今日から始める美味しい暮らし[ベジカジライフ]
土いじりの指針として感覚以上に頼りになるドイツ製バロメーター
「ビジカジ」に始まり、あらゆる分野でカジュアル化が加速する昨今。次のジャンルは? と問われれば、それはズバリ、ガーデニングである! ベジタブル×カジュアル、名付けて「ベジカジ」。週末農家・坂下史郎さんが徒然なるままに書き連ねる、ちょっぴり土臭くて小粋なファッション放談。
週末農家・坂下史郎のベジカジライフ
フィッシャーの温湿度計
春の暖かさがあっという間に過ぎ去り(というより年を追うごとに春の期間が短くなっている?)、そうこうしているうちに梅雨が訪れ、やがて暑い夏がやってくる。その前に冬を越させて大きくなった赤玉ねぎを収穫することにした。基本的に玉ねぎは年間を通して食べることができるが、冬を越させると春に一気に肥大化する。梅雨前に収穫したものは「新玉ねぎ」と呼ばれ、収穫してしばらく貯蔵・乾燥したものが、通常の玉ねぎとして区別されるらしい。新玉ねぎは辛味も抑えめで、生食がとても美味しいのだ。
歳をとったせいか、最近玉ねぎが無性に美味しく感じる。中でも生の玉ねぎはサラダには欠かせなくなっていて、居酒屋などでただスライスしただけの玉ねぎをつまみに一杯やるのはなんとも幸せだ。
玉ねぎは、生で食べると辛味があり、香りも強い(その刺激的な味が良いのだけれど)。だが、一度炒めたり煮たりすれば料理に甘みと深みを与えてくれる、よく考えると不思議な野菜だ。子どもの頃は離乳食の段階でその甘みを知り、大人になるにつれ今度はその辛さに目覚める、というまさに揺り籠から墓場までの野菜である。しかも長期間保存も効くので、本当にありがたい。うちでは野菜が食べきれないほど収穫できると、腐らせてしまうよりはみんなに喜んでもらえればとお裾分けすることもあるが、玉ねぎだけは例外でコッソリ備蓄している(笑)。
今回は秋に植えて5月〜6月頃に収穫したのだが、玉ねぎの収穫時期を知る術がちょっと面白い。葉の部分が徐々に枯れ、真っ直ぐに立っていた葉があるときパタっと倒れると収穫時期なのだ(左の写真を参照)。収穫したあとは吊るしたり、風通しの良い籠などで保管して少しずついただいていく。
そんな初夏の作業で傍に置いているのが、「フィッシャー」というドイツブランドの温湿度計。これまではなんとなくの感覚で種を蒔いたり苗を植えたりしていたが、それぞれ品種によって適した温度帯があるため、感覚以上に頼れる(当たり前である)正確な指針として迎え入れた。
交差する針は右が温度、左が湿度をそれぞれ示し、互いの針が網掛けで塗りつぶされた「COMFORT」のゾーンに収まっていれば、イコール快適な空間ということらしい。こいつを普段目につく場所に置いておき、ふと目をやったときにドンピシャで「COMFORT」を指していると、体感以上に気分が良くなる気がする。逆に蒸し暑い夏の日、すっかり振り切れた針が目に入ると、ちょっとげんなりしてしまう(笑)。
フィッシャーの温湿度計
創業は1945年で、ハンドクラフトの雰囲気も残すグッドデザインなバロメーター・ハイドロメーターカンパニー。この洗練された字体といい、デザイン、Made in Germanyの信頼性、一目惚れして買って良かった。Φ10×D2.8cm。1万3200円(ディテールオンラインストア)
①作業中は汗だくになるので、水分補給の目安にも有用だ。
②気温にして17~24℃、湿度にして40~60%の条件を満たせばCOMFORTらしい。
③なぜ普通の玉ねぎではなく、赤玉ねぎを選んだのか? 単純に普通の玉ねぎより出回っている量が少ないからという逆張り精神だけで育ててみた。
今月のひと皿
赤玉ねぎのマリネ
赤玉ねぎを千切りにして、酢で和えるだけのシンプルな料理。サラダにトッピングしても肉料理に添えても、様々な料理の引き立て役となってくれる。基本、付け合わせとしての役目が多いが、単体で食べるときは、白だしをちょっとかけるのにハマっている。
赤玉ねぎ(ALLIUM CEPA ‘EARY RED’)
●ヒガンバナ科ネギ属 ●全長:50~60 cm ●生態:多年草 ●原産地:中央アジア(※諸説あり)
[一口メモ]通常の玉ねぎに比べ水分量が多く、辛み成分も少ないため、サラダやピクルスなどの生食に向いている。
坂下史郎
さかしたしろう/1970年生まれ。セレクトショップや著名ブランドのMD職を経て独立。2015年から都内と山梨・塩山での二拠点生活を始め、以来週末の山暮らしがルーティンに。デザイナーとしての顔も持ち、自身が手掛けるブランド「221VILLAGE(221ヴィレッジ)」と「迷迭香(マンネンロウ)」には、その趣向を反映させた街⇄山で活躍する機能服が揃う。
※表示価格は税込み
[ビギン2024年7月号の記事を再構成]文/坂下史郎 写真/丸益功紀(BOIL)