特集・連載
2019年頃HITチャート♪:山から街に舞い降りる宿命
ラルフ・ローレンも川久保 玲も舌鼓を打った“トロ”サロモンの魅力とは?
傑作スニーカーの超現代ヒストリー '90s~2010年代編 1900年代から始めるのがスニーカー史のセオリーですが、今回は雑誌ビギン創刊の1988年を起点に超現代をフィーチャー! この記事は特集・連載「傑作スニーカーの超現代ヒストリー ’90s~2010年代編」#16です。
その萌芽を知る関根さんにサロモンの魅力を聞いた
今、最もファッション感度の高いスニーカー!!
数年前、ラルフ・ローレン氏やコム・デ・ギャルソンの川久保 玲氏がともに履いた、見慣れぬスニーカーが一部のファッショニスタの話題をさらいました。そのシューズはハイスタッドなアウトソールで存在感のあるボリュームながら、いわゆるダッドシューズより何倍もスピード感を感じさせる近未来的なデザイン。
それでいてランニング系のハイテクスニーカーとはひと味もふた味も違う、唯一無二の存在感を放っていた。それがサロモンです。
タキシード×サロモン姿にBeginも度肝を抜かれた
2018年のCFDA賞受賞時にサロモンを着用
「2015年頃でしたでしょうか。ヨーロッパ出張時に、展示会やランウェイで行動をともにするバイヤーやジャーナリストたちが、こぞってサロモンを履き始めたんです」と、関根さん。
「パリのマレ地区にザ・ブロークン・アームというショップがあるんですが、ここで取り上げられたブランドは必ずと言っていいほどブレイクすると、ファッション業界では有名なんです。で、ちょうど2015年、ザ・ブロークン・アームがサロモンのコラボレートモデルを展開し始めたんです。それがまた抜群にカッコよくて!」。
「ほどなくして気鋭のデザイナーズブランドがランウェイで足元にサロモンをチョイスする例も散見されるようになり、ウチでもバイイングしたいなと。するとタイミングよく、アドヴァンスドラインの前身となるブラックエディションというコレクションが発表されて。よろしくお願いしますと二つ返事でした」。
「アドヴァンスドは、数あるアーカイブからの復刻や色展開がとにかくハイセンス。この新ラインをきっかけに、一気にサロモン人気に火がついた印象です」
SALOMON[サロモン]
XT-6
2013年当時の最新スペックモデルは、現在はタウンユースも睨んだアッパーデザインにて展開。スキーブーツで培ったクイックレースシステムや、独自開発ラバーのコンタグリップなどのハイスペックさがハイファッションに。2万7500円(サロモン コールセンター)
サロモンと言えば、1947年にスキーのヴィンディングメーカーとしてスタート。バブル時代にはスキー板で一世を風靡し、2010年代に入ると欧州トップシェアのマウンテンシューズとして地位を確立していきました。
それが今、気がつけばファッションピープルの足元でブレイクしているわけです。まるで寿司ネタの新たな花形となったサーモンのように。
ではなぜ、サロモンが脂ののったトロサーモンのような“旬の味”へと躍り出たのだろうか。
「ちょうど気候変動が叫ばれ出し、自分をプロテクトしようというムードが醸成された時期と重なります。各ブランドがハイテク素材やギアをクリエイションに取り入れるようになり、それに合うユーティリティ性の高いシューズ=サロモンだったのかなと」。
ちなみに、関根さん自身も最初はその個性的なデザインに惹かれたそう。
「でもいざ履いてみると、フィット感や安定性といった機能の高さに驚かされました。パリの石畳を歩き回ったときも全然疲れなかったですし」。
その快適性は山業界でファスト&ライトな新概念を持ち込んだ、イノベーターならではのエンジニアリングに裏打ちされたものである。
「靴紐を瞬時に締められるクイックシューレースや、足の甲全体を均一にホールドするエンドフィットシステムなど、独自開発された各々の機能が、工学的に美しく一体化されているんです。一度履いたらその履き心地のよさにヤミツキになって、リピート買いする人も非常に多いんですよ」。
つまり、クリエイティブと信頼感を兼ね備えたプロダクトであり、そこにデザイン以上の価値を見出す人が頻出したと言うわけです。ブラックの色使いが巧みで、独特のボリューム感もトレンドにマッチした。
「無二のデザイン性を備えたトレイルランニングシューズの他、軽量のトレッキングブーツやリカバリーサンダル、一般に市販されていないフォーセスというミリタリー向けのラインなども展開。ハイファッションにも、ストリートにも、スポーツカジュアルにもハマる懐の深さは、この豊富なバリエーションによるところも大きいでしょう」。
サロモンのXT-4 アドヴァンスド
「またバイヤー的視点で言うと、例えばXT-4アドヴァンスドのタイダイモデルのように、シーズンごとに必ずトピック的なモデルがあるのも興味を惹かれますね」。
「高機能なわりに価格も良心的ですし。だからなのか、毎年全モデルを購入するお客様もいますよ。こんな美味しい万能スニーカー、ちょっと他には思いつきませんね!」
International Galley Beams
メンズバイヤー 関根陽介さん
「アウトドアギア出自のハイテクシューズは当時、新鮮に映りました」
1974年生まれ。入社時より同ショップにて販売員を務めたのち、現職。音楽など、カルチャー多方面に造詣が深く、今日の「服好きが集うギャラリー!」を築いたキーパーソン
2013年:欧州でファストハイク需要高まる
2015年頃:ファッション界で影響力のある「ザ·ブロークン·アーム」がサロモンを別注
2018年:ラルフ・ローレン氏がサロモンを履いて公の場に登壇し、服好きの間で本格的にブレイク(コム・デ・ギャルソンの川久保 玲氏も愛用した)
ファッション向けライン「サロモン アドヴァンスド」を始動
2019年:別注モデルが普及し、街履きとして浸透
2022年:マグロを超えたサーモンに負けじとサロモン人気も継続!?
現在は街履きとして浸透
2010年代、寿司ネタの人気No.1がサーモンに。一方、脂ののったサロモンも安定して人気だ。
ギャラリーの人気サロモンBEST3
《彩旬ネタ》
SALOMON[サロモン]
XT-4 アドヴァンスド
ベースはダウンヒルに威力を発揮していた往年のトレイルラン向け定番モデル。シーズナルカラーである鮮烈なタイダイで。2万9700円(インターナショナルギャラリー ビームス)
鮮度の高いタイダイを旬のサロモンで取り入れました
カラフルなデザインが特徴なので、服はモノトーンで。ソールのパーツの色や質感を光沢のあるレザーパーカとリンクさせています。モードスポーツテイストには最高のネタです。
《復刻ネタ》
SALOMON[サロモン]
レイドウインド アドヴァンスド
「アラフォー以上の人が脊髄反射するクラシック顔まで揃うなんて」と関根さん。1999年登場のアドベンチャーレース向けモデル。2万4200円(インターナショナルギャラリー ビームス)
《最速ネタ》
SALOMON[サロモン]
S/LAB パルサー ブラック
アスリート向けの現行トップモデルが黒き姿で登場。アッパーの一部やレースにケブラー繊維が採用され、テックなモードさ全開。2万7500円(インターナショナルギャラリー ビームス)
その他アウトドアメーカーも続々と街に
イエローが底光りするアスレチックなカラーリング
COLUMBIA MONTRAIL[コロンビア モントレイル]
F.K.T.ライト
山用のプロテクションが削ぎ落とされ、レース仕様のライトウエイトに仕上がっている。街でも快適な一方、グリップ力には秀でて雨の日でも安心。1万4850円(コロンビアスポーツウェアジャパン)
スイスアルプスからトーキョーシティまで
ON[オン]
クラウドベンチャー ウォータープルーフ
純白でも乳白でもない、都市にも溶け込む絶妙なホワイトカラーはさすがオン。欧州アルプスの天候に対応するために搭載された防水性能を、雨天時の備えに。1万9850円(オン・ジャパン)
2000年代初頭の名品が鮮やかに復刻
INOV-8[イノヴェイト]
フライロック345 GTX CD V2
アーカイブと最先端機能、ファッションを融合させたニューヴィンテージシリーズの一足。張り感に秀でたコーデュラナイロンで、スタイリッシュなプロポーションに。2万4200円(デサント トウキョウ)
名前通りユニークな通気性と見た目が自慢のスニーカーサンダル
KEEN[キーン]
ユニーク スニーク
アッパーをコードで形成した名作、ユニークに肉厚なミッドソールをハイブリッドしてスニーカー化した人気作。全体のトーンを揃えたモデルを選べば、より街向きに履ける。1万4850円(キーン・ジャパン)
※表示価格は税込み
[ビギン2022年3月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。