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文房具ルメ

世間は年末年始である。

この季節、否が応でも今までの1年とこれからの1年について考えてしまう人は多いのではないだろうか。「光陰矢の如し」とはいうけれど、それにしたって30代も半ばを過ぎると本当に1年があっという間である。1年前と比べて自分は何か進歩しただろうか? このまま、何も成し遂げられないまま人生が終わってしまうのだろうか。

そうならないためにも、2020年は何か新しいことを始めたいな、という人に個人的にオススメしたいのが日記をつける習慣である。何を隠そう、私自身もう何年も日記をつけているのだが、これがなかなかよいものなのだ。

かつて、「レコーディングダイエット」が一世を風靡したことがある。口にしたものとそのカロリーを、とにかくすべて書き残していくというシンプルなダイエット法だが、これを行うと「そんなに食べてないと思ってたけど、意外と食べてたわ」と自覚できる効果があるという。日記もじつはこれと同じで、1日の終わりに書き出してみると「何もない毎日だと思っていたけど、結構いろいろなことが起こったり、考えたりしているなぁ」と自分を見つめ直すことができるのだ。

日記をつけるにあたっては、いわゆる日記帳や普通のノートでもいいけれど、次のような理由から、個人的には「1日1ページタイプの手帳」を使うことを推奨したい。

■「日付が入っていたほうが続けやすい」

よく「空白のページが続くのがイヤだから」とか、「続くかどうかわからないから」という理由で、あらかじめ日付の入っていない日記やノートを選ぶ人がいるが、個人的にこれは初心者にはオススメできない。新しい習慣を身につけるのは、誰にとっても少なからず億劫なもの。「書けるときに書こう」と逃げ道がある状態では、身につくものも身につかない。「空白のページにプレッシャーを感じる」くらいが、むしろ初心者にとってはちょうどいいのだ。

もちろん、すでに日記をつける習慣ができあがっている人ならば、書く量やタイミングに合わせて、自分の使いやすいものを選んで問題ない。

■「デザインがいろいろある」

日記をつけるという習慣自体があまりメジャーではないせいか、いざ日記帳を探そうと思ってお店に足を運んでみても、案外種類が少ない。デザインもクラシカルな書籍のような雰囲気のものや、ややファンシーで女性的なものに偏りがちだ。その中で気に入るデザインの日記帳に出会えればラッキーだが、見つからない場合は、手帳に目を向けてみるのもいい。デザインがいろいろあるので、好みのものが見つかる可能性が高まる。せっかく1年間使うのだから、手に取るたびに「いいな」と気分が上がるものを選びたい。

■「時間軸が記入のとっかかりになる」

日記を始めたばかりのころは、何を書けばいいのか迷うもの。時間軸があらかじめ入っている手帳であれば、何時に何をしたかをざっくり書いていくだけでも、少なくともその日の記録はつけられる。何をしたかを書いているうちに、そのときに思ったことや感じたことも芋づる式に思い出してくる。そうなればもうこっちのもので、空いたスペースにそれを書き込んでいけば日記のできあがりだ。

また、手帳ならばマンスリーカレンダーもついているので、特別なイベントがあった日はそれも書いておくとよい。後から読み返すときに、マンスリーのページが目次の代わりとなって、その日の記録にアクセスしやすくなる。

■「何を書いてもいい」

上で「記録をつける」と書いたが、日記には特に何を書かなければいけないという決まりはないので、他に書きたいことがあれば何を書いてもいいのだ。

私はだいたい寝る前の5分くらいを使って、その瞬間に思い浮かんだことをただつらつらと書き残している。結果的にその日あったことの記録になることもあるし、全然違う思いつきを書いたり、その日行った美術展や映画のチケットを貼り付けて終わったりするときもある。

1日1ページの手帳は、このように小さな紙片を貼り込むこともできるので具合がいいのだ。サイズは書く量に応じて選べばいいけれど、まずはA6~B6サイズぐらいが気軽だろう。

何事も、ルールを決めてきっちりやろうとすると、長く続けるうちに無理が出てくるのだ。別に誰かに読ませるものではないのだから、報告書のようにきっちりまとめる必要はない。「疲れた。寝る」とだけ書いて、それが数日続いてもいいのだ。1日の終わりにどんな気分だったか、何を考えていたかがわかるだけでも、自分自身が読み返せば、案外その当時のことが蘇ってくるものである。

手帳というと、未来の予定を書くもの、スケジュールを管理するためのもの、というふうに思っている人は、もしかするとまだ多いかもしれない。

だが、近頃はこういった「人生の記録と記憶を残すもの」という位置付けで手帳を利用する人が増えている。パソコンやスマートフォンも便利だけれど、毎日紙のページをめくって「今日は1年のこの辺りか」、「毎日あっという間だけど、いろいろあったな」と過ごしてきた日々を手触りとして実感するのもいいものだ。

これまでに口にしてきた物が身体をつくるというけれど、心をつくっているのは、今まで過ごしてきた時間なのかもしれない。

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ヨシムラマリ

ヨシムラマリ

神奈川県出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手掛けている。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。

文房具グルメとは? 価格やブランド名だけでは価値が計り知れない、味わい深い文房具の数々。フランス料理店でシャンパングラスを傾ける記念日もあれば、無性にカップ麺が食べたくなる日もありますよね? そんな日常と重ねあわせて、文房具に造詣の深い気鋭のイラストレーターが気になるアイテムとの至福のひとときをご紹介!

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