特集・連載
半分に割ったらお国柄まで見えてきた! 大定番買いたい(解体)SHOW
クロケット&ジョーンズ、オールデン、パラブーツを徹底研究 トレンドレスな時代だからこそ、タイムレスな一足が欲しい! という時代の必然もあり、流行に左右されないクラシック靴が最注目される昨今。そこで英国、アメリカ、フランスを代表する名門3ブランドの魅力をあらためて検証します! この記事は特集・連載「クロケット&ジョーンズ、オールデン、パラブーツを徹底研究」#06です。
英・米・仏の3大靴の履き心地のよさは何に起因するのか。それを探るため、各々の代表作を解体! 結果3社で靴作りのアプローチがかなり異なることが判明しちゃいました。
Crockett & Jones Audrey
“品格”のグッドイヤーウェルト製法
解体したのはC&Jを代表する傑作ストレートチップ「オードリー」。剛健なグッドイヤーウェルト製法で作られているが、コバの張り出しを抑えたドレッシーな仕上がり。
山盛りで充填されたコルクや、返りのいい樫の木製シャンクなど、英国ノーサンプトンのトップファクトリーに相応しい快適な履き心地をもたらす配慮が随所に見られる。
また今靴はC&Jの上級ラインであるハンドグレードコレクションの一足だけに、“オークバークソール”(樫の木のチップを使用し、長時間かけてなめした革を使用した外底)や、カーフレザーのライニングなど各部に贅沢な素材を採用しているのも特徴だ。



Alden 990
“無骨”なグッドイヤーウェルト製法
オールデンはプレーントウの「990」を解体。
ウェルトが踵まで一周する360度グッドイヤー製法や分厚いソールが独特の無骨な雰囲気を作り出しているが、こうして半分に割るとライニング、中底、本底、ウェルトに足馴染みのいいベジタブルタンニン鞣しのレザーを用いていたり、足型を素早くプリントすべく練りコルクを敷き詰めたりと、かなりコンフォートを意識した作りであることがわかる。
こうした馴染みのいい素材と適度な捨て寸により、つま先には“トウスプリング”と呼ばれる反り返りが生まれ、これも快適な歩行性能を叶えるポイントになっているようだ。



Paraboot Michael
“剛健”なノルヴェイジャン製法
パラブーツを象徴する「ミカエル」は、グッドイヤー以上の堅牢性を誇るノルヴェイジャン製法を採用し、さらにL字型のウェルトを二重にステッチすることにより防水性を高めた、まさにガチな登山靴の作りを踏襲。
ギザギザのウェルトがいかにも無骨な印象だ。また独特なのがソールの構造で、インソール内部にコルクの代わりに、波状の突起をつけたラテックス製の“フィン”を仕込んでいるのだ。
これがバツグンのクッション性をもたらし、長時間ガンガン歩行しても疲れにくい秘密のひとつに。自社でラバーソールを製造できる稀有なメーカーならではのアプローチだと言えるだろう。



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[ビギン2019年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。