特集・連載
ディープな靴好き5人が語る「今あえて推したい本格靴」9選
本格革靴会議 「モノを大事に」なサステナ社会だし、物価高で「本当に永く使えるモノ」が欲しいし、「今こそ本格靴が必要!」と強く思うからこその珠玉の革靴100連発。おいそれと買える値段じゃないものも多いけど、だからこそ詳細解説したいワケです。ってことで、初心者もツウも納得する「一生靴」をここで見つけてください! この記事は特集・連載「本格革靴会議」#10です。
4名の靴賢者+編集長イチカワの靴好き5人で語ったら、ディープな靴好きならではの“今あえて推したい本格靴”の話がいっぱい聞けました。ここではそれを一気に紹介!
上段/左から、イラストレーター 綿谷 寛さん、ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター 日髙竜介さん 下段/左から、スタイリスト 武内雅英さん、編集・ライター 小曽根 広光さん、ビギン編集長 イチカワ
「マックイーンのマッドガード、じつは『ハットン』というブランドだという説があるんだよ」―綿谷さん
Hutton[ハットン]
マッドガード
ノーサンプトンのハットン社がかつて特許を取得していたオリジナルのマッドガード製法のチャッカが、イタリア生産で復活。当時スニーカーのようだと評された履き心地も完全再現された。7万5350円(ゴゾベーション)
(Hutton/ハットン)
似たようなマッドガード製法の靴は他にもあるけれど、本家はハットンの「プレイタイム」というモデル。スティーブ・マックイーンは公私ともこの細身チャッカを愛し、映画『ブリット』の中で履いてた靴も、じつはコレだったらしい。最近木型も製法も50~60年代当時のまま復活したので、マックイーン好きは要チェック。(綿谷)
「不動産営業の方にとにかく売れる靴があるんです」―日高さん
PERFETTO[ペルフェット]
パラティーノ18
イタリア靴を彷彿させる美麗ラストに、耐久性のあるグッドイヤー製法を合わせた。しかもアッパーはイルチアカーフ! 人気も納得のブランドの大定番だ。5万6100円(ワールド フットウェア ギュラリー 神宮前本店)
意外かもしれませんが、当店ではいまだロングノーズ靴に一定の需要があるんです。なかでも圧倒的に売れているのが「ペルフェット」。価格が手頃な割にイタリアの名門靴のような高級感をたたえているからでしょう。内見の際にお客様に靴を見られる機会が多いせいか、不動産営業の方に支持されています。(日高)
「カルミーナは、香港の名店『アーモリー』で高い評価を受けてます」―小曽根さん
CARMINA[カルミーナ]
Uチップ80414
初期ラスト「フォレスト」のノーズ周りをアップデートした「ロベルト」を採用したUチップダービー。指回りに程よくゆとりがあり、快適な履き心地を実現。グッドイヤー製法。7万9200円(トレーディングポスト 青山本店)
香港の「アーモリー」に以前訪れたとき、ずらりとカルミーナが並んでいたのが印象的でした。同店は服飾業界人なら誰もが知る名店。さまざまな国の“一流”をMIXしながら独自のクラシックスタイルを提案しています。そこで認められるくらいですから、実力は推して知るべし。ボク自身スペイン靴の最高峰と感じています。(小曽根)
「そろそろ、クラシックなブーツがいいなと思うね」―武内さん
John Lobb[ジョンロブ]
ウィック
ビスポークアーカイブからインスパイアされた希少性の高い一足。アンスラサイトのダブルバックルが、グッと男らしいアクセントに。軽量で防水性に優れたソールを装着。11月発売予定。23万1000円(ジョン ロブ ジャパン)
SCHNIEDER RIDING BOOTS[シュナイダーライディングブーツ]
ジョッパーブーツ
ロイヤルワラントを授与された、英国乗馬ブーツの大傑作。現在はアッパーとウェルティングを英国のシュナイダーライディングカンパニーが行い、その後完成まではユニオンワークスが担当。17万6000円(ユニオンワークス 青山)
ボクがブーツ好きということもあるけど(笑)、ローファーやプレーントウといったオン・オフ兼用短靴に飽きた人が、次にブーツに着目する予感。実際、昔ビギンでも紹介していたようなスーツにジョッパーズを合わせるスタイル、今やったらかなり新鮮だと思いませんか? 秋冬は是非みなさん一緒にブーツを履きましょう。(武内)
「ラッセルのトリプルヴァンプかろうじてまだあるらしい」―イチカワ
Russell Moccasin[ラッセルモカシン]
5アイレット スポーティング クレイチャッカ トリプルヴァンプ SP
トリプルヴァンプとは、油を染み込ませた3層の革で足を包むように仕立て、クッション性と防水性を高める製法のこと。写真はウォルナッツ別注で、アッパーはクロムエクセル。14万8000円(ウォルナッツ東京店)
最近あまり店頭で見かけなくなったので、“ついに生産中止か?”なんて噂も飛びかってるトリプルヴァンプですが、じつは特別な関係性のお店のオーダーのみを受け付けているそう。とはいえ、交渉は非常に難しく、毎度“そこをなんとか”と無理に頼み込んでいる模様。てなわけで、運よく見かけたら即買いを推奨します。(市川)
「雲上靴の今も知っておきたいよね」― 一同
時計におけるパテック フィリップなんかと同じく、本格靴にも雲上系ブランドが存在します。下に紹介した3ブランドなどがそうですね。ビスポークのテクニックもふんだんに投入され、アートピースのようなオーラをたたえています。おいそれと買える価格ではありませんが、靴好きを自認するなら、それぞれの代表作の特徴ぐらいは押さえておきましょう。(日高)
Corthay[コルテ]
アルカ
小ぶりの羽根により、甲からつま先にかけての傾斜や、ベグデーグル(鷲のくちばしの意)と呼ばれるトウ周りが際立つ。シャープさと優雅さが共存する稀有な靴だ。21万4500円(阪急メンズ大阪 1F紳士靴売場)
GAZIANO&GIRLING[ガジアーノ&ガーリング]
サヴォイ
英国靴ながらイタリア靴のような色気も併せ持つのがここの特徴。今作の変則的なブローグはダイヤモンドキャップトウと呼ばれ、じつは1930年代の靴に見られるクラシックな意匠だ。23万1000円(伊勢丹新宿店)
ANTHONY CLEVERLEY[アンソニークレバリー]
ド・ジバンシー
ファッションデザイナーのジバンシーがオーダーした靴をそのまま製品化したとされるモデル。履き口からまっすぐ伸びる羽根や垂直に交わるステッチラインなど、個性的なディテールが光る。26万4000円(伊勢丹新宿店)
ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター
日髙竜介さん
[愛靴:WFG×オリエンタル ジョセフ Ⅱ]
靴好きが高じて製薬業界から転身。古今東西の名靴に足を通してきたが、最近のお気に入りは写真のモンク靴。「スリッポン感覚で気軽に履け、撥水スエード&ラバーソールで雨にも強い。デザイン的にも幅広い装いに合うので、気がつくとこればかり履いています」
編集・ライター
小曽根 広光さん
[愛靴:ジェイエムウエストン ゴルフ]
兄弟誌「MEN’S EX(メンズ・エグゼクティブ)」のエースとして活躍するほか、多数の雑誌やWEBでも執筆。クラシックな装いと靴が好み。「じつは昔はモード好きでしたが、12年前にゴルフを買って徐々にクラシック志向に。“今のボク”を作った大切な靴です」
スタイリスト
武内雅英さん
[愛靴:パラブーツ ワークブーツ]
ドレスにもカジュアルにも強く、全編集部員が頼りまくり。撮影現場ではいつもサンダル履きだが、名靴を多数所有し、とくにブーツのコレクションはかなりのもの。「このワークブーツは廃番となると知って慌てて購入。ワークブーツなのに革が柔らかで極上の履き心地です」
ビギン編集長
イチカワ
[愛靴:ブルックスブラザーズ タッセルローファー]
若い頃から給料の大半を靴に注ぎ込んできた靴バカ。このタッセルローファーはオールデンがブルックスのためにOEMしたもの。「日本ではモディファイドのVチップが人気ですが、本国ではこのアバディーンラストのタッセルも大定番。所有オールデンの中で一番思い入れがあります」
イラストレーター
綿谷 寛さん
[愛靴:山陽山長 岸三郎]
ご存じ、日本で最も忙しいファッションイラストレーター。この日お持ちいただいた愛靴は、ご自身がデザインを担当し、3年前に50足限定で発売されたもの。「じつは古いロブ・ロンドンのカタログにあった靴から着想。ギリーのホワイトバックスって珍しいでしょ?」
※表示価格は税込み
[ビギン2022年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。