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glafitのGFR-02 イメージ写真
※写真は本記事の新車両区分に該当しない、現行製品のイメージ写真

数年の間に世界を一変させる可能性を秘めた「DX(デジタルトランスフォーメーション)」にフォーカスする連載「プロジェクトDX」。時代の変化やニーズにDXを通じて応える優れたサービスの開発者やその現場を訪ね、未来を変える可能性やサービスに込められた思いを紹介していきます。

今回取材したのは、気鋭のモビリティメーカー「glafit」とシェアモビリティプラットフォームを提供する「OpenStreet」の両代表。道路交通法改正によって生まれた新車両区分「特定小型原動機付自転車」に該当するモビリティを共同で開発。“自転車のように手軽に、バイクのように遠くへ楽しく移動ができる”新しい世界を実現するべく奮闘するお2人に、開発中の次世代モビリティと、そのシェアリングサービスによっていかに移動が変わるのか?について伺いました。

プロジェクトDX 〜挑戦者No.6〜「glafit」×「OpenStreet」の次世代モビリティ開発

脱炭素の必要性が声高に叫ばれ、健康意識も高まる昨今、急成長を遂げたものに自転車のシェアリングサービスがあります。

ハローサイクリングのステーション

都市部ではお馴染みになりつつあるハローサイクリングのステーション

「弊社は創業からの6年で、シェアサイクルのステーションをゼロから6100か所に増やしました。ユーザーも現在では200万人に増えています」とは、取材した『OpenStreet』CEO 工藤智彰さんの談。ゆくゆくは10万か所にステーションを増やしたい(!)というから、その勢いとサービスの可能性を理解していただけるでしょう。

街中をちょっとそこまで移動するなら、自転車はこれ以上ない便利な移動手段。マイカーの需要が下がるなか、好きなときに任意の場所で借りられて、目的地近くの任意の場所に返却することができるシェアリングサービスが人気を博すのは、納得の結果といえます。

Open Street 代表取締役社長CEOの工藤智彰さん
国内最大級のシェアモビリティプラットフォーム「HELLO CYCLING」や「HELLO MOBILITY」を運営する「OpenStreet」代表取締役社長CEOの工藤智彰さん。「毎朝、利用者の方とすれ違う度に、弊社のサービスがお客様の生活の一部になっていることを嬉しく思います」。

そんななか、利便性で自転車を凌駕しうる、かつてない移動手段が生まれる(かもしれない)ニュースが舞い込みました。2022年の4月に道路交通法の改正案が可決され、これまで50ccと125ccの2種類だった「原動機付自転車」に、「特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)」という、16歳以上であれば免許不要、ヘルメットも努力義務という新車両区分がつくられることとなったのです。

特定小型原付はサイズW190×D60cm以内と、大きさが普通自転車と同様の規格。電動機の定格出力は0.6kW以下。車道も歩道も走行が可能で、車道走行時は時速20km、歩道走行時(※)はシニアカーと同等の時速6kmに制限されています。

この新車両区分を利用して“自転車のように手軽に、バイクのように遠くへ楽しく移動ができる”まったく新しいモビリティを作りたい──。そんな想いの下にタッグを組んだのが、気鋭モビリティメーカー「glafit」と前出のシェアモビリティプラットフォームを提供する「OpenStreet」。モノ作りのプロとシェアリングのプロが次世代モビリティを共同開発、網の目のように張り巡らせたシェアリングプラットフォームを通じて世の中へ出す──。そんなドリームタッグにより、新しい移動手段が一気呵成で社会に浸透することが期待されます。

※停車時に歩道通行モードへ切り替えなくてはならず、走行時は識別点滅灯火が必須などの条件あり。

法整備から取り組んで生まれた新車両区分!

glafit 代表取締役CEOの鳴海禎造さん
「glafit」代表取締役CEOの鳴海禎造さん。「『OpenStreet』さんは自治体や事業パートナーさんとともに、広大なシェアリングサービスのインフラを築かれてきた企業。モノ作りに寄った弊社と理想的な役割分担ができると感じ、以前より協業したく思っていました」。

新車両区分の新設を巡っては布石があり、「glafit」CEOの鳴海禎造さんは内閣府の「規制のサンドボックス制度」という規制改革を推進する行政の取り組みを利用し、電動バイクと自転車を切り替えられ、車道も歩道も走行できるモビリティ「GFR-02」(※写真)の認可を、行政へ直接働きかけることで得た経験がありました。

glafitのGFR-02
一台で電動バイクと自転車を切り替えて使える「GFR-02」。ボタン操作でナンバーを覆い、自転車モードであることを表示する後付けオプション「モビチェン」(2万7500円。工費別途必要)を着ければ、カンタンに歩道での自転車走行も可能に。27万5000円(glafit)https://glafit.com 要原付免許。

新車両区分で歩道の走行が可能となったのは、まさしくこのときの法解釈がベース。また鳴海さんは今回の道路交通法改正案を取りまとめる国土交通省や警察庁の委員会にも出席し、車道走行時の時速を20km以下と制限するのなら、自転車と同じようにヘルメットも努力義務とするべきではないか?など、規制緩和を得るために積極的に意見を述べてきたといいます。

モノづくりのために必要とあらば、法整備から関わる──。こうしたパッションと行動力が、楽しく、便利な、かつてない体験を我々にもたらしてくれる事実。

我々の生活が、こうした積み重ねで便利にアップデートされてきたこと、それを知らずにその恩恵だけを享受してきたことに気づかされ、自分が恥ずかしくなるのは筆者だけでしょうか。

glafitのGFR-02
約19kgと軽量で、コンパクトに畳めるのも「GFR-02」のスゴいところ。製品は和歌山の提携工場内の生産ラインで出荷前検査が行われ、顧客の手元へ届けられる。

第一弾は“ペダルのない電動自転車”!?

さておき、特定小型原付はサイズこそW190×D60cm以内と決まっているものの、カタチは自転車っぽくても、キックボードっぽくても、セグウェイっぽくてもOK。なんならかつてF-1で皆のど肝を抜いた、ティレルの6輪車っぽくても、規定さえ守っていればレギュレーションには反しません。そんな自由度の高さも興味深いところですが、開発中の「glafit」×「OpenStreet」による次世代モビリティ第一弾はずばり、最もスタンダードな“ペダルのない電動自転車型”だといいます。理由は安全性から。

「日本の道路では、結構な頻度で車道から歩道に乗りあげることが予測され、その度に段差を超えなくてはいけません。すると、ある程度のタイヤサイズや車体の大きさがないと危険。今回『glafit』さんに共同開発のお声掛けをしたのは、既に車道も歩道も走行可能なモビリティを製作されている実績があったから。これをベースに開発すれば、最もベストなカタチで世の中に広められると確信したからです」と『OpenStreet』工藤さん。

その安全性について『glafit』鳴海さんは、担保するために技術的な改良を重ねるのはもちろん「新しい交通ルールの周知を他人任せにせず、自分たちで積極的に行うことが大切」と話します。「たとえばシェアリングの際にアプリ上で喚起を促したり、製品を買ってもらうためではなく、新しい法律の理解を深めるための試乗会を開いたり。最終的には学校教育の中に交通ルールの説明を組み込んで貰うことも必要だと思っています」。

glafitの鳴海禎造さんとOpenStreetの工藤智彰さん

業務提携発表の際、「glafit」の「GFR-02」とともにツーショットでパチリ。

ちなみに特定小型原付の車道通行時の制限時速は20km、歩道通行モードの制限時速は6kmの遵守が義務づけられていますが、従来の原付の制限速度が乗り手に委ねられている(原付の車両自体は制限速度の30km/hより加速できるのがほとんど)のに対して、特定小型原付は免許が不要な代わりに、車両に制限速度の遵守が委ねられている点が大きく異なります。そのため、開発にあたってはいかにこの制限速度を遵守しつつ、効率化を図れるかがカギになると『glafit』鳴海さんは語ります。

「時速20kmを超えて加速してしまうのはアウトなので、それを超えないようにするのは当然ですが、かといって安全マージンを取って15kmまでしか加速できないようにしたら乗り物として不便ですよね。だから、制限の中で性能を使い切ることが大切。ギア比からバッテリー、モーターコントロールユニットまですべてを最適化しないといけないので、そこがちょっと大変かなと思っています」。

両社が目指す「所有とシェアのシームレスな世界」とは?

glafitの鳴海禎造さんとOpenStreetの工藤智彰さん
異分野の企業がタッグを組むからこそ、かつてないものが生み出せる。

“自転車のように手軽に、バイクのように遠くへ楽しく移動ができる”かつてないモビリティを──。そんな理念とともにもう1つ、「glafit」と「OpenStreet」が目指すその先には、両社なればこそ実現しうるビジョンがあります。それが“所有とシェアがシームレスに繋がる世界”。「OpenStreet」工藤さんは、そのココロを次のように語ります。

「『glafit』さんと共同開発したモビリティを、今日本で6100か所ある我々のステーションに配備し、皆さまに乗っていただく。これがシェアですね。一方でたとえば、モビリティを“所有”されているオーナーの方に、その付加価値として我々のステーションにそれを駐輪することができたり、出先でシェアリングサービスを利用できるなどのサービスを展開する。これが我々の思い描く“所有とシェアがシームレスに繋がる世界”です。所有とシェアは対立軸で扱われがちなのですが、そうではなく所有者だからこそシェアのメリットも最大限に受けられ、シェアによってモビリティに触れた方が所有したいと思えるようなサービス──。これを、ステップ バイ ステップで提供できたらと思っています」。

冒頭で述べたとおり、ステーションもゆくゆくは10万か所に増やしていく計画。バッテリーの充電は当面、オペレーターによる手動を考えていて、将来的にはポートとモビリティの双方に自動充電機能を実装したいと工藤さんはその展望を語ります。なお、共同開発のモビリティは、2024年のローンチを予定しているとのこと。全容が明らかになるのも、すぐ先の話です。

特定小型原付区分を取り決めた改正道路交通法は、2023年の7月1日に施行。合わせて新しい道路標識ができるなど、いま、決して大袈裟でなく、現実に移動手段の常識が変わろうとしています。そして「glafit」と「OpenStreet」が推し進める“所有とシェアがシームレスに繋がる世界”の実現は、このゲームチェンジをさらに加速させるパワーを秘めている──。移動の利便性が増すばかりでなく、非効率なクルマ移動が減り、SDGs、脱炭素という我々に突きつけられた喫緊の課題解決にも付与することは間違いないでしょう。

……ってなマジメな考察もさること、両CEOが熱く語るモビリティの未来に、今すぐにでも乗ってみたい!というワクワクがバクバクに止まらなかった取材班一同。皆さんにも、この少年的純粋な感動が伝わっていれば幸いでございます♡

※表示価格はすべて税込みです。


文/秦 大輔

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