特集・連載
“通しか知らない”をサクッと学ぶ[10minutes ヴィンテージ]
「青ボタンのシャンブレーシャツはU.S.NAVY由来モノが多いって知ってました?」
10minutes VINTAGE ヴィンテージ=難しい? ノンノンノン♪ 通しか知らない名品も、目印を頼ればビギナーでも簡単に発掘できちゃうんです。その道のプロが、目指すべきターゲットと、その判別テクをサクッとレクチャー。10分後はあなたもヴィンテージ通! この記事は特集・連載「10minutes VINTAGE」#16です。
青ボタンのシャンブレーシャツ
TEACHER:マッシュ 店長 西口鐘良さん
質実剛健な見た目とは正反対の軽〜い♪着心地から、長らくファッションの定番品として寵愛されてるシャンブレーシャツ。条件反射で“ワーク”というワードを思い浮かべちゃうかもしれませんが、実は青ボタンが付けられているものは“ミリタリー”が出自!
ヴィンテージ市場でも古くからワークアイテムとは区分けされ、より雄々しさを欲す服好きから人気を集めてるんです。「青ボタンのシャンブレーシャツは米国海軍の装備。おそらく、敵に見つかりにくいように身生地と同系色のボタンを使ったと推測されます。」
「’30年代にはすでに採用されていたと思われるんですが、凄いのは今でも作り続けられていること! 細部の意匠は何度か変更されていますが、今なお現役の、ミリタリー色特濃なアイテムなんです」。
息が長〜い理由は陸軍と海軍の違いにもあるそうで、「海軍は陸軍ほどカモフラ柄を必要としないうえ、戦闘服ではなく作業着として開発されたものなので、シンプルなデザインに落ち着いたんだと考えられます。だからファッションとして取り入れやすい。」
「ちなみに1980年代後半からは綿ポリ素材に変わるので、通ウケを狙うなら、それ以前に作られた綿100%のシャツがオススメです」
ワークシャツには白ボタンが使われているモノが多い
淡〜いシャンブレー地と青ボタンのコントラストが◎
U.S.ネイビー
シャンブレーシャツ
’50年代〜’60年代に製作されたと思われる、海軍仕様のシャンブレーシャツ。淡〜いブルーの身生地と深い〜い青ボタンが相性よすぎ。全体が色褪せてグラデがかった、この海を連想させる姿こそ、ヴィンテージ市場でも人気が絶えない理由。ユル〜く着られる長めの着丈も今にジャスト。1万909円(ベクトル 北島店)
青ボタンのシャンブレーの中でも……
完成形の’43年モノを総点検!
年代ごとに仕様が異なる青ボタンシャンブレーにあって、完成形と謳われる1943年製、通称“M-43”の通好みな意匠を総ざらい。
マッシュのU.S.NAVY
M-43 シャンブレーシャツ
通の間でも完成形と称される、M-43の完全復刻版。細部までとことんオリジナルを完コピしているのは、ご覧の通り。本物を知るための教材としても、これ以上のシャツはなし1万4800円(マッシュ)
①長くてシャープな衿がクラシカル
大戦型と呼ばれる、1940年代製品の特徴は、長くて鋭く尖った衿先。衿周りがダブルステッチで頑強に縫製されているのも特徴的だ。
②コントラクトナンバーはスタンプ
軍用品の証であるコントラクトナンバーは、衿の内側にサイズ表記と一緒にスタンプで記載されている。
③フラップなしのホームベース型ポケット
④渋み出まくりの5.3オンスシャンブレー
タテ糸にはインディゴ染めされたムラ糸を、ヨコ糸には未晒し糸を使用。中肉な5.3オンス生地も大戦時の青ボタンシャンブレーの特徴だ。
⑤玄人ウケのいい空環と三角マチもバッチリ完備
裾の両側を三角マチで補強するなど、仕立てはすこぶる丁寧。糸始末を省略した空環仕様も、古きよき意匠として通から愛されている。
2つ穴の青ボタンは年式が古い証拠
マッシュ 店長
西口鐘良さん
330平米! の広大な店内に、世界中から厳選した約3万点のミリものを揃える、大阪の名店。その長がストックする知識は広辞苑ばり!
[ビギン2020年7月号の記事を再構成]写真/上野 敦(プルミエジュアン) 文/黒澤正人 イラスト/TOMOYA