今日から始める美味しい暮らし[ベジカジライフ]
男心をくすぐる骨太デザインながら三役をこなす多機能シャベル
「ビジカジ」に始まり、あらゆる分野でカジュアル化が加速する昨今。次のジャンルは? と問われれば、それはズバリ、ガーデニングである! ベジタブル × カジュアル、名付けて「ベジカジ」。週末農家・坂下史郎さんが徒然なるままに書き連ねる、ちょっぴり土臭くて小粋なファッション放談。
週末農家・坂下史郎のベジカジライフ
ベアボーンズのシャベル ウィズ シース
落花生(ピーナッツ)はおそらく、お酒を飲む人飲まない人関係なく消費量はとても多いんじゃないかと思う。私も例外ではなく、お酒を飲む時、それ以外でも食べ始めたら止まらないタイプだ。
そんな風に人生で大量に消費している落花生を、まさか自分で育てることになるとは夢にも思っていなかった。落花生は育ち方がとてもユニークで、生のまま取っておいた実を皮付きでそのまま埋めるだけで、1週間ほどすると芽が出てくる。
そのうち花が咲き始めると株元に周囲の土を寄せる「土寄せ」などを行い、やがて花がしおれると根本の部分が地中に潜っていって実をつけるのだ。害虫たちから生き延びて、だんだんと季節が進むと、茎や葉が根元の方から黄色くなり枯れてくる。
落花生は木になるナッツ類ではなくマメ科なので、こんな風に地中に埋まっている。やはり人間がこんなに美味しいと思うだけに害虫も発生しやすい。
色が変わっていくにつれてちょっとだけ掘ってみては実の成長度合いを確認して、を繰り返して収穫を待つわけだが、殻の網目状の模様がはっきりしてきたらその合図。普通は引き抜いて収穫したものをそのまま天日干しで乾燥させるのだが、生産者やその近隣でしか楽しめない特権が“生落花生”である。
おそらく収穫期のほんの数週間ほどしか出回らず、収穫間もない落花生を枝豆を食べるのと同じような感覚で塩茹でにして食べる。そのほくほくとした甘い味わいは、この時期この場所でしか味わえない、知る人ぞ知る絶品なのだ。
そして今回一緒に紹介するギアは、落花生を掘るときに使用した「BAREBONES(ベアボーンズ)」のShovel with Sheath(シャベル with シース)。このシャベルは、昔のミリタリーシャベルのように先端部分を折りたたんで持ち運びできる携行性に加え、掘るだけでなくヘッドを90度に折って鍬としても使用することもでき、1つで2役をこなせる。
折りたためば鍬にもなる。ネジでしっかり固定できるので、操作性も快適だ。
おまけに車などに積んで使用後に仕舞うときは、先端の汚れが付かないようご丁寧にカバーまでついているという気の利きよう。柄には趣のあるオーク材が使われていて、いわゆる高級舶来ガーデニンググッズにも引けを取らない高級感もある。
正直なところ少々重さが気になるところだが、この男心をくすぐる面構えには、このぐらいのどっしりとした重さの方がかえってしっくりと馴染むのではないだろうか。
いつも会う人の意外な一面を見た途端にその人への興味や魅力が湧いてくることがあるが、それに近しいものをこのショベルには感じる。一見すると骨太なデザインだが、そこに内包されたユーザーに寄り添う意外な機能性の数々。そのギャップが、自分の好奇心を大いに掘り起こしてくれた。
ベアボーンズのシャベル ウィズ シース
昔ながらのクラシックなデザインを踏襲しつつ、機能性は現代にフィットさせたギアが揃う新鋭ブランドから。ヘッドは丈夫なスチール製、ハンドルと柄には耐久性に優れたブナ材を使用しており、掘る、鍬、コンパクトにできる3WAY。1万3200円(エイアンドエフ)
こんなタフなショベルには軍用のラバーブーツがよく似合う。
今月のひと皿
塩山 菓詩処 石井のピーナッツ大福
小ぶりで、甘さとピーナッツの風味のバランスが絶品の大福。ピーナッツの粒が大きめに練り込まれており、歯応えもある。これがメチャクチャ美味しくて、遠方から訪れる友人や知人、昨夏オープンした自分のお店に来ていただくお客様にもおすすめしている。
落花生(ARACHIS HYPOGAEA)
●マメ亜科ラッカセイ属 ●全長:25~50cm ●生態:一年草 ●原産地:南米アンデス地方
[一口メモ]花が落ちて地中で実を生むユニークな育ち方から「落花生」という名前が付けられた。
坂下史郎
さかしたしろう/1970年生まれ。セレクトショップや著名ブランドのMD職を経て独立。2015年から都内と山梨・塩山での二拠点生活を始め、以来毎週末の山暮らしがルーティンに。一方でデザイナーとしての顔も持ち、自身が手掛けるブランドである「221VILLAGE(221ヴィレッジ)」と「迷迭香(マンネンロウ)」には、その趣向を反映させた街⇄山で活躍する機能服が揃う。
※表示価格は税込み
[ビギン2025年3月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。