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文房具グルメ

ビクトリノックス クラシック・シグネチャー

「一寸先は闇」、「青天の霹靂」、「事実は小説よりも奇なり」などのことわざや慣用句を持ち出すまでもなく、未来は予測不可能であり、かつ我々の想像をいともたやすく超えてくるというのは、時代の新旧、洋の東西を問わずいわれ続けてきたことである。そうわかっていてもなお、ここ数か月の出来事が私たちにもたらした変化はあまりにも大きい。仕事や生活のあり方がガラリと変わり、それに伴い人々の考え方や価値観、モノの選び方にも未だかつてない変化が生じているのを感じる。

自分自身でいえば、在宅勤務が基本になり、電車に乗る機会がほとんどなくなった。外出といえば、ほぼ徒歩圏内である。ファッションはリラックス系が多くなり、バッグは財布とスマホ、エコバッグが最低限入るくらいのミニサイズのものを手に取る機会が圧倒的に増えた。

バッグが小さくなったのは、通勤がなくなったことによる運動不足を解消するために、スーパーへ買い出しに行くついでに家の周りをウォーキングすることが習慣になったからだが、ここでひとつ問題が生じた。それは、今まで使っていたノートとペンがバッグに入らなくなってしまったことである。

もうひとまわり大きいバッグを持って出かければいいのだが、ウォーキングが目的なので、なるべく身軽でいたい。となると、バッグは替えたくない。では、ノートとペンを置いていくか。実際、短時間の外出でメモが必要になることはそれほど多いわけではないし……とも考えたが、やはり何も持たずに出るのは不安だ。それこそ何が起こるかわからないではないか。出先でメモが必要なときは、だいたい本当に必要なときなのだ。

そう悩んでいたときにふと思い出したのが、子供の頃、家族旅行の際に母親がいつも持ち歩いていたビクトリノックスのマルチツールである。滞在先のホテルで果物を切ったり、外国製のお菓子の頑健な包装を開けたり、指に刺さったトゲを抜いてもらったりと、まさに「いざ」というときに幾度も助けられた。今こそ、アレの出番なのではないだろうか?

という紆余曲折を経て、私の手元にやってきたのがビクトリノックスのマルチツール「クラシック・シグネチャー」である。ビクトリノックスといえば小型ナイフなどが有名だが、実はボールペンが内蔵されたモデルもある。そのうちのひとつが「クラシック・シグネチャー」なのだ。

全長6cmにも満たない小型のボディでありながら、当初の目的であったボールペン以外にもナイフ、はさみ、爪やすり(兼マイナスドライバー)、ピンセットが搭載されている。ちなみに、ピンセットは付属のつまようじとも入れ替えが可能なので、どちらを入れておくかはお好みで。ここまでくると、ちょっとしたペンケースを手の中に持ち歩いている感覚で楽しい。紙は別で用意する必要があるため、切り離したメモ帳を何枚か財布に仕込んでいるが、それもない場合はレシートの裏か、最悪は手の甲に書くのでもいいだろう。

今は家の鍵と一緒にカラビナに付けて、外出の際には必ず持ち歩くようにしているのだが、なんというか、持っているだけで安心感がすごいのである。例えるなら、災害用の保存食に近いかもしれない。備蓄が必要にならないことがいちばんだが、いざとなったら備えがあると思えばこそ、不測の事態を過度に恐れることなく、冷静でいることができるのだ。

ビクトリノックス クラシック・シグネチャーはマルチツールだから便利

とはいえこのマルチツール、身に着けていると何かと便利で、たまの出社で溜まりに溜まった郵便物を開封し整理するときなどに、ごく普通に使っている。なんだか備蓄用に買ったカレーを、自炊するのが面倒くさいからと何でもない日に食べているような話だが、近頃は保存食も特別なものではない通常のレトルト食品を多めに用意して、普段から消費して新しいものと入れ替えるローリングストックがオススメだというし、それはそれでいいのかもしれない。

アイデアもある意味、時と場所を選ばず降ってくる。いざというときへの備えは、普段から。いろいろなことへの不安が拭えない今だからこそ、お守り代わりのマルチツールは、まだ当分手放せそうになない。

2160円
https://www.victorinox.com/jp/ja/p//p/0.6225
※表示価格は税抜き

ヨシムラマリ

ヨシムラマリ

神奈川県出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手掛けている。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。

文房具グルメとは? 価格やブランド名だけでは価値が計り知れない、味わい深い文房具の数々。フランス料理店でシャンパングラスを傾ける記念日もあれば、無性にカップ麺が食べたくなる日もありますよね? そんな日常と重ねあわせて、文房具に造詣の深い気鋭のイラストレーターが気になるアイテムとの至福のひとときをご紹介!

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