏・海兵隊公式採用したモデルをベースにしたデッキ。海水や太陽光にさらされてもひび割れや変形が起きにくいレザー採用。マリンソール。モカシンマッケイ製法。2万9700円。
2010年
UAが「ミリー」(=「ミカエル」のハイカット)推し。ついに「ミカエル」が注目の的に!
日本では「シャンボード」→「バース」がパラブーツのエースとして認識されてきました。が、2010年頃にユナイテッドアローズが「ミカエル」のハイカット版「ミリー」を積極的に展開。
また、毛付きの「ミカエル」&「ミリー」も注目されるにいたり、バイプレーヤー的存在と認識されてきたものの、じつは元来はブランドを象徴する存在の「ミカエル」がやっとというか、ついにというか、威風堂々たるエースとして登板することになったのです!
MILLY/ミリー
「ミカエル フォック」のハイカット版として登場した「ミリー フォック」。2000年代に人気を博すも、シールファーの調達が難しくなった現在、残念ながら廃番に。
Dressy MICHAEL
アッパーをリスワクシーレザーからカーフとし、本底をレザーに、シューレースをロウ引きタイプに変更してドレス顔に。9万200円。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。