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服飾べしゃり力が身につく【小林学の小噺学】
ハミルトンの「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ」に見る革新性について
服好き同士のしゃべり場で日夜繰り広げられる服飾トーク。知らなくても生きていけるネタを披露し合う瞬間こそ、服好きには至福のジ・カ・ン。ということで、業界屈指の服飾べしゃり力で洒落者を引き込むオーベルジュの小林さんを指南役に迎え、即話したくなる小噺をレッツ・スタディ♪
服飾漫談師ことオーベルジュ デザイナー小林学さん

今回のお題はハミルトンの新作「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ」。そもそも服好きにとってのハミルトン像とは? そして歴史の延長線上にあるという、この新作の萌えどころは? 小林さんの思い出に刻まれたハミルトンの原風景を掘り起こしながら、フルスロットルでべしゃり尽くしていただきました。
【小噺学】
「90年代に通った、古着屋の
ショーケースを思い出すんです」
よくよく考えてみたら、ハミルトンって服好きにとっては結構ありがたいブランドなのかもしれません。“道具”然としたシンプルデザインを得意とするブランドなら、他にも山ほどあるけど、時計愛好家からも“ここは本格派”と認定されてる。つまり装身具=ファッションとして使いやすいのに、“本物をつけてる”という安心感があるんですよね。ただそれは長〜い歴史に裏打ちされているからこそ。鉄道黎明期だった1892年にアメリカで創業して、精度の高い懐中時計で多発していた鉄道事故の防止に貢献し、“鉄道公式時計”という称号を獲得した……。なんて硬派な逸話にももちろん惹かれますが、やっぱり服好きにとって一番ロマンを感じるのは、“ミリタリーの背景がある”ってこと。
第一次大戦真っ只中の1917年に、オフィシャルウォッチサプライヤーとして、アメリカ軍にミリタリーウォッチを供給して以来、長年この分野のスペシャリストとして名を馳せていたというのは、時計通ならずとも有名な話。今ではブランドの顔役を担っている「カーキ フィールド」コレクションだって、ベトナム戦争時に納入されていた軍用モデルがルーツ。ミリタリーの遺伝子を色濃く感じるからこそ、時計好きと服好きの双方から支持されてるのかもしれません。
ただ僕が初めてハミルトンと出会った90年代初頭は、まだ“カーキ”という名称のモデルはなかったと思います。記憶を辿って思い出すハミルトンは、古着屋のショーケースの中。当時足繁く通っていた下北沢や高円寺、原宿の古着屋なんかでは、ヒッピー色の濃いアメカジが人気全盛だったこともあって、ハミルトンがベトナム戦時に納入していた黒文字版の軍用モデルを陳列してるショップが多かったんです。ヴィンテージとハイブランドをミックスするような、現代にも通じるストリートカルチャーが芽吹いていた時期でもあったから、そういうやれたミリタリーウォッチを、クロムハーツとかゴローズあたりのベルトに付け替えるスタイルが、めちゃくちゃ流行ってました。服好きの間では、ハミルトンの時計は時間を知る道具としてより、アメリカンヴィンテージ愛を伝え合う目印的存在だったのかもしれません。“時計”ではなく“ブレスレット”だったというか。

ちなみにそういう目利きにうるさい古着屋には、ミリタリーウォッチと並んで、ロカビリーな「べンチュラ」とか、行きすぎた未来感満載の「ハミルトン パルサー」なんかが陳列されてることも多くて、これがまたとてつもなくカッコよかったんですよね。ただ前述の通り、当時は“時計よりブレス”というマインドだったから、それもあくまでビジュアル面での話。時計史的な観点での価値も重視するようになったのは、大分後になってから。考えてみれば「ベンチュラ」は電池式腕時計の先駆けだし、「ハミルトン パルサー」も世界初のデジタル表示式腕時計。ハミルトンはずっと革新的な発明を繰り返してきたんですよね。
だからこの「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ」を見た時も、ふとこの2つの名作が頭によぎったんです。相変わらず攻めの姿勢を貫いてるな!って。だって『カーキ フィールド』コレクションは、すでにデザインが完成されてる。“ミリタリーの系譜”に連なるデザイン哲学を壊さずに新たな機能を盛り込まなければ、持ち前の魅力が失われてしまうから、デザインするのに相当苦労したと思うんです。同じ物作りに携わる者として、担当デザイナーには、ただただ感服させられますね。
新たにダイヤルにレイアウトされることになったパワーリザーブインジケーターを、これほど「カーキ フィールド」の世界観に馴染ませているのは本当にすごい! 車のガソリンメーターのような意匠もユニークだし、インデックスの大きさや位置関係なんかも、定番の「カーキ フィールド メカ」から微調整されてるけど、“視認性こそ命”というミリタリーウォッチの理念は通底してる。これなら単なる新作ではなく、ハミルトンのミリタリーウォッチ史に連なる新たな一歩として捉えられると思います。もちろん80時間ものロングパワーリザーブは、純粋に便利。道具としての正当な進化を感じるし、見映えもいい、“時計にもブレスにもなる”力作だと思います。
【PICK UP】
ハミルトンの
「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ」
名門ETA社が新開発した手巻きキャリバー“cal.H-23”を搭載し、80時間ものパワーリザーブを実現。針とプリントされたアワーインデックスには、ヴィンテージの趣を感じるオールドラジウムカラーの夜行塗料・スーパールミノバが塗布されている。径40㎜。10気圧防水。SSケース。SSブレスは14万9600円。ファブリックNATOストラップは13万4200円。
定番の「カーキ フィールド メカ」も充実のラインナップ
“時を計る”という役割に徹した視認性MAXのベーシックデザインは、当然流行り廃りとは無縁。手巻き&小径サイズで時計通からも支持が高く、昨今の時計界の一大潮流である“チビミリ”ブームの牽引者としてもしられる。手巻き。径38mm。5気圧防水。SSケース。NATOストラップ。左上ブラック9万9000円、その他各8万9100円
【ハミ出しコラム】
「カーキ」のヒストリーを
サクッとオサライ!
ご覧の通り、ハミルトンと米国軍との関係はすこぶる古い! 1917年にオフィシャルウォッチサプライヤーとして、高精度の懐中時計を数多く供給していたのを皮切りに、第二次世界大戦中には一般向けの時計製造を中止して、軍用時計の製造に全振り。腕時計やマリンクロノメーターなどの製品を、陸軍と海軍に計100万個以上納入して、なんと権威ある「Army-Navy“E”Award」を5度も受賞! その後も防水ケースを備えたモデルだったり、航空用クロノグラフだったりと、特殊なミリタリーウォッチを次々と開発して、米国のみならず、イギリスやカナダなど、各国の軍隊にも高品質な製品を数多く納入してきた超本格派! 旗艦コレクションの「カーキ フィールド」も、1966年に米国陸軍兵士向けに開発された、正確な同期を可能にするハック機能付きモデルがルーツ。得意とする“ミリタリー”の遺伝子を色濃く受け継ぐ永世定番だ。
問い合わせ先
ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン
☎03-6254-7371
https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/
写真/上野 敦(プルミエジュアン) 文/黒澤正人