「2010年代「白スニーカー」が楽ちんスーツとともに会社にやってきた!」の記事で白スニのビジネス進出についてお伝えしましたが、なぜここまで広く愛されるのか。ユナイテッドアローズの上級顧問を務めるファッション界のご意見番、栗野さんにお話を聞きました。

ユナイテッドアローズ 上級顧問クリエイティブ ディレクション担当 栗野宏文さん

「ビジネスはもちろん、お葬式以外なら、何でも履けますね」―栗野さん

スーツにスニーカースタイルが代名詞の栗野さん。なぜスニーカーを履くようになったのか。

「この仕事は自分の目で見て情報をキャッチすることが大事。そのため街をよく歩くので自然と足元はスニーカーが多くなる。実際、電車内で見ているとここ数年でスニーカー通勤の人が増えましたね」。

その背景を栗野さんはこう分析する。

「東日本大震災の影響が大きかったと思う。多くの帰宅難民が生じた経験から、会社にスニーカーを置いておく風潮が生まれ、そうしているうちにスニーカーで通勤してしまおう、と。社会の常識や暮らし方の変化が、スニーカーのビジネス化に大きな影響をもたらしたと思います」。

一方で、スニーカーの持つ魅力についても語る。

「一年のうち300日はスニーカーを履いていますが、なかでもニューバランスのCRT300など白スニ率が高い。履いていて快適だし、何にでも合うシンプルさが、ビジネスでも受け入れられている所以でしょう」。

「極論、お葬式以外なら何でもいけますし。カジュアルな結婚式なら、タキシードに白スニなんて素敵ですよね。革靴と違い、スーツの色と合わせて履き分けられるのもいい。今日のようなカルーゾのスーツにM990を合わせたネイビーのワントーンは、まさに今の気分です」。

日本で広まるスニーカーのビジネス化。世界では? 

「日本特有のカルチャーだと思います。そもそも欧米では服とスニーカーの相性を考える感覚があまりない。その点、日本の男性はよく考えていてお洒落。有名なザ・サルトリアリストスコット・シューマンも日本人を撮ることが多いのは、そういった感性に惹かれる部分があるのでしょう」。

スニーカーは今後、さらにその活躍の場を広げるだろうと栗野さんは言います。

「2010 年代以降、イージーにモノを買わなくなったのはいい傾向です。90年代のスニーカーブームでは、流行のモノじゃないと恥ずかしいという風潮があったり、リセール狙いで買う人も多かったので。あれほどの流行がなくなってむしろ、お洒落の解が一つではなくなり、自由に楽しめるようになった。ファッションの本来の姿が取り戻されたように感じます」。

「今後は社会が求めることと関係なく、スニーカーをこう履きたいから履くという人が、より増えるのではないでしょうか」

おせっかいな解説
 
●帰宅難民
2011年に起こった東日本大震災では、都市部の交通機関が完全にマヒ。徒歩での帰宅を余儀なくされた多くの人が、道にあふれる事態となった。
 
●CRT300
1970年代に登場したニューバランスのコートシューズ「CT300」をベースにした復刻モデル。軽量で屈曲弾性に優れるREVLITE Xソールを採用。
 
●カルーゾ
イタリア・パルマ発の老舗スーツブランド。イージーセットアップ普及の陰で、スーツが見直される昨今、人気再燃中のブランドだ。
 
●ザ・サルトリアリスト ●スコット・シューマン
ニューヨークのカメラマン、スコット・シューマンが運営するストリートスナップのブログ。年齢、性別、人種にかかわらず世界のお洒落さんが登場する人気ブログ。我らが栗野さんも掲載されているので要チェック。
 
●リセール
転売の意。1990年代当時、社会現象になるほど人気だったエア マックス95やエアジョーダンが、ウン十万円の高値で転売されていた。

 

ワントーンコーデが今の気分です

ユナイテッドアローズ 上級顧問クリエイティブ ディレクション担当 栗野宏文さん

 

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ユナイテッドアローズ 上級顧問クリエイティブ ディレクション担当 栗野宏文さん

ユナイテッドアローズ
上級顧問クリエイティブ ディレクション担当
栗野宏文さん

1953年生まれ。ユナイテッドアローズ設立に参画し、PR、バイイング、クリエイティブディレクションなどの責任者を歴任後、現職に。スニーカーはニューバランスが好きで30足ほど持っているとか。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2022年3月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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