デンマークの国民性が反映!? 家の中を“ほんわか”快適にする名作ランプ6選
マリメッコからイノベーターまで一生使える“北欧デザイン大全”[デンマーク編]
国を超えて愛される北欧デザインとは何なのか? そこには使い手の姿を想像した緻密な計算と、人間味のある温かさがありました。これから先も使える、北欧デザイン名作を深掘りします!
デンマーク出身のデザイナーの多くが、家具職人の経験や勉強を経ていること。これは、家で過ごす時間を大切にする文化を尊重した、ゆったり過ごせる照明や椅子が多い所以だ。
ベストセラーになった秘訣って!?
デンマークの“偉人のランプ”が語る「ほんわか物語」
おうち時間が長いデンマークの冬。住環境を大事にする国民性を反映して、照明器具も百花繚乱。名作揃いのデンマークのランプ、どう生まれたの? てなわけで、そのあたりの経緯をランプ自身に語ってもらいました(笑)。
電球は眩しすぎるけど明るさも欲張りたいから……
ルイスポールセンのPH 5
Φ50×H26.7cm。15万9500円(ルイスポールセンジャパン)
自慢になるけど、世界一有名な北欧照明といわれてるんだ。どの角度から見ても光源が目に入らず、眩しさを感じさせないのが一番の長所かな。生まれたのは1958年。だけど1925年には基礎となる「3枚シェードシステム」が考案されているよ。当時、デンマークの一般家庭でも普及しはじめていたけど、それが眩しすぎると訴える人が続出したんだ。そこで僕の親ポール・ヘニングセンが、明るいけど眩しくない僕のご先祖を考案。さすがでしょ? ウチの親
Poul Henningsen[ポール・ヘニングセン](1894-1967)
ルイスポールセンと共同製作したランプが、1925年のパリ万博で高い評価を受ける。照明器具の他、建築や家具デザインでも才能を発揮。文筆家・編集者としても活躍した。
日本の折り紙をヒントに生まれたシェードがすべてのはじまりでした
レ・クリントの「サイナスライン」ペンダント172A
Φ33×H31cm。7万7000円(レ・クリント)
それまでも1枚の紙やプラスチックシートを折って、芸術性の高いランプシェードを作るのが得意だったみたい。デザインはどれも直線的だったけどね。そんななか曲線的なデザインを提案したのがポール・クリスチャンセン。僕の創造主さ。曲線的なんていうと、すぐ自然物から着想を得たと思われがちだけど、僕の創造主は違うね。数学の関数のグラフに登場するサインカーブの曲線をデザインに採り入れたんだ。見てよ、光の陰影が綺麗じゃない?
Poul Christiansen[ポール・クリスチャンセン](1947-)
デンマーク王立芸術アカデミー建築科で学ぶ。代表作はサイナスラインシリーズ。関数の正弦曲線を集めて形作ったランプシェードが、発表から50年を経た今もベストセラー。
自慢は純銅製のシェード。知る人ぞ知る幻の姿で見参!
フリッツ・ハンセンのオリエント
Φ50×H54cm。14万6080円(フリッツ・ハンセン)
どうよ? この雫みたいなフォルム。光源が見えにくいから眩しくないし、なにより電気が灯ってなくたってサマになると思わない? 1963年にヨー・ハーマボーがデザインしてくれた僕、じつは一度姿を消したことがあるんだ。そう、廃番になってね。もはやこれまで、と覚悟を決めていたんだけど、2013年にまさかの復刻! それもオリジナルにはなかった純銅製での返り咲き。経年変化で味がでる素材だから、長~いお付き合いをお願いします♪
Jo Hammerborg[ヨー・ハーマボー](1920-1982)
銀細工師として修練を積んだ後、デンマーク王立芸術アカデミーで学ぶ。1957年ランプメーカー「フォグ&モループ」のチーフデザイナーに就任。1980年まで同社にて勤務。
1960年、デザインホテル生まれ。整然と並ぶ姿は我ながらあっぱれでした
ルイスポールセンのAJ フロア
W27.5×H130cm。18万4800円(ルイスポールセンジャパン)
僕と店頭に並ぶ普通の照明との違いは、生まれながらに役目が決まったってこと。1957年、生みの親であるアルネ・ヤコブセンは、コペンハーゲンに開業する「SASロイヤルホテル(現ラディソンコレクション・ロイヤルホテル)」のために、僕をデザインしてくれた。3年後にホテルがオープンした時、テーブルランプやウォールランプなど僕の兄弟たちもロビーに整然と並んでいたのは壮観だったな。で、同年に製品化され、晴れて一般販売されたんだ
Arne Jacobsen[アルネ・ヤコブセン](1902-1971)
デンマーク王立芸術アカデミー建築科卒。1952年、世界初となる成型合板を用いた背もたれ座面一体型の椅子「アントチェア」を発表。デザイン業界に大きなインパクトを与える。
ぼんやりと光るツヤっとした半球君から見ても未来的でしょ?
ルイスポールセンのパンテラ250ポータブル
Φ25×H34.6cm。21万6700円(ルイスポールセンジャパン)
シェードの内側から下向きに照らされた光をトランペット型ステムが柔らかく反射。なにより光をぼんやり拡散する半円球のアクリルシェードが、ふわっと浮かび上がるようで、なんか未来的でしょ? 1971年にヴァーナー・パントンがデザインしたこのランプが兄だとすれば、僕はさしずめ双子の弟。姿形は兄と同じ、違うのは僕が付属のUSBケーブルで充電するタイプのポータブル型ランプだってこと。屋内のみならず、アウトドアレジャーでも使ってください
Verner Panton[ヴァーナー・パントン](1926-1998)
デンマーク王立芸術アカデミー建築科卒。アルネ・ヤコブセンの建築事務所で働いた後、1955年に独立。世界初のプラスチック一体成形の椅子「パントンチェア」があまりに有名。
僕もスマホも四角くて丸いこの楕円形は“交差点”がルーツです
ピート・ハインのスーパーエッグ
Φ25×H30cm。9万7900円(ロイヤルファニチャーコレクション)
白いシェードと赤いコードの対比に目が止まるかもしれないけど、見て欲しいのは楕円と長方形を組み合わせたような僕のフォルム。〞スーパー楕円〞と呼ぶんだよ。生みの親はピート・ハイン。デンマークを代表する数学者さ。スーパー楕円だけど、じつは照明のために考えられたものじゃないんだ。1950年代後半にストックホルムの交通問題に取り組んでいた時、機能的なロータリー交差点の形として考案されたのが最初。僕って交差点生まれなんだ♪
Piet Hein[ピート・ハイン](1905-1996)
コペンハーゲン大学の理論物理学研究所やデンマーク工科大学で学ぶ。米国イェール大学から名誉博士号を授与される。数学者、哲学者、デザイナー、詩人としても才能を発揮。
※表示価格は税込み
[ビギン2024年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。